eSports進出に二の足を踏む任天堂
任天堂のeSportsに対する取り組みについての記事が日経に出ていた。
任天堂は、「子供のためのゲーム」に固執するあまり、eSports大会への賞金提供に後ろ向きで、過去にも月額制のオンラインサービスやスマートフォンへの対応が遅れたのと同じ失敗を犯す可能性があるというのが記事の骨子だ。
この記事の内容にほぼ同意だが、過去にも理念に拘るあまり任天堂が失敗し、そこからSwitchの成功が生まれたとことを補足したい。
引用:任天堂サイト
理念先行で失敗してきた任天堂
「面白いゲームをつくる」ことを追求して、これまで素晴らしいゲームを任天堂は開発してきた。だが、時に理念が先行して失敗するケースがある。
最近の例で言えば、Wii Uだ。岩田元社長の「ゲームは難しすぎて初心者が遊べない」「ゲーム機のコントローラーはゴツゴツしている」という考えから、「TVリモコンのようなコントローラー」を搭載したCDジャケット大の大きさの「ゲーム機らしくない」Wiiが誕生した。Wiiは直感的な操作で大ヒットしたが、新作ゲームが続かず失速した。
Wiiの後を受けて登場したWii Uの頃はスマホとタブレット全盛の時代だった。「家庭に2つもタブレットはいらない」「テレビを専有するからゲームは嫌われる」という考えからタブレット機能を搭載した「Wii U Gamepad」が生まれたが、革新的なゲームは登場せず、Wii Uは大失敗に終わった。
Wii Uが失敗した要因のひとつはGamepadが分厚く画質が悪かったということもある。これは、「スペック競争に走らない」「枯れた技術を応用する」という任天堂の理念に基づいて、854×480ドットの低画質の液晶に、当時でも時代遅れになりつつあった感圧式タッチパネルを導入したGamepadは、iPadなどの本物のタブレットとは比較にならない低レベルなスペックだった。
失敗から学ぶ任天堂
WiiとWii Uの失敗から学び、任天堂はSwitchは成功させる。Switchは、今まで多かった独自規格をやめてUSB-Cなどの標準規格を導入して最新の仕様に近づけた。また、PS4のように最高スペックではないが、液晶などユーザーが触れるインターフェイス部分は良質な部品を活用した。
一方で、Joy-Conに「枯れた技術」である赤外線を搭載し、Nintendo Laboのような革新的なゲームの開発する。
ゴツゴツしていて邪魔になるゲームコントローラーは、本体に収納可能なJoy-Conで問題を解決すると同時に、Joy-Conグリップも同梱し本格ゲーマーにも配慮した。
過去の理念を捨て去るのではなく、より高次元で昇華させ、理念一辺倒ではなく、既存のマーケットに合わせて柔軟に開発したのがSwitchだ。理念だけではない任天堂の新しい開発手法が反映したからSwitchは成功したと言える。
課題は今後の対応だ。日経の記事にもあるように有料オンラインサービスをPSより8年遅れて開始し、スマホやeSportsも任天堂が掲げる理念との折り合いがまだ取れているとは言えない。理念は大事だし、目標があるから任天堂は任天堂らしい製品を開発できるのだが、時代の流れに合わせて、変えることは変える臨機応変な対応が今後の任天堂に求められる。