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藤田社長のインタビューからわかるABEMAの今後

藤田社長のインタビュー

サイバーエージェント藤田社長がABEMAのワールドカップ配信について総括したインタビューが面白かった。

ワールドカップを配信したことは社長の予想よりもはるかに成功したそうだ。日本がワールドカップに出場できるかわからない状況で契約し、厳しいグループに日本が入ったのでドイツに惨敗して盛り下がることも予想できたのに、見事な盛り上がりを見せた。

藤田社長は賭けに勝ったのだ。

おかげで、ABEMAは認知度を上げ、インターネットテレビが地上波テレビよりも便利なことを証明してみせた。

社長曰く、ワールドカップ終了後にABEMAの視聴者数は増えているそうだ。

ABEMAの限界

一方で、藤田社長はABEMAというかインターネットテレビの限界が見えたと正直に話している。

ひとつは同時視聴者数。クロアチア戦でABEMAは視聴者数制限を行なった。AWSなどのバックボーンの技術力やキャパが問題なったのではなく、日本のインターネット環境の限界だと社長は語っている。日本戦をABEMAだけで中継することは現時点では不可能だと述べている。

もうひとつの限界はタイムラグ。地上波テレビに比べてインターネットテレビはどうしても伝送速度が遅い。スポーツ観戦の場合、数十秒の遅れが致命傷になる。

ABEMAの特色の一つであるコメント機能を使って観戦していると「ネタバレ」を起こしてしまう。もちろん、コメントの他にもマルチカメラや追っかけ再生などABEMAが優位な点は多い。

だが、藤田社長は、地上波の優位点を正直に話し、ABEMAとの共存を目指すのが現状はベストだと考えているようだ。これにはABEMAがテレビ朝日との共同事業であることも関係していると思う。

語られない収支

藤田社長が語らなかったのは、今回のプロジェクトの収支だ。契約金が200億円と言われているが、AWSやAkamaiに支払う配信コストも膨大にかかったに違いない。

ワールドカップ中継の合間にCMが流れたが、あれだけで黒字になるわけがなく、ワールドカップ配信プロジェクト単体の収支は間違いなく赤字だろう。

もちろん、藤田社長もプロジェクト単体で黒字になるとは思っておらず、ABEMAの認知度が上がり視聴者数が増えることが目的だった。その成果は次の決算で具体的に明らかになるだろう。

これは推測だけど、藤田社長はABEMAが黒字になることはない、いや黒字にする必要がないと思っている節がある。以前にも「投資を抑えれば、黒字にするのは簡単だ」と発言していた。

サイバーエージェントグループ全体で黒字なら、世の中の人が便利に思い、大袈裟に言えば世界が少し良くなればそれで構わないと考えている。そんな気がしてならない。

ABEMA事業は楽天モバイルと比較されることもあるが、楽天が携帯電話事業を始めたのは携帯電話料金を安くすることが目的だった。地上波テレビの不便さから解放するのが目的のABEMAとは志が異なる。楽天モバイルが目指していた低価格は、ahamoなどが達成してしまった。

全国各地にインフラを用意する必要がある携帯電話事業は、新しいようで古いビジネスモデルで、ネットだけで完結するインターネットテレビとは大いに異なる。膨大なインフラコストを本業のインターネット通販で補填できずに楽天は莫大な赤字に苦しんでいる。

サイバーエージェントはウマ娘などのゲーム事業のおかげで黒字だが、ゲーム事業はナマモノだ。今後どうなるかはわからない。

成功した創業者が本業に飽き足らず、新規事業を始めることはよくある。楽天とサイバーエージェントの新規事業では、成功の優劣がつきつつあるが、将来どうなるかはまだわからない。

日本を代表するインターネット企業である楽天とサイバーエージェントの行き末が、日本のIT業界を左右するのは間違いないだろう。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は高山環(たかやま かん)というペンネームで小説を書いています。
ブロックチェーンなどITを題材とした小説の他に、ミステリー、恋愛物、児童文学など様々なジャンルの作品を取りそろえています。
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