宝島社より 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」 が発売になりました。私にとっては初の商業出版になります。
自分の小説が本屋に並ぶという中学生からの夢がようやく実現します! 興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

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「ふたりの余命」ができるまで

「ふたりの余命」ができるまで

宝島社から10月5日に「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」が発売になります。著者初の商業出版になります。本作の元になったのがAmazon Kindleで販売している「ふたりの余命」です。

作家が自著の話をするのを嫌がる人もいると思いますが、少しでも「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」に興味を持ってもらいたく、どうして「ふたりの余命」ができたのか記したいと思います。

ネタバレは含んでいませんが、本編を読む前に予備知識を一切入れたくない方は読み飛ばしてください。

書いたきっかけは?

ふたりの余命」を書いたのは、タイトルは忘れてしまいましたが、恋人が亡くなる恋愛小説を読んで感動して、自分でも書いてみたいと思ったのがきっかけでした。

私が書いた小説はほとんど人が亡くなりませんでした。別に死を避けていたわけではないですが、ミステリー小説でも殺される人はほとんどいません。だけど、人を感動させるのに人の生と死は避けて通れません。

今回は人を短い人生をテーマに据えることにしました。生と死についてあれこれ考えていたら、まだ「余命」をタイトルにした作品が世に広まっていないときだったのですが、「二人合わせて余命三年」というタイトルが頭にふと浮かびました。
どうして「三年」だったのかあまりよく覚えていないけど、「三日三月三年」というから三年が収まり良かったのだと思います。

そこから、主人公の余命が二年、もう一人の主人公が一年とふたりの余命をずらすアイディアが生まれました。ふたりの余命に差をつけたことで、その後の物語の流れが決まったように思います。

「二人合わせて余命三年」は長くてわかりづらいので、Kindle版は「ふたりの余命」というシンプルなタイトルに変更しました。自作のタイトルをつけるのが苦手な方なので、この時も散々悩みましたが、ふたりの物語なのでわかりやすい「ふたりの余命」を採用しました。

今回書籍化された宝島社文庫版では、旧タイトルでふたりの余命を合計した三年だったのが、ふたりのそれぞれの余命を記した「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」がサブタイトルになったのは先祖返りしたみたいで、面白いですね。

登場人物は?

最初に決まった登場人物は、主人公の男子高校生でした。過去に女子高生が主人公の恋愛小説を書いたことはあったのですが、男子が主人公の作品はなかったので、いつか男性視点の恋愛ものを書きたいと思っていました。

主人公たちの友人もすんなり決まりました。登場回数が少ない脇役を印象深くするために、ふたりとも結構尖ったキャラしました。陰謀論が好きな友人晃弘(あきひろ)は昔見たアメリカのドラマの人物をモデルにしました。女子の友達はグルメ漫画に出てくるキャラクターをモデルにしています。

主人公の名前「椎也(しいや)」は、「シーナ」という大昔にあったゲームタイトルの語感が気に入っていたので採用し、男性名っぽくするために最後の漢字を「也」に変更しました。「しい」には女性主人公の「楓(かえで)」との対になるように樹木名の「椎」の漢字を当てました。調べた限りでは、「椎也」という名前の人物が登場する小説や漫画をなかったので、新鮮な名前になったのかなと思います。

女性主人公の「楓」は、スピッツのシングル曲「楓」からとりました。スピッツが紡ぐ詩の世界観が好きで、歌の雰囲気が感じられる小説を描ければと思っているのですが、なかなか難しく、今回は歌の題名を登場人物の名前にお借りしました。

悩んだのが死神の存在でした。「余命もの」なら、不治の病が定番ですが、病気ものは過去にもたくさん書かれていて、オリジナリティが出せるようにはあまり思えませんでした。

そこで、死神に登場願ったわけですが、その死神の姿をどう描くかは頭を悩ませました。死神と聞いて最初に思い浮かぶのは黒い服に大鎌を持ったイメージでした。雰囲気としては「デスノート」のリュークみたいな感じです。

ただ、物語全体のトーンは、軽いタッチにしたかったので、黒服の死神では重たすぎると思い、考えたのが小さい侍姿の死神でした。

どこかの企業マスコットに使われていた二頭身の侍が頭に残っていて、死神ミナモトはそのマスコットをイメージしました。

ミナモトが「でござる」と話し始めたときに、物語のトーンが決まった気がしました。

内容は?

物語は深刻な雰囲気ではなく軽いタッチで進行していきます。とは言っても、タイトルに「余命」とある通り、「生と死」を扱った話になります。

「短い人生をどう生きるか」を考えたときに浮かんだ言葉が「生きる希望としての夢」でした。余命が少しずつ短くなっていく中で、人が求めるものはなんだろうと考えたときに「夢」に辿り着きました。

クライマックスまでは当初作成したプロット通りに話が進みました。ただ、エピローグの内容は決めていませんでした。それなのに、いざ書き始めると登場人物が勝手に動き出し、作者が思ってもいないことを話し始めました。ラストは作者が全く予期していなかった台詞が飛び出し、物語は終わりました。

書き終わった瞬間に「良い物語が書けた」と実感しました。過去に20作品以上を完成させてきましたが、自作で心より感動できたのは「ふたりの余命」が最初だったと思います。

自信とは自分を信じること

「ふたりの余命」の出来には自信がありました。自分で読んでこれほど面白く感動できる小説は過去になく、これで評価が低いなら自分の感性を根本から見直さないといけないと決意して出版したのを覚えています。

幸いなことに、「ふたりの余命」は著者史上最も多く読まれた小説になりました。Amazonで長く一位を維持し、評価も高く600以上のレビューをいただき、多くの素敵な感想をもらいました。

その「ふたりの余命」を大幅改稿して、書き下ろしを収録したのが10月5日に宝島社より発売される「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」になります。

全面的に改稿したので、Kindle版よりも読みやすくなったと思います。「ふたりの余命」にはない書き下ろし「エピソード0 ひとりの余命」も収録しています。

ふたりの余命」を読んだ方も、そうでない方も「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」をぜひお手に取ってみてください。きっと楽しめると思いますし、読み終わった時には目の前の景色が少し変わって見えるはずです。