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楽天モバイルの決算は1209億円の赤字。黒字化するのはいつか考える

楽天モバイル決算

楽天が2022年度第3四半期の決算を発表した。売上収益は前年同期比プラス約63%、営業損失は前年同期比マイナス156億円の1209億円を計上した。楽天グループ全体でも大幅赤字が計上している。

基地局増設などの設備投資が赤字の要因だと楽天は説明しているが、今後の楽天モバイルの見通しを考えてみます。

コストは減るのか?

人口カバー率を高めるために、楽天モバイルは基地局を増設している。ただ、人口カバー率がはすでに約98%に到達していて、直近の4Gの基地局の増設は鈍化している。

5Gはどうだろう。こちらも伸びは鈍化しているというより増えていない。ということは、今期の費用は新規開設コストではなくランニングコストがメインということになる(もちろん既存設備の減価償却費用などもあるが)。

では、費用の主因はなんだろう。楽天モバイルは赤字の理由としてauのローミング費用が高いと説明してきたが、人口カバー率が高まってきたので、全国でローミングに頼っているエリアは縮小してきている。人口カバー率が高くなると、ローミングしているエリアは通信量が少ない地方だと思われるので、そこまで多額のコストがかかっているようには思えない。

では、楽天モバイルの2000億円の費用はそれ以外のランニングコストが大きいと考えられる。具体的には、ネットワークコストだ。楽天モバイルが黒字化するにはこのコストを減らす必要性がある。


今後、楽天モバイルに属する社員を転属することで人件費を削減すると説明しているが、それでどれだけコストが減るか不透明だ。

売上は伸びるのか?

コストが減らなくても売上が増えれば、黒字になる。

携帯電話事業の売上は、シンプルに言えば顧客単価 (ARPU。Average Revenue per Account)x 契約者数だ。

楽天モバイルは今回初めてARPUを公表した。

9月の2,588円というARPUは3大キャリアより劣るし、この数字はエコシステムアップリフトと呼ばれるおかしな数字を含んでいる。これは、楽天モバイルのユーザーが楽天の他のサービスに寄与している売上のことだ。

実際のQ3のARPUは、こちら。直近のQ3では1,472円。まだ無料ユーザーも含まれている数字だが、他のキャリアよりかなり低い(NTTドコモのARPUは4,250円)。無料契約者が完全にいなくなる11月以降、この数字がどう変化するか。

契約者数はどうだろう。1GB未満無料プランがなくなり、契約者数はピーク時より40万人ぐらい減った。11月以降は純増したと楽天モバイルは説明している。

ただ、どのようなユーザーが楽天モバイルを選んでMNPしているのかいまいち見えてこない。

1GB未満無料になったことで、楽天モバイルは低容量プランの価格優位性を失った。3GB1,078円という金額はLINEMOやahamo、MVNOと比較して決して安くはない。

楽天モバイルが価格優位性を保っているのは、20GB以上でも価格が一定なところにある。ただ、20GB以上使い続けるヘビーユーザーがどれだけいるか。

もうひとつの楽天モバイルのメリットは専用アプリを使えば通話が無料になる点だ。通話無料は嬉しいが、一方で通話無料だとARPUが伸びないデメリットもある。

楽天モバイルは4Gも5Gも通信品質は3大キャリアより現状は劣っている。それでも楽天モバイルを選ぶユーザーを今後楽天モバイルは捕まえていかないといけない。

楽天モバイルも通信品質の改善が喫緊の課題だと理解していて、プラチナバンドを他キャリから譲り受け、2024年には開通したいとしているが、3大キャリアの反発や移管工事がうまくいくのかまだ不透明だ。

どうなる楽天?

今回の決算で楽天はARPUの上昇と契約者数の増加をアピールしていたが、黒字化の時期は言明していない。楽天モバイルを使うことで楽天の他のサービスの売上が伸びるエコシステムが機能しているというが、楽天グループ全体でも巨額の赤字を計上している。

巨大グループである楽天でも数千億円の赤字を出し続けるのは経営的に無理があり、子会社の株式上場などで資金を調達しようとしている。

それでも、何年もこの赤字を垂れ流すのは難しいだろうし、楽天の株価も低迷している。

楽天モバイルの思惑通りにいったとしてプラチナバンドが開通する2024年まで携帯電話事業を継続できるのか。

楽天モバイルからしたら、ahamoなどの低価格プランの登場が計算外だったかもしれないが、それらのプランに対抗し黒字転換するには何か新しい施策が必要に思える。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は高山環(たかやま かん)というペンネームで小説を書いています。
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