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水素自動車(FCV)に執着するトヨタは日本の雇用を守れるのか?

水素自動車にご執心のトヨタ

全世界がEV(電気自動車)の普及に方向を定めている。温室効果ガスをゼロにするカーボンニュートラルを実現するために、各国政府は2030年前後にガソリンエンジン搭載の自動車の全廃を目指している。

政府の方針に合わせて、多くの自動車メーカーがEVへのシフトを鮮明にしている。日本でもホンダ自動車が2040年までにガソリン・ディーゼル車を全廃するとしている。

しかし、トヨタはEV一辺倒に警告を発し続けている。その理由は「雇用」だ。自動車産業は日本の基幹産業の一つで、日本の人口の約9%が自動車産業に従事している。EVにシフトすると自動車の部品点数は1万点減ると言われている。ガソリン車が廃止になれば、多くの部品メーカーが廃業に追い込まれるだけではなく、ガソリンスタンド、車検のための自動車整備工場など、影響を受ける業種は多岐にわたる。

だから、トヨタは「エンジン」を用いる水素自動車(FCV)の開発普及を目指しているのだ。

トヨタがFCVを普及させて、日本の雇用を守れるのか考えてみます。

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国内の理屈

トヨタがFCVを推す理由に雇用だけではなく、EVを支える発電設備が充分ではないことを挙げている。現在の国内の発電状況では、ガソリン車を廃して100%EVにすれば、電力が不足することになる。原発の増設が事実上不可能な日本で電力設備を増強するには、火力発電に頼るしかなく、それでは温室効果ガス削減という目標を達成できなくなる。

ただ、これは日本国内の理屈であって、原発を増やすことができる中国やアメリカでは関係がない話だ。

雇用問題も日本国内の問題だ。日本以外の国でも雇用の問題はもちろん起きる。しかし、日本ほど自動車産業に軸足を置いている国はドイツぐらいしかない。

自動車産業に従事しているドイツ国内の人口は13%で日本より大きい。ドイツでも雇用問題は当然議論になっている。しかし、だからといってドイツはエンジン車に固執していない。EVへのシフトを大前提として、雇用を維持するために、従業員のスキルチェンジを政府と一体になって進めている。

筋が悪いFCV

トヨタが推す水素自動車(FCV)は技術的に筋が悪いと思う。雇用を守るためにエンジン機構を維持するので部品点数は多いのでコストがかかる。現状のFCVの製造費用はEVよりも数倍かかる。いくら雇用を守れても、高価な自動車を買わされる国民はたまらない。

また、水素は扱いづらい。水素は可燃性が高く、気体なので運搬がしづらい。また、水素を生成するには電気が現状必要なので(様々な方式が模索されてはいる)、水素自動車全体が省エネなのか現時点では疑問がある。

コスト的にも電気よりも水素の方がはるかに高価だ。

水素ステーションは全世界で数えるほどしかなく、充電ステーションの数とは比較にならない。米国、欧州、中国など全世界で充電ステーションの建設を国家的プロジェクトとして進めている。トヨタが水素自動車に固執している間に、EVへの流れはさらに加速していて、FCVとの環境の差は広がる一方だ。

トヨタ潰しのEV戦略

EVにも課題はある。一番大きな課題は、蓄電池だ。大量の電力を保持して走行するには大型のバッテリーが必要になる。EVはガソリン車と比べて航続距離は短く、特に長距離トラックへの搭載は課題がある。EVは充電に時間がかかるので、早く運送したい長距離トラックにはきつい。

FCVなら航続距離をEVより伸ばせるし、充填にかかる時間もガソリン並みだ。

だが、欧州と中国がEVを推しているのはFCVと性能を比較して決定しているわけではない。乱暴に言えば、各国のEVへの偏重はハイブリッドのトヨタ潰しの目的がある。世界の自動車メーカーはハイブリッド車ではトヨタに敵わない。ハイブリッド車の開発で先行していたトヨタは数多くの特許を取得しており、これからイノベーションを起こしてもトヨタに追いつけない。

世界トップシェアを握るトヨタに打ち勝つためには、既存の土俵であるエンジン車とは全く違う土俵を用意して戦う方が手っ取り早い。だから、既存のガソリン車の機構を維持するFCVではなく、各国政府はEVにフォーカスしているのだ。

カーボンニュートラルはもちろん表の目標ではあるが、裏では「打倒トヨタ」を掲げているのが、世界のEVシフトなのだ。

トヨタは雇用を守れるか

トヨタ潰しを目指しているわけだから、トヨタがいくらFCVのメリットを叫んでも、他国がEVではなくFCVへ移行するとは思えない。水素ステーションの普及は企業だけでは無理で国家的後押しが必要だが、トヨタに利する水素ステーション建設に積極的な国はない。

日本政府だけFCVを後押しをしても、日本の自動車マーケットは縮小し続けているので、海外で売れなければ自動車産業は大きなダメージを被り、雇用も維持できない。

トヨタの海外販売比率は83%だ。国内でFCVが売れたとしても、海外で売れなければ既存の自動車産業を維持することはできない。

必要なのは抜本的な改革

もちろんトヨタもこんなことは百も承知だ。FCVだけではなく、EVの開発も同時に進めているが、EVでは現在の優位性を維持できないとも考えている。

だが、豊田社長は「雇用の維持のためのFCV開発」の旗を下ろそうとしない。

雇用を維持するためには、EV開発を進める一方で、別の産業を興すことを模索するべきではないかと思う。

富士フィルムは、カラーフィルムの大手メーカーだったが、市場がデジタルカメラへ移行すると、デジタルカメラの開発販売を始め、スマホの流行でデジカメ市場が縮小すると、フィルム製造技術を用いて、化粧品や医薬品という新たなジャンルへ進み、売上を伸ばしてきた。

時計は逆方向へは絶対に戻らない。EVシフトには各国政府の思惑もあり、時計の針のスピードは速い。このままでは、エンジン車が一気に陳腐化し、日本の自動車産業は消滅しかねない。

トヨタは豊富な資金と人材を用いて、新たなジャンルの開拓を行うべきではないか。

では、どのジャンルが良いのか。ひとつは蓄電池。バッテリー技術は進化を続けているが、抜本的な改革は起きておらず、EVもスマートフォンもバッテリーの塊になりつつある。

トヨタが本腰でバッテリー改革を行えば、大きなイノベーションが起きるかもしれない。

もう一つは、ITだ。EVは走るコンピューターと言われる。電子制御され、内部はモジュール化されている。テスラのように新たなファームウェアをダウンロードすることで自動車の性能がアップデート、新機能をアンロックされるのが普通なことになりつつある。

高度なEVを開発するにはIT技術の向上が不可欠だ。もちろん、ハードウェアの権化であるエンジンの開発製造とIT技術では大きく異なる。しかし、自動車産業だけではなく、生活・産業の多くがIT・ネットワーク化している。

ITの世界ではGAFAと呼ばれるアメリカ企業が圧倒的に強い。今から参入してトヨタの勝算がどこまであるかは不透明だが、日本でGAFAに御することができる企業があるとすれば、トヨタしかない。そうしなければ、EVを開発しているといわれるAppleとテスラによって自動車産業が蹂躙され、IT産業でも歯が立たず、トヨタひいては日本の産業は窮地に陥ることになる。

トヨタに残された時間は、それほど多くはない。

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