外資系企業のリストラ
外資系IT企業のリストラが報道されている。Meta、Amazonに続きセールスフォースなどのIT企業がリストラを進めていて、2022年は15万人の社員が削減されたそうだ。
どうして、外資系IT企業がリストラをしているのだろう。考えてみます。
解雇権の違い
外資系企業といっても、今リストラをしている主な企業はアメリカの企業だ。よく言われるように、アメリカの雇用は、随意契約で企業側は従業員を日本よりも気軽に解雇できる。「気軽」といってもいつでも自由に解雇できるわけではなく、理由が必要だ。捏造した理由で解雇したら、従業員に訴訟される恐れがある。
「業績悪化」は解雇理由としては充分とはいえないが、訴訟リスクは低い。今回のリストの多くは「業績悪化」を理由にしている。
転職文化
これもよく言われることだが、アメリカは終身雇用文化がなく、転職文化だ。自社内に適切なポジションがなければ、ジョブホッピングといって、複数社を転職しながら昇進していくのが普通だ。
リストラの対象になるようなら、その会社にいても将来がないので多くの従業員はその会社の留まるのではなく、転職先を探すことを選択する。
景気低迷
米国は現在景気低迷に突入している。インフレが原因で物価が高騰し個人消費が弱くなり、企業も設備投資を敬遠している。IT企業も例外ではなく、売上は落ち株価が下落している。
米国企業は日本よりもステークホルダー重視の文化がある。株価が下がっているのに対策をしなければ経営者がリストラされる。株価対策のために、経営状態に合わせてリストラをしないといけない。
成長の限界
現在、IT企業は成長の限界に来ているといわれる。スマートフォンの性能が頭打ちになり、需要が伸びなくなってきている。iPhoneを見ればわかる通り、iPhone 13はチップも前モデルと変わらず、新機能もほとんどない。
スマートフォンの次にくるものが、今のところ見当たらない。仮想空間メタバースに賭けたMetaは業績が低迷し、大規模なリストラに追い込まれている。
Appleが開発中といわれるMRゴーグルも姿を表さず、昨年はエポックメイキング的な新製品がなかったと言ってもいい。
Amazonにしてもコロナ禍が終わり、巣篭もり消費から通常の消費行動へ戻るにつれて、以前のような勢いを失ってきた。
ディスニーなどの他社の参入で動画配信サービスは競争過多になっていて、Netflixは株価が大幅に下落した。
これ以上、コンテンツが増えてもユーザーには消費する時間がないのだ。
スマートフォンの次に期待されているのがEVだ。ソニーが発表したAFEELA、Appleが開発している噂があるApple Carなど、単価も高く、コンテンツを消費する空間にもなるEVを従来の自動車企業だけではなく、IT企業が開発を進めている。
自動車産業は巨大だ。数%のシェアを得るだけで、かなりの売上になる。
ソニーやAppleがEVを発売すれば自動車業界にパラダイムシフトが起きると思うが、EVが登場するまでには、まだ数年かかりそうだ。
それまでの間、IT業界は成長する強力なデバイスがない状態が続くことになる。
このような状況を悲観して、IT企業はリストラに走っているのだ。
今年のIT業界
景気低迷もあり、今年のIT業界は見通しが暗そうだ。ただ、明るい兆しもある。ひとつはソニー・ホンダが発表したAFEELAだ。発売する2年後に向けて、IT企業が参加することで自動車業界が新たな活況を呈してくるだろう。
もう一つがAppleのMRゴーグル。いまいち弾けないメタバース・仮想空間だが、Appleが参入することで、注目が集まるにちがいない。