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「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」を7月18日に刊行

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サイバーエージェント2019年度の通期決算。Abema TVはYouTube方式の収益化を目指す

サイバーエージェント2019年度の通期決算発表

サイバーエージェントの2019年度の通期決算は、売上高で過去最高を記録した。

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主力事業であるメディア・広告・ゲームとも売上が伸びた。

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一方で、相変わらずAbema TV事業は赤字で、営業利益はマイナス203億円。この状態で事業が存続できるのか、Abema TVの現状と今後を考察します。

地上波テレビの代替は失敗

Abema TVの売上高が昨年比プラス180%と伸びているが、3年連続200億円の赤字。状況はあまり変わっていない。

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Abema TVアプリのダウンロードは4500万に達して、国内のダウンロード数としては限界に近くなっている。

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視聴者数も大幅に伸びている。長時間放映できるインターネットテレビの特性を活かし、記者会見の生中継が浸透し、「何かあったらAmeba」という視聴習慣ができつつある。また若者向け恋愛コンテンツが人気だ。

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ダウンロード数、視聴者数とも、順調に伸びてきたが、その割に売上は伸びておらず、営業利益は改善していない。
当初は、視聴者数が増えれば広告の売上が伸びて、地上波テレビの代替になる想定だったが、広告の質・量ともあまり変わっていない。

YouTubeのようなオンデマンドであれば、コンテンツの前に広告を流す手法が一般化してきたが、Abema TVは地上波テレビと同様にリニアなコンテンツの合間に広告を挿入する手法だ。この手法では、地上波テレビと同様に広告が流れている間にトイレなど他の作業をしてしまい、広告の実質視聴数は増えない。

地上波テレビの衰退のひとつはCMがうざいことであり、CMスキップするレコーダーも一般化している。

インターネットテレビは地上波テレビの代替となり、地上波のコンテンツにうんざりしている若者を引きつけるのには成功したが、その若者にうざがられているCMでの売上を伸ばすのが難しかったのだ。

藤田社長の当初の目論見は、ここを見誤っていた。

オンデマンドも茨の道

三年以上Abema TVの放送を続けてきて、地上波のようなCM挿入によるマネタイズは難しいと判断したようだ。リニア放送ではなく、YouTubeやAmazon Prime Videoのようなオンデマンド放送での収益化に舵を切り始めている。

Amazon Prime Video・Netflixのような有料会員、YouTubeのようなコンテンツ前CMで、売上を伸ばす考えだ。有料会員数は50万人を突破し、オンデマンド配信は全体の視聴時間の44%に到達している。

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これだと、Abema TVが今まで取り組んできたリニア放送に意味がなくなってくるが、リニアとオンデマンドをシームレスに連携することで、オンデマンドコンテンツの”呼び水”として、リニア中継を扱う方策を取りそうだ。

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サービス開始当初から言っているが、レコーダーによる録画、Amazon Primeなどのオンデマンドに慣れた体には、CMを視聴するのはきついし、古臭く感じる。オンデマンド主体への転換は賛成だし、それしかAbema TVが生き残る術はないと思う。

ただ、オンデマンド放送にはライバルが多い。NetflixにAmazon Prime Videoなどにコンテンツ勝負で勝たないと有料会員は増えていかない。

Abema TVは、バラエティ番組など地上波テレビの発展型に当たるコンテンツも多い。地上波のコンテンツならレコーダーで録画すれば”無料”だから、有料会員にならなくても視聴できる。自宅にコンテンツを気楽に貯めることができるレコーダーもAbema TVの有力なライバルになる(レコーダーを保有している家庭は減ってきているが)。

Netflix方式の有料会員戦略は限界があるように思う。無料の地上波テレビ、コンテンツに大量の資金を投入するNetflixやAmazon Prime Video、さらにDisney、Appleと参入してきているこのエリアは競争が厳しい。

YouTube方式が最後の望み?

YouTubeでは一般化してきているコンテンツ前CMの方が有力に思える。コンテンツを觀るためなら数十秒のCMの視聴は我慢できるし、短い間なので画面の前から離れづらい。真剣にCMがうざかったら、YouTubeもYouTube Premiumという有料会員になる手段も用意してある。

この手法で200億円の赤字を解消できるかは不透明だが、それしか道がないように思う。それでも収益化ができなかったら、Abema TVの縮小・撤退も現実味を帯びてくる。

 

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