KDDIの通信障害
KDDIの通信障害は、発生から63時間で復旧した。その間、auの携帯電話が繋がらず、通信・通話ができない状態が続いた。
障害の原因やKDDIの体制、記者会見必要の有無についてはあちこちで議論されている。
ここでは、気になった点を記します。
値下げと障害
ここ数年の携帯電話キャリアの話題と言えば、値下げだった。日本の携帯電話料金は他国に比べて高すぎると、菅官房長官の強い要請で、キャリア各社はahamoやpovoなどの格安プランを提供することになった。その結果、日本の携帯電話料金は世界の中でも安くなった。
その状況で起こったのが、今回の通信障害だ。昨年はNTTドコモが通信障害を起こした。別に値下げしてメンテナンス費用をケチったから、通信障害が発生したわけではないけど、近年のキャリアの方向性が値下げと、値下げしても利益が出る収益構造の改善に努めることに軸足を置いていたのは間違いないだろう。
もし自分が、「高いから値下げしろ!」と散々言われて値下げして、障害が起きたら「何やってんだ!」と批判されたら、「とほほ」という気分になりそうだ。
キャリアの復旧の難しさい
今回の障害の発端は、KDDIによるとルーターの交換だそうだ。膨大なルーターを使用するキャリアでは、古くなったルーターを交換することは日常的な行為だ。そのルーター交換によって、輻輳が発生し、全回線で通信障害が起きたという。そこで思うのは、携帯電話事業の難しさだ。現代の携帯電話は通話・通信がなくても、位置情報をキャリアへ送信している。そのため、使用していなくてもトラフィックが発生し、障害が一部でも未処理が増大し、輻輳が発生する。
業務を止めるわけにはいかないし、全ユーザーの端末に通信を停止することもできないので、輻輳が発生すると、容易に止めることができない。
もちろん、バックアップが用意されているし、今回の障害でもフェイルバックを試みたいが、うまくいかなかった。
常に膨大なトラフィックが発生し、停止することができないキャリアの復旧作業の難しさがよくわかる。
社長会見は必要か?
社長の会見について多くの議論がある。復旧作業途中の忙しい時期に社長が会見する必要がないと言う意見と、社長が顧客に説明するのは誠意があるという意見がある。また、会見は官邸からの指示があったのではという疑惑もある。さらに技術畑出身の社長が、記者の質問に的確に答えたことで信頼性が増したという評価もあり、さらにややこしい議論なっている。
個人的には、社長が会見するのはアリだと思う。復旧したかどうかも大事だが、一番必要なのは、今がどういう状況で、いつごろ復旧する見込みかユーザーに伝えることが大事だ。何時間も会見する必要はないと思うが、最もインパクトがある社長がユーザーに現状を直接伝えることは意味があると思う。
代替回線の重要性
通信障害はない方が良いが、今回のような障害が発生する可能性は常にある。現在だと固定電話と契約せず、固定インターネット回線すら持たず、携帯キャリアしか通信手段を持たない人もいる。そういう人が通信障害に遭うと、外部との通信する方法が一切なくなってしまう。
それだけ日本のキャリアへの信頼性が高いのだろうが、今後も同様な障害が起こり得る。
今更、公衆電話を増やす事は不可能だから、個人的にバックアップを用意するべきだと思う。例えば、家族の1人が異なるキャリアを使うとか、固定インターネット回線も用意しておくとか、個人でのバックアップ回線の確保が必要だと、今回の通信障害で思った次第です。