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ABEMAの藤田社長は200億円の賭けに勝てるのか

藤田社長の賭け

開幕前は盛り上がらないと言われていたワールドカップが日本代表の躍進もあって超絶人気になっている。

注目を集めているのが、ABEMAの中継だ。全試合無料中継に、後から再生、元日本代表である本田圭佑の解説、なによりスマホやPCで気軽に観戦できるのが良い。

約20秒のタイムラグがあること以外は申し分ない。

ABEMAが全試合中継できたのは、200億円の投資を行なったからだ。昨年、今まではワールドカップの放映権を購入していた日本の地上波テレビ局が資金を出せないという話を聞いた藤田社長が、200億円を投資する決断をした。ABEMAの親会社であるサイバーエージェントの藤田社長はサッカー好きで知られている。

テレビ局が資金を出し渋ったのには理由がある。時差の関係で、ほぼ全試合夜中の中継になるからだ。視聴率は上がらず、CMもつかない。そもそも地上波テレビは、ネットに押されて収益が落ちている。巨額の放映権を購入できる体力がなくなってきているのだ。

ワールドカップというコンテンツの劣化も背景にある。日本代表の人気は以前より低くなっていて、対戦国はスペイン・ドイツという強豪国で惨敗も予想されていた。

ところが、いざ開幕すると日本の快進撃もあり、ワールドカップは人気コンテンツに返り咲いた。

日本代表戦では、ABEMAの視聴者数が1000万回を超えたという。ABEMAの視聴者数は、累積視聴者数なので、ユニークな視聴者数ではないが、それでも恐ろしい数字だ。

これだけのアクセスが殺到すると、システムの負荷が懸念されたけど、観ている限り問題は全くなかった。格闘技などの大規模イベントを中継していたノウハウが活きたに違いない。

ターニングポイントになるのか

これだけの視聴があっても、今回の中継だけではABEMAはペイしないだろう。中継の合間にCMは流れるが、それだけではとても200億円は回収できない。

藤田社長も「この中継で儲ける」ことは考えていないだろう。藤田社長の目的は「視聴週間の改革」にある。

若者世代はYouTubeを中心にネットでの視聴がメインになり、地上波テレビをあまり観ないようになっている。ABEMAも若者向けの恋愛バラエティに力を入れている。

一方で、もっと上の世代はネットも観るが、地上波テレビを観ている人は多い。「朝起きたら、家に帰ったら、まずテレビ」という習慣が抜けない人もいるだろう。

そういう人が「まずABEMAをつける」ようにしたいのが藤田社長の意図に違いない。最近のABEMAはPCやスマホでの視聴よりも、Fire TVなどのセットボックスを介してテレビ受像機での視聴を推している。

今のテレビのリモコンには「ABEMA」ボタンがある。テレビをつけるなら地上波のチャンネルを選ぶのではなく、ABEMAを選んで欲しい。そのための環境設定と習慣をつけてもらうのに、ワールドカップの中継はうってつけだった。

サッカー中継は、迫力ある大画面テレビで観たくなる。サッカーを観るために、テレビ受像機でABEMAが視聴できる環境を設定した人も多い。

では、ワールドカップをきっかけに視聴者の習慣は変わるのか。おそらくすぐには人の習慣は大きく変わらないだろう。

ワールドカップを観たからといって、朝の情報番組を観ていた人がABEMAをつけようとはなかなか考えない。朝の情報番組を観ている人は、長年同じ番組を観続けている場合が多い。そういった人がABEMAを観るようにさせるのは、なかなかハードルが高い。

気軽に観てもらうには、もう一つ障壁がある。ABEMAはチャンネルがたくさんあるのだ。ABEMAをつけてもらっても、そこからチャンネルを選んでもらわないといけない。ABEMAをつけて、情報番組を探すのはちょっと面倒だ。

それでも意味はある

ワールドカップが終わったら、ABEMAを視聴する人の多くは地上波テレビに戻っていくだろう。年末はM-1や紅白と地上テレビを視聴する習慣が残っているイベントも多いし、年末年始には帰省し、こたつでテレビという日本の原風景みたいなものはまだまだ根強い。

それでも、ワールドカップをきっかけにABEMAというものを知り、何かあったらABEMAを観ようと思ってもらえれば、藤田社長としては成功なのだと思う。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は高山環(たかやま かん)というペンネームで小説を書いています。
ブロックチェーンなどITを題材とした小説の他に、ミステリー、恋愛物、児童文学など様々なジャンルの作品を取りそろえています。
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