売れ続けるNintendo Switch
任天堂が絶好調だ。今期は過去最高の利益を見込んでいる。Nintendo Switch(以下Switch)は販売開始から4年目に入っているが、今でも入手困難で販売台数は伸び続けている。
どうしてSwitchが好調なのか考えてみます。
売れないと思ったSwitch
Switch発売前の任天堂はWii Uが絶不調で、3DSがスマホゲームに脅かされている悲惨な状況だった。
筆者はSwithが売れないと予想していた。Wii U失敗の原因は任天堂のソフトしか売れず、ゲームソフトを定期的に供給できなかったことにある。Wii Uで売れたゲームソフトは過去作の続編が多かった。さらにスマホゲームが大流行していて、そのほとんどが無料で楽しめた。その状況で、有料のハード端末を購入して数千円のゲームソフトを購入するユーザーは非常に少ないと考えた。
ところが、筆者の予想に反してSwitchは売れに売れた。
ポータブルと据置の両方をカバー
Switchは、液晶ディスプレイを内蔵してポータブルと据置の両方の形態で遊べるゲーム機だ。今まで任天堂は据え置きとポータブル両方のゲーム機を製造していたが、据置機のWii Uの後継であるSwitchはポータブルゲーム機としても遊べる。スマホゲームが大流行し、テレビ受像器を持つ人が減ってきている中、ポータブルと据置ゲーム機の市場は縮小するのを見越して、両方の市場をカバーするSwitchを任天堂は開発したのだ。結果、Switchは両方の市場のニーズを取り込んで、大成功した。
ポータブルと据置の2つのハードウェアを1つにまとめるということは単純に自社のハードウェアの売上が半減する可能性もあったのだが、大胆な戦略は見事としか言えない。Switchが好調なので、3DSの後継機はおそらく発売されないだろう。
重要だったインターフェイス
現行のスマホはSwitchの性能を凌駕している。やろうと思えば、Switchのゲームをスマホに移植することも可能だ。スマホでゲームが遊べればハードを買わなくても良く、スマホ所有者イコールユーザー数になる。
DVDやCDなど数多くのメディアがスマホに吸収されたようにゲームもスマホに吸収されると大方が予想していたが、Switchはそうはならなかった。スマホゲームは無料で単純なゲームだけが流行り、複雑で長大なゲームはSwitchなどの専用ゲーム機で遊ぶときっちり棲み分けができている。
他のメディアとゲームが違ったのは、インターフェイスだ。スマホにはボタンがないので、画面上に表示されるバーチャルのジョイスティックとボタンで操作する。バーチャルキーボードには慣れても、微妙な操作を素早く行うことが必要なゲームの操作はバーチャルボタンでは非常に難しい。外付けジョイスティックをスマホに装着すればSwitchに近いインターフェイスが得られるのだが、それは結局別のハードウェアを買わないといけない事になる。
「本格的なゲームはゲーム機で遊ぶ」という潮流はスマホでも変える事ができなかった。
強力な任天堂ブランド
WiiとWii Uの失落はゲーム供給が滞った事が大きな原因だった。同じ轍を踏まないために、任天堂はSwitchへのゲームソフト開発を綿密に計画しゲームソフトの供給が途切れないようにした。
今まで任天堂のゲームしか売れないという課題があったが、任天堂が出した解は「自社制作のゲームを増やすこと」だった。任天堂の自社ソフトの売上比率は80%を超えている。ミリオンセラーソフトのほとんどが任天堂製だ。任天堂は関係が深いゲームソフト制作会社を買収して、自社グループのゲーム開発能力を高める施策も取ってきた。
任天堂は本格的なゲームを自社ゲーム機しか供給せず、スマホには単純なゲームしか供給していない。マリオやゼルダでガッツリ遊ぶには任天堂のゲーム機を買うしかないのだ。
コロナ禍以前に成功していたSwitch
コロナ禍による巣ごもり消費でSwitchが爆発的に売れたのは事実だが、Switchはコロナが発生する前から売れていた。Wii Uの反省を踏まえて、任天堂はSwitchゲーム機とSwitchへのソフト供給を計画して、見事に成功を収めた。Switchは販売開始から4年が経過しても、まだ品切れ状態が続いている。