近年、アメリカでは電子書籍の売上が減少しているそうだ。
日本では雑誌や漫画を中心に電子書籍の売上は堅調に伸びている。「日本は紙の本を捨てられないガラパゴスな市場」という主張は古く、アメリカより遅れたものの今は順調に日本の電子書籍市場は拡大している。
dマガジンというメシア
貢献したのは『dマガジン』に代表される定額雑誌読み放題サービスだ。dマガジンは、170誌以上の雑誌を読み放題で400円の低価格で人気を博している。日本の出版社との交渉は骨が折れるのか、docomoの支払いが良いのか、Amazonなどの外資系企業はついてこれず、この手の新規サービスには珍しく日本企業がリードしている。Kindle Unlimittedは一般書籍が中心だし、例の騒動でケチがついた。
docomoとの契約単価x利用者数が出版社の売上になり、読者が多いほど売上が増える仕組みだ。広告や表紙で雑誌を買わせる時代から、いかにページを読ませるか単発でもよいので魅力的な記事を掲載するかが雑誌の浮沈を決める時代になってきた。dマガジンには人気記事ランキングがあり、雑誌を横断して人気がある記事だけを読むことができる。
漫画の形態まで変えるスマホの影響
もうひとつ大きく伸びたのが無料漫画サイトだ。ネットサーフィンしていると、うざいぐらい広告が出てくるアレだ。無料なのはサンプルや短い話だけで、当たり前だが課金を目的としている。Kindleでも売れているのは漫画が圧倒的に多い。2015年度の売上でも、漫画は一般書籍の4倍ある。
漫画は分厚く冊数も多く場所を取るので、電子書籍に向いていると当初から言われていたが、やはり漫画の電子書籍はおおきく伸びている。
画面が大きい方が漫画を読みやすいが、タブレット販売の伸びは悪く、スマホの小さい画面で読むのが主流になっている。スマホで漫画を読むのが一般したことににより、漫画のレイアウトも変わりつつある。4コマ漫画みたいに縦スクロールで読めるレイアウトが増えてきた(スマホで読みやすい縦スクロール対応した小説というのも一案だと思うが、本題から逸れるのでここまで)。
形を変えて生き抜くコンテンツ
今後も電子書籍市場は日本では堅調に伸びそうだ。出版業界は不況で弱っている。以前は出版業界独特の物流を守るために電子書籍には及び腰だったが、そんなことは言っていられない。自分の食い扶持が危ないのだ。
docomoのように外部の企業がコンテンツを有効的に販売する方法を出版社に提示し、既存の販売形態とは異なる新たなサービスを今後もだしてきそうだ。それによって、雑誌や漫画が今までとは別の形態に変わるかもしれないが、活版印刷の昔から書籍(コンテンツ)は技術とニーズによって形を変えてきた。
漫画主体のドラマや映画が日米ともに多いように物語コンテンツの重要性は変わっていない。これからも形を変えて良いコンテンツは生き残るに違いない。