ABEMAの変革。多くの番組が有料化に
インターネットテレビ「ABEMA」の番組がどんどん有料化されている。今まで見逃し配信は無料だったが、最近ではリアルタイム視聴以外は、有料会員であるプレミアム会員以外は視聴できなくなっている番組が多い。麻雀や将棋などが、それに該当する。
また、プレミアム会員限定の番組も増えている。ほぼ全ての映画はプレミアム会員限定だし、最近では舞台裏などのオフショット動画も有料会員限定にしている。
ABEMAの変革の目的と影響を考えてみます。
地上波テレビになれなかったABEMA
ABEMAは地上波テレビのインターネット版を目指していた。高齢化向けの番組が増えた地上波テレビが面白くないと若者向けの番組を制作して、番組の合間にCMを挟む方式で利益を出そうとした。
ただ、ABEMAはテレビ朝日と共同で地上波テレビレベルの番組を維持するために製作費がかさみ、巨額の赤字を計上してきた。ABEMAとほぼ同時期にYouTubeの人気が急上昇し、ABEMAのような地上波テレビライクなCMを視聴者がうざいと思うようになった。
そこでABEMAはCMだけではなく、有料会員の会費で黒字化する方式に変更していった。ちょうどサブスクも流行していて、月額料金への抵抗感が減ったのも大きい。
ただ、元々無料の地上波テレビがモデルなので、Netflixのように非会員は一切視聴できないスタイルではなく、リアルタイムの番組は無料会員でもすべて視聴できる。
ほとんどの人が無料で一部のユーザーが会員になることで収益化するフリーミアムモデルをABEMAは目指してきた。同じモデルを採用しているのがYouTubeだ。YouTubeは多くのユーザーが無料会員で、CMを除外できる有料会員はごくわずかだ。
ただ、YouTubeは一般の人や芸能人が動画を自分たちでアップしているので、制作費はほとんどかからない一方、ABEMAの番組はすべて自前で作らないといけないので制作費が膨大にかかる。そのためYouTubeよりも収益化のハードルは高く、有料会員を大幅に増やすために、多くの番組を有料化したのだろう。
ABEMAモデルの課題
ABEMAの売上は大幅に伸びているが、月額料金よりも公営ギャンブルと通販の売上が大きい。
ABEMAプレミアム会員が伸びない原因のひとつは、過去のモデルとの矛盾があるからだと思う。ABEMAは地上波テレビモデルを嗜好していたので、番組表があり番組の合間にCMが入る。YouTubeの有料会員はCMを飛ばせるのが1番のメリットだが、ABEMAは有料会員になってもCMを飛ばすことはできない。ABEMAでは番組を後から視聴できるのが一番の特典だ。
ただ、後から番組を視聴するモデルはTVerという競合がある。TVerは地上波テレビの番組を後から視聴できるサービスで、一週間以内の視聴なら無料だ。
難しいポジションに立つABEMA
地上波テレビのモデルを目指したABEMAが、TVerで無料配信するモデルよりも割高になったのは皮肉な話だ。視聴者数が多い地上波テレビは、多額の制作費をCMで回収できるので、TVerを無料で提供できる(TVerにもCMが入るが、地上波テレビをリアルタイム視聴するときよりはCMの時間は少ない)。YouTubeは番組制作費が掛からず短いCMでも十分黒字化できている。
AmazonプライムビデオやNetflixは有料会員だけが視聴できて、会費でオリジナルのコンテンツを充実させることができる。
こうやってライバルのサービスと比較すると、ABEMAが難しいポジションにいるのがわかる。制作費はかかるし、番組形式なので有料会員になってもリアルタイム視聴ではCMを飛ばせない。
今は赤字を出していても広告事業とゲーム事業が好調なのでサイバーエージェント全体では黒字だからABEMAも存続できているが、ウマ娘の突然の大ヒットでわかるようにゲーム事業は水物だ。当たれば大きいが、失敗すれば巨額の損失が生じるのがゲーム事業だ。
他事業が好調なうちにABEMA独自のポジションを確立し収益化することが求められる。