リモコンはボタンの塊
ざっくり言えば、リモコンはボタンの塊だ。ボタンを押すことでチャンネルが変わったり、メニューを呼び出せたりするのがリモコンの役割だ。電子機器にリモコンは不可欠だが、一方で多くの電子機器がスマホのリモコンアプリに対応していて、音声認識で操作できるようになっている。
リモコンの現在地について考えてみます。
物理リモコンの現在地
リモコンは物理的なものなので、スマートフォンの画面のようにボタンの位置や機能が変化することはない。それぞれのボタンには、それぞれの機能が付与されていて、それらの機能は変わることがない。「電源」ボタンを押したら電源が入り、「1」を押したら1チャンネルに変わる。
いつでも同じ場所を押したら同じ挙動をする安心感がリモコンにはある。
ところが、テレビやレコーダーの機能が増えるにつれて、リモコンのボタンは増えていった。最近ではネットサービスとの連携が進み、ネットサービスを起動するボタンが増えた。
ボタンが増えれば、視認性は悪くなるし、リモコンのサイズは大きく嵩張るようになる。
一時期は据え置き型リモコンと携帯型リモコンの2種類を同梱しているテレビもあった。大きな据え置き型リモコンはボタンがたくさんあり全機能が使えた。普段使いのための携帯型リモコンは電源やチャンネル変更など最低限の機能のボタンだけがあった。
最近では、テレビやレコーダー用には細長い形状のリモコンが一般的だ。縦に長すぎて、手の位置を変えないと普通の人の指ではすべてのボタンに触れることができない。
それでも細長リモコンが使われているのは、物理リモコンだけではなくスマホのリモコンアプリで操作できるからだろう。
リモコンアプリ
多くのリモコンアプリが物理リモコンを模している。アプリだからボタンの機能や形状をシーンによって変えることができるが、多くのリモコンアプリではボタンの機能が変わったり、形状が変わったりしない。物理リモコンと違うのはスクロールできることだ。スマホのディスプレイは物理リモコンほど細長くはないので、物理リモコンのすべてのボタンを一度に表示できない。その代わり画面を指でスクロールさせることで、すべてのボタンに触れることができる。
それ以外にリモコンアプリの表示が使用用途やシーンによって変わることはない。たとえばレコーダーで再生しているときに再生時間や早送りのスピードをアプリに表示することがあっても良いと思うけど、そういうアプリは少ない。AV機器の場合、常に画面を観ているので、そういった情報は画面に表示すれば良いという考え方なのだろう。
音声認識
最近は音声認識に対応している電子機器も多い。Alexaなどのスマートスピーカーデバイスと組み合わせることで、音声で電子機器を操作することができる。声を出すのは面倒くさい気もするけど、音声認識のメリットはリモコンを見ることなく画面を見ながらでも操作できることだ。
すべての機能を音声で操作する必要はなく、音声でも操作できるというのが良い。リモコンに触ることなく、立ち上がりながらテレビを消すことができる。
Apple TVのリモコン
Apple TVのリモコンは、他のAV機器に比べて、ボタン数が極端に少ない。Apple TVのインターフェイスに合わせて再生 / 一時停止ボタン、メニューと方向ボタンだけがある。Appleらしいシンプルなデザインだ。
前モデルのApple TVからSiriで操作できるSiri Remoteが同梱された。
今年発売された新しいApple TVのSiri Remoteはデザインが変わりボタン数が増えた。電源ボタンや戻るボタン、ミュートボタンが追加された。以前のモデルではメニュー選択するのはトラックパッドだけだたったが、新モデルではトラックパッドを内蔵するカーソルボタンに代わった。
前モデルのSiri Remoteのデザインはシンプルでよかったけど、暗闇だと上下を間違えやすく、電源ボタンがないので慣れていない人だと電源を入れるのもおぼつかない。Appleからしたらデザインの敗北と思ったかもしれない。
天下のAppleでさえ、リモコンにおいてはデザインを優先できなかった。
セブンイレブンのコーヒーマシンがおしゃれなデザインすぎて使い方がわからない人が多く、ラベルをべたべた貼られてしまったのが話題になったけど、コンビニみたいに不特定多数が使うデバイスではないApple TVでもリモコンのボタン数を増やさないといけなかった。
機能とボタンのバランス
リモコンの機能とボタン数のバランスは本当に難しい。機能ひとつとボタンひとつの組み合わせが原則なので、機能を増やせばボタンが増えてリモコンが大きくなる。
今までも色々なリモコンが試されてきたけど、まだ正解はない。大昔からあるリモコンだが、工夫する余地がまだある分野かもしれない。