好調なApple決算
Appleの2020年Q1の決算は、売上が前年同期比9%増、利益は11%増と、売上・利益とも過去最高だった。
好調の要因と今後の見通しを記します。
好調だったiPhone
AppleのQ1決算は、毎年新型iPhoneの売上が左右する。今期はiPhone 11シリーズの売上が好調で前年同期比で売り上げが8%伸びた。iPhoneの売上が前年同期比で伸びたのは1年前以来のこと。
Proシリーズに搭載したトリプルカメラ、無印とProというシンプルなモデル体系にしたことが功を奏したようだ。
iPhone 11シリーズはカメラ性能以外は前年モデルと大きく変わっていないが、iPhone XSをスキップしたユーザーの買い替えが多かったのだろうか。
今年の秋に登場すると思われる新型iPhoneは、5G搭載やモデルが増えることが予想されている。5G搭載は値上げにも繋がるので、全体の売上を維持するため販売台数を落とさないように噂の廉価版モデルでカバーするのか、今後の対策が注目される。
大幅に伸びたAirPods
Apple WatchやAirPodsなどを含む「ウェラブル・その他」部門が前年同期比37%と大きく伸びた。特にAirPodsはAirPods Proが今でも品薄なように新しい必需品として定着しつつある。
とは言え、前期のQ4は前年同期比54%増だったので、伸び率は低下している。Appleは公言していないが、AirPodsのヒットの背後でApple Watchはそれほど伸びていないと思われる。Apple Watch series5は、前年モデルであるApple Watch series 4との違いは「常時点灯」ぐらいなので、大幅に売れたとはちょっと思えない。
今年の秋に恐らく登場するだろう新型Apple Watchで、停滞しつつあるApple WatchにAppleがどのような新機能を追加するか気になるところだ。
順調なサービス
ハードウェア製品だけではなく、Apple Musicなどのサービスも好調で、前年同期比17%の伸びだった。
Apple Music以外にも新しくスタートしたApple TV+も貢献したようだ。
ただ、前期は前年同期比25%の伸びで、今期の伸びはサービスのカテゴリーができてから過去最低だった。Apple全体のうちサービスのシェアは20%から14%に相対的に低下していて、勢いは落ちている。
Apple Musicや新しくスタートしたApple TV+はAmazonやGoogleなどと激しい競争に晒されている。今後、価格競争も苛烈さを増すだろう。
その中で、Appleのサービスがどこまで独自性を出せるかがポイントになると思う。
低迷するiPad
iPadは前年同期比マイナス11%と振るわなかった。前期までの一年のiPadは成長を続けていたが、2019年9月発売したiPadは価格が低く、iPad全体の売上増加には寄与しなかったようだ。
Macは前年同期比マイナス3%なので、MacよりiPadの方が落ち込んでいる。
iPadは初代登場から10年が経過した。Appleは「iPadは次世代コンピューターだ」と主張しているが、思うように進んでいない。
iPad ProからiPad、iPad Air、iPad miniと過剰ともいえるラインナップを揃えたのに、売り上げが伸びていないとなると、この次の展開が難しい。タブレット市場は、実質Appleが独占しているので、タブレット市場を拡大するか、製品単価を上げないと売上は伸びない。
iPad Proのシェアをどれだけ伸ばせるかが鍵となるだろう。
iPhone依存からの脱却
過去最高の売上・利益と好調だったAppleの決算だが、iPhoneのシェアはApple売上全体の61%と前期より増えて、iPhone依存が進んだ。新しく登場したiPhoneが最も売れるQ1はiPhoneのシェアが伸びる時期ではあるが、昨年同期のApple内iPhoneのシェアは62%だったので、1%しか下がっていない。
ここ数年のAppleは飽和化しつつあるスマートフォン市場を見据えて、iPhoneからの脱却を進めてきた。Apple Watchなどのウェアラブルとサービス部門は伸びているが、今期は前期よりも勢いは落ちている。
性能・売上ともに停滞の兆しがあるApple Watchをどのように進化させるか、競争が激化するサービス部門でどのように独自性を出すかが大きな課題となるだろう。
ヒントは、大ヒットとなったAirPodsだ。Appleらしい洗練されたインターフェイスとデザインは他社にないものだ。Appleの強力なブランドパワーを背景にした、生活を変えてくれる予感がするプロダクトは、大ヒットする。
完全ワイヤレスイヤホンはAirPods以前にもあったが、Appleが参入すると、急速に一般化し、市場そのものすら変えてしまう。iPhoneもそうだったし、Apple Watchもそうだった。
こういった革新的なプロダクトを提供し続けるのがiPhone脱却に繋がる唯一の道なのかもしれない。