楽天のQ2決算
2021年度第2四半期の楽天は669億円の赤字だった。本業の通販事業は順調だが、携帯電話事業への投資が大きな負担となった。
携帯電話事業の現状を細かく見ていきます。
契約申込数は増加
現在の契約者数は442万人。1年間無料キャンペーン終了に伴い、駆け込み需要で一気に増えた。それ以降も、1GB未満無料を目当てに契約している者がいるのか伸びは鈍化しているが、契約者数は着実に増えている。
ただ、もちろん3大キャリアに比べれば、まだ少数だ。
以前は新規番号取得による申し込むが多かったが、直近ではMNPによる申し込みが逆転した。MNPする番号はユーザーがメインで使っている番号の場合が多いので、データ使用量も多く売上に寄与する。
売上は前年同期比では増えているが、前期比では減少している。
営業損失は拡大している。基地局への投資費用の他にローミング費用が重くのしかかっている。楽天モバイルは自社回線エリア以外をauのローミングでカバーしている。契約者が増えれば、auへのローミング費用が負担になる。
三木谷社長もローミング費用が本当に高いと発言している。今後は自社回線エリアが増えるにつれてローミングエリアも絞っていくことが予想される。
ただ、プラチナ回線を持たない楽天モバイルは、地下や屋内では繋がりづらい場合がある。その状態でauのローミングを打ち切ると、「繋がらない」という批判が起き、せっかく増えた契約者が減少に転じる危険性がある。
楽天エコシステムへの貢献
せっかく本業で儲けているのに巨額の赤字を計上してまで楽天が携帯電話事業に投資するのはなぜだろう。
携帯電話事業を推進する理由は、楽天エコシステムを拡大するためだと楽天は主張している。
楽天モバイル契約者のうち楽天新規ユーザー数は19%。今まで楽天を使ってこなかったユーザーが楽天モバイルに加入するために楽天のアカウントを取得したことになる。
ただ、家族で楽天モバイルに入るために家族ごとにアカウントを新規取得する必要がある。問題は、新規アカウントを取得したユーザーが楽天市場で買い物をしてくれるかどうかがポイントになるが、そのデータを楽天は公表していない。
楽天モバイルの課題とは?
巨額の赤字を計上した楽天モバイルは、契約者数の拡大、ローミングエリアの縮小、半導体不足により困難な資材調達と課題が山積だ。
赤字を出しても、他のサービスの売り上げが増えれば、相殺できそうだが、決算を見る限りその道は険しそうだ。
そもそも、携帯電話事業はいわば「土管」であり、楽天モバイルを使っているからといって楽天市場やその他の楽天サービスへタッチするわけではない。楽天モバイルでアクセスしても、トップページが楽天市場にはなるわけではない。
そうなると、そもそも本当に携帯電話事業を楽天が行うべきだったか疑問が湧いてくる。
楽天は、楽天モバイルで培った携帯仮想化技術を輸出して利益を上げようとしている。国内の投資をカバーする事業になる見通しがつくのかもう少し注視が必要だ。
現行プランでどれだけ稼げるか真の売上が見えてくるのは、1年間無料キャンペーンが完全に終了する来年5月になるだろう。その時までは赤字が続くだろうが、来年5月以降も巨額の赤字を計上するようだと、携帯電話事業の大幅な見直しに迫られる可能性はある。