堅調だが、目標は届かず
任天堂の決算は売上が前年同期比プラス約16%、営業利益プラス約40%と増収増益となった。
とにかくソフトが売れた。『スーパー マリオパーティ』『ポケットモンスター Let’s Go! ピカチュウ・Let’s Go! イーブイ』『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』の自社開発ソフトが他社を寄せ付けない売れ行きだった。ポケモンとスマブラは全世界で1000万本以上売れている。
クリスマスシーズンでNintendo Switch(以下、Switch)もかなり売れたが、当初目標にしていた年内2000万台は達成できず、下方修正を行った。
引用:任天堂
任天堂は海外の販売比率が75%を超えていて、特に北米の影響が大きい。どの市場でもSwitchは受け入れられていて、今後も順調な経営が見込める。
Switchが販売開始してから2年近くが経過し、安定期に入った。累積3000万台も相当な数だが、Wiiと比べるとまだまだ少ない。
これ以上販売台数を伸ばすためには、一家に一台ではなく、ひとり一台販売する必要がある。
そのためには以前指摘したように、安価な「携帯専用Switch」が必要になるだろう。
SwitchはDock経由でテレビ画面に表示できるが、内蔵液晶のポータブルモードでプレイする人のほうが多い。Dockを排除した単体Switchを安価に販売できればさらなる台数の上積みが見込める。現行価格の5000円引き2万4980円でDockを除外した「Nintendo Switch2台目用セット」はすでに登場しているが、さらに安価な2万円を切る価格でだしたい。
リスクを追わない多角化戦略
今回の決算のポイントのひとつは、IP戦略の拡大だ。キャラクターグッズの販売、すでに建設がはじまっている「ユニバーサルスタジオジャパン」の「SUPER NINTENDO
WORLD」、ハリウッド映画に加えて、今回新たに「キッザニア」へのパビリオン進出、任天堂オフィシャルショップの出店を発表した。


多角化戦略というと、投資が増えて、リスクを負いそうだが、任天堂は過去のIP遺産を活用して、他社と連携しながらリスクを追わない手法を選んでいる。
先進国を中心に進む少子化、スマートフォンなどの他のスマートデバイスの脅威がある中、任天堂がIP戦略にでたのは妥当な判断だ。
リオオリンピックのイベントでもわかるとおり、マリオなどの任天堂のキャラクターは世界的に有名で、ディズニーに匹敵するキャラクター郡を有しているのは世界で任天堂だけだろう。
今回のスマブラが「全員参戦」と称して数多くの任天堂キャラクターを登場させたのも、IP戦略と連携する算段に違いない。
ゲーム機ビジネスは、ギャンブル的要素も強く、当たれば利益が出るが、外れると大赤字となる。IPでの利益が増えれば、任天堂の経営安定に寄与する。
大人の会社に変貌する任天堂
今回の決算では、任天堂が大人になった印象を受ける。Wii時代のように販売するソフトが枯渇することなく、計画的に供給できて売上の増大に貢献している。Switchも大規模な品切れを起こさずサプライチェーンも改善している。その上、多角化により経営を安定化に努めている。
一方で、「大人」になっても他社にない良質なソフトを開発する任天堂の社是は揺らいでいない。今回の決算でも、「他にない価値を提供するのが任天堂」だと社長が何度も強調していた。
Wii時代の教訓を得て変貌した任天堂は、長期的に好調を維持できるのではないだろうか。