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「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」を7月18日に刊行

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本当にAppleは天使でグーグルは悪魔なのか。広告を取り巻く話

トラッキング広告を「規制」するApple

Appleは以前から企業の個人情報の取扱い方に異議を唱えてきた。最新OS「iOS 14.5」ではアプリ間の「トラッキング」の規制に乗り出した。iPhoneでアプリを立ち上げると、「あなたのアクテビティを追跡することを許可しますか?」と尋ねられるようになった。

各マーケティング企業はアプリやブラウザを通じて、ユーザーの行動を監視して、その人の性別や嗜好を収集し、それに合わせた広告を表示するようにしている。これがターゲティング広告といわれるもので、より効果的な広告を表示して、下衆な言い方をすれば、より多くの商品をユーザーに買わせようとしている。

ターゲティング広告を主導しているのがGoogleとFacebookだ。Googleの売り上げの95%以上が広告収入で、年間20兆円(!)近く儲けている。効果的な広告を表示するためにユーザーのトラッキングは必須なので、トラッキングの規制は広告を提供している企業にとって死活問題だ。

当然、GoogleとFacebookは反発している。特にハードウェアのプラットフォームを持たないFacebookは、「Appleが独占的すぎる」とAppleの動きを強く牽制している。

Appleは「ユーザーは自分のプライバシーを管理する権利を有する」と反論し、一歩もひかない姿勢だ。広告収入が減少してもAppleの売り上げは落ちない。Appleはハードウェアとサービスでの売り上げがほとんどなので、広告に依存するビジネスモデルではない。

「ユーザーは自分で個人情報を管理すべき」というAppleの主張は正しく思えるし、ユーザーの個人情報でビジネスをしているといえるGoogleとFacebookは悪だという見方もできる。

Googleの社訓には「邪悪になるな」とあるのに、やっていることは正反対じゃないかという批判も強い。

でも、そんな単純なことなのか。少し考えてみます。

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Facebookの主張

Facebookはトラッキング広告は中小企業を支援していると主張している。大量の個人情報を収集することができない中小企業でもトラッキング広告を活用できれば、効果的に潜在顧客へアプローチできるというのがFacebookの主張だ。

そもそもトラックング広告は本当に「悪」なのか。ユーザーの嗜好に合わせた広告を表示するのがトラッキング広告なわけで、欲しくもない広告ばかり表示されてもユーザーは嬉しくない。

多くのサイトで記事を無料で読むことができるのも、アプリを無料で使用できるのも広告収入があるからだ。ターゲティング広告が効果的でなくなり、広告収入が減れば、ユーザーは無料でアプリを使用できなくなる。それがユーザーにとって幸福なのかどうかは意見が分かれるところだ。

Appleの主張の背景

Appleはユーザーのために個人情報を保護していると言っているが、本当にそうなのだろうか。Appleは広告に依存していないビジネスモデルだ。穿った見方をすれば、広告収入に依存しているライバル企業を蹴落とすために、個人情報保護を声高に標榜しているともいえる。

Appleが個人情報を収集していないわけではない。クレジットカードや住所、指紋や顔認証データ、音声情報、さまざまな個人情報がAppleの製品・サービスに使われている。すべての個人情報をAppleが管理しているわけではなく、指紋や顔認証データは端末外には漏洩しないようにしていて、Appleはタッチできない。Siriの解析に使われる音声情報はAppleのサーバーに送信されるが、個人IDとは照合されずに匿名性を保持している。

Appleの製品とサービス内なら個人情報が保護されるわけで、個人情報保護がApple製品を選ぶアドバンテージになっている。

いやらしい見方をしてしまえば、個人情報保護がAppleのエコシステムの強化につながっている。

そのAppleをEpic Gamesは独善的だと主張している。AppleデバイスにインストールするアプリはAppleの審査を通過する必要があり、アプリの売り上げの30%をAppleが徴収している。アプリを削除する権限もAppleにある。独占的な地位を悪用してAppleがアプリ開発企業を支配しているとも取れる。

個人情報保護を叫ぶのもAppleの製品とサービスにユーザーを囲み、Appleの支配的地位を維持する意図があるとも考えられる。

ユーザーのために悪質なアプリを削除しているとAppleは反論しているが、大きなシェアを握っているAppleだからできるとことだともいえる。

より良い方法とは

当たり前だが、AppleもFacebookも営利を追求するのが目的の私企業だ。どんな主張・方針にも思惑がある。自社の業績が著しく悪化するようなら、個人情報保護を追求する方針はとらないだろう。もしもAppleが広告主体の企業だったら、トラッキング広告の防止を言い出しただろうか。

FacebookはSNSで独占的地位を得るために、Instagramなどのライバル企業を次々と買収してきた。それぞれの企業が自社の強みを生かして、伸ばすことで競争に打ち勝とうとしている。

その中で、Appleの「ユーザーの選択肢を与える」という方法は完璧ではないが、妥当なアプローチに思える。確かにスマートフォンのプラットフォームで独占的地位にあるAppleだからできるアプローチではあるが、ユーザーに委ねることでユーザーはどちらの選択も自らの意思で選ぶことができる。それにも問題はある。たとえば、ターゲティング広告を正しく理解していないと、「行動を把握されるなんて気持ちが悪い」という第一感でユーザーは拒絶してしまう。その行為が無料ゲームで遊ぶ自分の首を締めることになるかもしれないのに。

おそらく、今後も各企業のビジネスモデルに根ざした主張と反論が続くだろう。個人情報保護をユーザーが望めば、ターゲティング広告は減っていき、広告収入でビジネスをしていた企業の力は弱まり、無料アプリも衰退するかもしれない。

それも、ユーザーの選択しだいだ。ユーザーとしては正しい知識を吸収して、自分の嗜好にあった選択をみんなが行うことで未来が決まっていく。

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