赤字が拡大した楽天
楽天グループの2021年度Q1の決算は、売上高は前年同期比プラス18%だったが、営業利益は373億円と大幅赤字だった。
金融と国内ECは黒字だったが、楽天モバイルが611億円の巨額の赤字を計上したので、グループ全体でも赤字となった。
楽天モバイルが赤字を垂れ流し続ければグループ全体でも赤字が続き、いずれ三木谷会長の責任問題にもつながる。
楽天モバイルが黒字になるか考えてみます。
400万人突破の契約申込者
楽天モバイルの契約申込数は5月に400万人を突破した。3大キャリアの契約者数には到底及ばないが、1年間で300万人の契約申込みはかなりハイペースだ。ただ、この数字は「累計契約申込数」とあるので、過去に契約して解約した人も含まれていて、現在契約している人の数ではない。
新しいキャリアで課題になるのは受信エリアの拡充だが、楽天モバイルは人口カバー率80%を自社回線で達成した。それ以外のエリアはauがカバーする。
エリアマップを見ると、人口が多い市街地はカバーしているように見える。ただ、カバーしていると楽天が言っている地域でも、建物内では電波が薄く、繋がり辛いことも多く、auを使っている時とは印象が異なる。
問題は収益化
楽天モバイルは「1年間通信無料」のキャンペーンを行ってきたので、ここまでほとんど売上ががなかったが、5月からいよいよ有料契約者が増えていく。
過去のMVNO時の売上を含めてQ1の売上は567億円だった。無料キャンペーンが終わるユーザーが増えていく今後は売上が増えていくはずだが、「1GB未満の利用は0円」という新たなプランを発表した。
1年無料キャンペーンが終わったユーザーがすぐに解約しないための措置だが、ユーザーが0円で使い続ければ、今までと同じで売上は伸びない。
楽天が言うには、契約してから9ヶ月後のユーザーのデータ通信量はプラス42%だそうだ。ただ、これはどれだけ使っても無料な状態での数字なので、データ通信が増えれば支払い金額が増える有料プランになったときに同じだけ使ってもらえるかは疑問だ。
主回線契約数がポイント
この1年間無料だから新たな回線を申し込んだ人もいるだろうし、1GB未満無料で通話無料なら副回線として契約を維持するユーザーもいると思うけど、そういうユーザーは今後もほとんど使用しないと思われる。
楽天モバイルが売上を伸ばすには、データ通信量が多いメインの回線として使ってもらう必要がある。3大キャリアやMVNOからMNPしたユーザーが増えなければ赤字は解消されない。
そのためのポイントがiPhoneだ。日本では圧倒的なシェアを握っているiPhoneの販売を楽天モバイルが開始した。同時にiPhone 7以降のiPhoneにも正式対応した。
普段使っているiPhoneで使えるなら楽天モバイルにMNPしても良いというユーザーもいるだろう。iPhoneに正式対応したことで楽天モバイルを使用する障壁はひとつ減った。
ただ、iPhone 12シリーズ以外だと楽天回線とauを自動切り替えできず手動で切り替えないといけない。au回線を使わなくて済むエリアが増えれば切り替え作業も要らなくなる。
価格競争力はどうだろう。20GBまで1980円の価格は、ahamoの2700円よりも安く、通話無料は魅力的ではある。
MVNOと比べても、ほぼ遜色なく、1GB無料と無制限2980円はもちろん最安値。例えばmineoとの比較なら3GBから5GBまではmineoの方が安いが、それ以外のデータ使用量は楽天モバイルの方が安い。
残る課題は?
今後の楽天モバイルの課題は「普通に使える」ようにすることだろう。地下や地方でも楽天回線がつながるようにして、3大キャリアのように空気のように繋がることを目指すべきだ。楽天回線が充実してくれば、auに支払っているローミング費用の削減にもなる。
細かい課題は他にもいくつもある。ここであげたiPhoneの自動切り替えや、最近発表したiOS版での海外着信の有料化、今後はソフトバンクの訴訟問題もある。
それらが解消できたとして、次に必要なのはMNPを増やす方策だ。3大キャリアからメイン回線をMNPしてもらうためには料金だけではなく、新たなキャンペーンが必要に思う。