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楽天決算。赤字が拡大するモバイル事業。サイバーエージェントとの違いを考える

2021年度Q3楽天決算

楽天の2021年度第3四半期決算は、売上が前年同期比プラス12.6%だったが、営業利益はマイナス577億円と赤字が拡大した。

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楽天市場は好調だが、携帯電話事業の収益がマイナス1052億円と大幅赤字だった。携帯電話事業の赤字は昨年よりも拡大していて、黒字化する気配が見られない。

今後の楽天携帯電話事業がどうなるか考えてみます。

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減らないコスト

モバイル事業の赤字の原因はauに支払うローミングコストと回線敷設費用だ。楽天モバイルの電波が弱いエリアはauがローミングしていて、KDDIにコストを支払っている。そのローミングの費用負担がかなり大きいと三木谷CEOも公言している。

楽天ももちろん認識していて自社回線エリアを増強するために基地局を大幅に増やしているが、楽天が言うには半導体不足の影響で現在の人口カバー率は94.3%にとどまっている。この人口カバー率は夜間人口で市町村の庁舎がある場所をもとに計算しているので、地図を見てもわかる通り地方や山奥では楽天回線が入りづらいと思われる。

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この人口カバー率が上昇したことを理由に、羅期雨天は全国でローミングサービスをやめて自社回線オンリーに順次切り替えることを発表している。人口カバー率が低いエリアでは引き続きローミングサービスを継続するので、コストがどこまで減るかは不透明だ。さらにローミングコストを減らすためには、基地局をもっと増やす必要があり、そのためには当然インフラコストがもっとかかる。

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増えない売上

売上は前期比でプラス6.7%と大幅に増えている様子は見られない。1年間無料契約のユーザーが少しずつ有料ユーザーに変わっているのはわかるが、その歩みは遅い印象だ。

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楽天モバイル(MNO)のユーザー数は現在411万人。こちらの伸びも鈍化しているように見える。1GB未満無料の「Rakuten UN-LIMIT VI」が好調かと思えたが、ユーザー数が爆発的に伸びている様子はまだない。その背景に、3大キャリアによる「楽天包囲網」の存在がありそうだ。

ドコモのahamoを皮切りに始まったオンライン格安サービスは楽天の存在を意識したものだ。特にauの「povo 2.0」は基本無料トッピング有料と、同じ「無料サービス」の楽天モバイルを想定した対抗サービスだ。

楽天は「povoの大きな影響は見られない」と言っているが、povoの加入数は100万人を突破したそうだ。同じ無料でも人口カバー率99.9%のauなら安心して契約できるユーザーが多そうだ。

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サイバーエージェントとの違い

4060億円の売上がある楽天グループにとっても、楽天モバイルの損失1000億円は巨額だ。

同じようなIT企業の例としてサイバーエージェントがある。サイバーエージェントもABEMA事業で巨額の赤字を計上しているが、サイバーエージェントの場合ゲームと広告事業のおかげでグループ全体では黒字だ。

巨額の黒字を出しても法人税で持っていかれるなら、新規事業に投資した方が良いという考えもあるが、サイバーエージェントと楽天の新規事業ではビジネスモデルが異なる。

ABEMA事業への投資は映像コンテンツの制作費がほとんどで、制作すればコンテンツがどんどん蓄積される。映像コンテンツはメンテナンスコストがあまりかからない。

ところが、楽天の携帯電話事業は全国の基地局のメンテナンスと回線維持に大幅なコストがかかり続ける。ローミングサービスが減らせれれば、会員増加ともに増える支出は減らせるがインフラコストは容易に減らない。

携帯電話事業の業績が改善すれば大幅な黒字を計上できる一方で、インフラコストがかかり続けるのでかなりのハイリスク・ハイリターンの事業だ。

ローミングコストを減らすためには基地局を増設する必要があり、そのためのコストがかかり続ける。一方で、すでに人口カバー率が高いauなどの3大キャリアに対抗されて売上の大幅増加もまだ見込めない。

楽天モバイル事業が改善し、楽天グループ全体が黒字になるのはかなり先になりそうだ。

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