通年利益予測を下方修正
サイバーエージェントのQ1(2018年9月から12月)の決算は、前年同期比約13%プラスと過去最高の売上を記録した一方、通年利益予測を300億円から200億円に下方修正した。
引用:サイバーエージェント
売上は伸びたのに利益が下がったのはコストが増大したからだ。
ひとつは主力の広告事業。人員増により利益率は過去最低の7.2%まで低下した。
ゲーム事業も新作の広告費用のため、営業利益が43%減少した。
ただ、広告とゲーム事業はそれでも黒字だ。最大の課題はAbema TVが主体のメディア事業だ。
Abema TVは59億円の赤字
藤田会長が先行投資と位置づけるAbema TVは59億円の赤字だった。売上は伸びているが、売上の半分以上の赤字を計上している。
AbemaTVは、いわゆる「テレビ離れ」の若年層の受け皿として2016年にスタートした。テレビの代替を目指し、テレビと同様に「ながら視聴」者に広告を見せることで利益を獲得するビジネスモデルを採用している。ネット収入が伸びているとはいえ、テレビの広告収入は莫大だ。その山を切り崩し、テレビの視聴者層をネットに呼び寄せるのがAbema TVの狙いだった。
視聴者数は確かに伸びている。1週間辺りの利用者数は900万人を突破している。
ところが、肝心の売上が伸びない。広告がついていないのだ。昨年は電通・博報堂と提携し、テレビに代わる新しい広告媒体を目指してきたが、広告収入は思うように伸びていない。実際にAbema TVを視聴しても流れるのは自社の番宣ばかりで、企業広告はほとんど流れない。
会社全体の利益が伸び悩んできている現状、Abema TVへの先行投資も厳しくなってきた。藤田会長も昨年のうちにコスト削減を指示したそうだ。会長肝いりのプロジェクトのAbema TVも、もはや「聖域」ではなくなったことを意味する。
現状をみると、広告モデルはペイできそうにない。テレビのように「興味がない広告」を観せられることに、ネットに慣れたユーザーは耐えられなくなっている。広告を流しても飛ばされてしまうし、世の中の流れは広告がないサブスクリプションに移っている。有料でも自分が好きなコンテンツだけを選んで視聴する方法をユーザーは選択しているのだ。
テレビが衰退したのではなく、CMモデルが衰退していたというわけだ。
変質したAbema TVのビジネスモデル
サイバーエージェントもそれに気づき、今後リニアとオンデマンド視聴の両方を目指すと方針を変更した。
Abemaビデオを充実させて、有料会員数を伸ばす方向に転じた。結果として有料会員数は35万人を突破した。
とはいえ、ライバルのニコニコ動画の会員数が190万人、dTVは500万人いる。後発のAbema TVの会員数とは桁が違う。豊富なビデオコンテンツを有するdTV、優先してリニア視聴できるニコニコ動画と比較して、既存のネット放送を録画して視聴できるのがメインのAbema TVの有料会員サービスは劣っている。
dTVの月額500円と比較して、Abema TVの月額980円の割高感も否めない。ビデオコンテンツを増やせば、さらにコストがかかるし、オンデマンドコンテンツ主体の他社サービスとの差別化も難しくなる。
有料会員以外にも、公営ギャンブルの提携など放送外収入を増やす試みを行っているが、年間200億の赤字を埋められるとはとても思えない。
いつ決断するか?
一視聴者としては残念だが、Abema TVの将来は明るいとは言えない。早晩、さらなる方針転換を余儀なくされるだろう。おそらくチャンネル数を大幅に削減し、オンデマンド主体のモデルに移行すると思われる。
そのとき、今までAbema TVを主導してきた藤田会長の責任問題が浮上することになるかもしれない。
将棋チャンネルなどでお世話になっているので存続してほしいのだけど・・・。