Metaが1万1000人以上削減
FacebookやInstagramを運営しているMetaのザッカーバーグCEOが全従業員の約13%にあたる1万1000人以上を削減すると発表した。
どうして大規模な人員削減が必要になったのか考えてみます。
利上げによる景気減速と競争激化
ザッカーバーグは人員削減する理由として、アメリカの金利上昇による景気減速と他社との競争激化を挙げている。
金利上昇に伴いアメリカを中心に景気が減速する観測が出ている。全体的にアメリカの株価は低迷しているし、特にAmazonやAppleなどIT企業の株価下落がきつい。近年のSNSサービスは、Facebook以外にもマスク氏の買収で注目を集めているTwitterやTikTokなど多くのサービスがあり、覇権争いが激しい。Facebookのアクティブユーザー数はほぼ横ばいで、ユーザー数は伸びておらず、新興SNSに追い上げられている。
確かに、景気低迷と競争の厳しさは、Metaの業績低迷につながっているのは間違いないが、もっと大きな理由がある。
ターゲット広告
Metaの売上の大部分を占めている広告事業だが、売上が減少している。Facebookの利用者が増えていないことと、ユーザーの動向に合わせて広告を表示するターゲット広告の不振が響いている。AppleがiPhoneのターゲット広告の有無をユーザーに委ねるようにしたのが要因だ。個人情報の管理はユーザーが判断すべきだとAppleは主張しているので、この状況が今後変わりそうにない。
利益が改善しないなら、コストを減らすのは経営者としては当然で、今回削減対象はFacebook関連の業務についている社員が多いに違いない。
メタバース
Metaの1番の問題は別にある。Metaに社名変更するきっかけとなったメタバースだ。Meta、というよりザッカーバーグCEOはメタバースにご執心で、メタバース事業立ち上げに莫大な投資をおこなっている。だが、メタバースの売り上げは現時点ではごくわずかで、巨額の赤字を計上する事態に陥っている。
メタバースは数年単位で収益を稼げるものではなく、十年単位の長期的な視野に立つ必要があるとザッカーバーグは言及したので、短期的な収益改善に悲観的になった投資家がMetaの株を売り、株価が暴落している。
メタバースへの投資をやめるべきだと主張する株主も出てきているが、創業者であるザッカーバーグが議決権を持っているので、メタバースの投資を止められないでいる。
ただ、収益の悪化が続けば、大株主であるザッカーバーグでも安穏としていられないので、人件費を削減し収益を改善する必要性に迫られているというわけだ。
Metaはどうなる?
収益源だったターゲット広告に批判が集まり、今後の広告収入が不透明になったところで、新たな収益源としてメタバースの投資にザッカーバーグは踏み切ったわけだが、ザッカーバーグが想像したようにはメタバース市場は成長していない。
それでも、後には引けないとメタバースのアクセルをMetaは踏み続けている。
これは創業者が権力を握り続けている企業の弊害だろう。創業者であるザッカーバーグでなければ、ここまで急速に舵を切れなかったに違いない。迅速な経営判断がはまればブルーオーシャンをいち早く制覇し莫大な売上を得られるが、外した時のリスクが大きい。
今回、大規模な人員削減に追い込まれたことからもわかる通り、今のところザッカーバーグの賭けはうまくいっていない。
それでもザッカーバーグはメタバースの旗を下ろしていない。今回の人員削減により収益が改善し、メタバースが売上を伸ばすまでMetaが生き残れるか、さらに低迷が続くかは注目である。