宝島社より 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」 が発売になりました。私にとっては初の商業出版になります。
自分の小説が本屋に並ぶという中学生からの夢がようやく実現します! 興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

MENU

スマートフォン復活の鍵は「命令の自動化」

売れないスマホ

スマートフォンが売れていない。2018年の出荷台数はマイナス3%。iPhoneの販売台数低迷は話題になったが、Appleだけの問題ではなく、サムソンの利益も大幅に減った。Appleとサムソンよりもはるかにシェアが小さいSONYやLGなどは、おそらく大幅赤字を計上し、このままではスマートフォン製造撤退を検討しなければならなくなる。

f:id:tkan1111:20190127134539p:plain

売れない理由はシンプル

スマートフォンが売れない(正確に言えば市場が成長していない)理由は、消費者がスマホを買い換えないからだ。スマホは多くのユーザーに行き渡っているので、販売台数をこれ以上伸ばすためには、今スマホを使っている人に買い替えてもらう必要がある。

ところが、この十年続いてきたスマホの進化は停滞し、多くのユーザーが「今のスマホで満足」と思っている。これでは、新機種に買い替えてもらえない。

たしかに、TwitterやInstagramなどのSNS、漫画やラノベの読書、LINEでやりとりするのに高性能スマートフォンは不要、少し前のスマートフォンでも何ら困らない。

「今持っているスマートフォンの不満」を尋ねたアンケート結果では、「バッテリー」が一番だった。バッテリーの持ち時間、バッテリーの劣化に不満が集中していた。

逆に言うと、それ以外の基本性能に不満を抱く人が少ないことになる。

インプットとアウトプット

スマートフォンの源流はパソコンである。パソコン時代から変わらず、コンピューターの基本はインプットとアウトプットだ。キーボードやマウス、スマホでは指でのタッチにより入力(インプット)が行われ、画面表示や音が出力(アウトプット)される。

素早く間違いがないインプットと余計なものがないアウトプットがコンピューターの理想の姿だ。余計なものが視界に入らないフルディスプレイスマートフォンはアウトプットの究極の形だから、スマートフォンにおける進化の方向性が見えなくなったのだ。これ以上の進化は音質が良くなるとか、ディスプレイが大きくなることだが、大画面化は携行性とのトレードオフになる。ワイヤレスイヤホンで聴くことも増えたスマートフォンのスピーカーに音質を求める人は少数派だろう。

インプットとはインタフェースとセンサー

パソコンからスマートフォンへの移行で最も大きく変わったのはインタフェースだ。キーボードとマウスがタッチパネルに変わった。物理的なキーボードから仮想キーボードに変わったことで場所をとらなくなり、不必要なときはキーを消して画面を表示できるようになった。

もうひとつ変わったのは、画面との距離だ。スマートフォンとパソコンでは画面との距離が3倍は違う。画面が近ければ没入感も高まり視線の移動量も少なくてすむ。

スマートフォンでインプットされる情報は膨大に増えた。GPSやジャイロコンパスなど様々なセンサーをスマートフォンは内蔵し、多くの情報をインプットするようになった。

モバイル通信経由でも多くの情報をインプットしている。ユーザーが関与していないところでも多くの情報をスマートフォンは蓄積し随時更新している。

センサーを増やせば情報量は増える。たとえば温度計センサーなど、まだ多くのスマートフォンにはない。でも、ネット経由で周辺地域の気温を確認できる。限られたスマートフォン内部のスペースを取るセンサーを内蔵するべきか判断が難しくなる。

命令の自動化が次のポイント

情報はたくさんある。アウトプットの環境も整っている。ではスマートフォンの進化はどこへ向かうべきか?

スマートフォンの次の課題は、命令の自動化だ。インプットされた情報をアウトプットに繋げる命令を実行するのは人間だ。Twitterを起動するのも、LINEを送るのもユーザーが命令する必要がある。検索するのもユーザーが語句を入力しなければならない。

簡単に命令できるように指だけではなく音声でも実行できるように各社は進めている。タッチディスプレイの入力は指だけではなく視力も専有する。音声なら別の場所を見ていても入力できる。

もうひとつの進化はAIだ。今ではメールを参照して必要な予定作成をAIが提案してくれる。検索語句から必要そうな情報を提示してくれる。AIによって、人間が命令を起こす場面を少しでも減らすように各社は取り組んでいる。

AIの進化はハードの買い替えに繋がるか?

AIの進歩による命令の自動化は、今後も続くだろう。だが、AIが行動するのはスマートフォンの内部だけではなく、クラウドの世界だ。音声解析を行っているのはクラウド上でスマートフォンのハードはほとんど影響しないから、高性能なスマートフォンは不要だ。命令の自動化はスマートフォンの買い替え需要には繋がらないかもしれない。

近い将来、インプット環境を劇的にかえるのが5Gだ。5Gの通信速度は現状の約100倍。クラウドシステムとの通信が高速になれば、AIでの解析もリアルタイムで行うことができるようになる。

5Gの普及がスマートフォンの買い替え需要を喚起し、それが起きるのは2020年だろう。