2021年にARMベースMacbook?
6月開催のWWDCで、Intelチップから自社開発のARMチップベースに移行する計画をAppleが発表するとまことしやかに噂されている。
どちらかというと、当ブログはARMチップベースのMacの存在には否定的だった。トラックパッド搭載のMagic Keyboardが発売され、iPadが次世代コンピュータとしてMacにとってかわると考えていたからだ。
ただ、ここまで噂が顕在化すると、どうやらARMベースのMacは本当に開発されているようだ。
ARMベースに移行するメリットと課題を考えてみます。
ARMベースへ移行するメリット
Bloombergの報道によると、「Kalamata」プロジェクトという移行プロジェクトがWWDCで説明される。次期iPhoneに採用される新しいSoc「A14」をベースに現行のiPadよりも高速なチップがARMベースMac向けに開発しているとのことだ。
IntelチップはもちろんIntelから購入している。自社開発のチップに移行できれば、生産もコントロールできるし、コストも下げられる。
現在リモートワークの隆盛によりPCの販売台数が伸びて、Intelチップが欠品している状態が続いている。自社で生産できれば、生産もコントロールできる。
Intelは定期的に新チップを発表し、それに合わせて最新のPCをPC各社が発表するのが現在のスタイルだ。自社開発チップであれば、Appleの都合で新製品を発表できるし、スペックが高ければアドバンテージになる。すでに現行iPad ProはMacの性能を凌駕している部分もあるので、OSの違いはあるが、かなりの高速化が見込める。
ARMチップベースはIntelチップよりも省力化なのでバッテリー持続時間を伸ばすこともできるし、バッテリーを減らしてMacを軽量化することもできる。
ARMベースに移行するメリット
- コスト削減
- 生産のコントロール
- 高速化
- 省力化
- 軽量化
ソフトウェア資産の移行が課題
いいことばかりに思える移行計画だが、課題はソフトウェア資産の移行だ。Macには10年以上にもわたって豊富なソフトウェア資産がある。iPhone用のアプリとは異なり、MacにはAppleが管理しているApp Store以外のアプリも大量に存在する。
チップが変われば、過去のソフトウェアは基本的に稼働しないので、コードを書き換えないといけない。
過去のソフトウェアだけではなく、新しいソフトウェア開発も影響を受ける。全てのMacが一瞬でARM製に移行するわけではないので、移行期にはIntelベースとARMベースの両方に合わせたソフトウェア開発をしないといけない。
現行macOS「Catalina」には、macOS/iPadOS/iOSで稼働するソフトウェアを作成できる「Mac Catalyst」が搭載された。これは豊富なソフトウェアが日々開発されているiOS向けアプリをMacでも使えるようにして、Macのソフトウェア資産を増やす試みであるのと同時に、MacからiOS系OSへ移行を促進するためだと思われていた。
だが、この流れはMacを将来消滅させるための取り組みだ。今回の噂はARMベースのMacを存続する計画なので、AMRベース向けソフトウェア開発の環境を整備するのと同時に、おそらく現行ソフトウェアをARMベースチップで稼働するエミュレータのようなミドルウェアを準備すると思われる。
エミュレータを間にかますと、動作速度が遅くなる。ARMベースに移行して動作速度が落ちるようでは移行の意味が薄れる。ミドルウェアを経由しても動作速度を維持できるほどに高速のチップが必要になる。そのために、最新チップA14を改良(おそらくコア数を増やす)して、ミドルウェアを稼働させても現行のMac(少なくてもローエンドレベル)の性能は維持すると思われる。
革新的なMacが生まれる?
改めて考えると、ARMチップベースへ移行するメリットはかなりある。特にMacbookシリーズの内部はバッテリーだらけになっているので、ARMチップへ移行することで省力化が実現できればバッテリーを大幅に削減し軽量化できるし、デザインにも自由度が広がる。
ソフトウェア資産の移行が困難だから、MacのARMチップへの移行はせずにMacのソフトウェア資産をiPadに移行し、将来的にiPadが次世代コンピュータとしてMacの機能も吸収すると考えたが、これだけのメリットがあるなら、既存のソフトウェアを生かしつつMacとiPadを棲み分けする方が合理的かもしれない(将来的にMacが消滅するかはまた別の話として)。