波紋が広がる不正利用事件
Facebookからのデータ不正抽出事件により、個人情報の取扱いについて議論が起きている。
GoogleやFacebookのような、いわゆるプラットフォーム企業が膨大な個人情報を保有している。企業が個人情報を流出すれば、法的にも社会的にも罰せられることになるが、そもそも一企業が多くの個人情報、言い換えれば権力を独占してよいのかという議論に行き着くのは自然だ。
無料が文化
インターネットは、創成期から無料でサービスを利用できるのが基本だった。マネタイズよりも、全世界のエンジニアが自分らの技術を競うことでネットのサービスは発展してきた。
サービスが高度化し、ユーザーが増大してくると無償でサービスを提供するのには限界が生じてきた。そこで「広告」モデルが生まれた。多くのユーザーが集まるところに広告を貼り、広告料金を得るモデルだ。
ネット広告は店舗のショーケース
ネットの「広告」というのはテレビや新聞の広告とは大きく異なる。
まず、広告と販売が非常に近い。広告から数クリックすれば商品を買うことができる。テレビや新聞の広告を見て、その商品が欲しくなっても、ネットに接続したり、店舗へ赴いたりと手間がかかる。ネット広告を現実世界で比喩するのは難しいが、広告というよりも店舗のショーケースをネットのあちこちに設置するイメージのが近いだろうか。
分析される顧客嗜好
もうひとつ、顧客データを容易に取得できる点が実店舗と異なる。店舗販売であれば、会員証発行などの手段を用いなければ、店舗は顧客情報を入手することができない。その顧客がどういう嗜好で、今まで何を購入してきたかもわからないし、わかったとしてもアプローチの手段がない。
ネットであれば購入履歴から、その人が何が欲しいか、どういったものを勧めると買ってくれるのかがわかる。それを上手に活かしたのがAmazonだ。
購入履歴ではなく、買う前の情報からその客がどういったものを欲しくなるのか、どういった広告が有効的なのかを知るために、各企業は個人情報の収集に乗り出す。
Googleがなぜ無料で地図やメールサービスを提供しているのかといえば、個人情報を入手したいからだ。生活圏内がわかり、どういったことを話題にするのかわかれば、ユーザーごとにカスタマイズした効果的な広告を見せることができる。
GoogleとFacebookは提供するサービスは異なるが、基本的に同じビジネスモデルを採用している。
不正利用を防ぐには
ここまでGoogleとFacebookが個人情報を収集する経緯と目的をみてきたが、こういった不正利用や流出を防ぐために私企業が個人情報を収集を禁止するというのも現実的ではない。
個人ごとに適合した緻密なサービスを求めるのは、今後も変わらないだろう。個人情報を提供するかどうかの選択肢をユーザーが持ち、かつ収集した企業は厳密に管理する以外に方策がないように思える。一度経験した便利なものを人は捨てられないのだから。