Twitterを買収!
テスラCEOのイーロン・マスク氏がTwitterを買収しようとしている。イーロン氏は買収資金として約6兆円を用意し、Twitterの取締役会が買収を了承したので、買収が成功するのはほぼ確実だ。
電気自動車を製造販売するテスラの創業者であるイーロン氏がどうしてTwitterを買収したいのか考えてみます。
言論の自由を守れ!
イーロン氏がTwitter買収の理由に挙げたのが「言論の自由の確保」だ。現在のTwitterは、ツイートを表示するタイムラインをTwitter社が定めたアルゴリズムで調整してていて、そのアルゴリズムは公開されていない。
また、Twitter社は虚偽の情報を拡散したとして、大統領選後にトランプ前大統領のアカウントを停止した。トランプ氏のツイートの是非はともかく、民間企業であるTwitter社が前大統領の言論を封じる権力があることに驚いた人もいるだろう。アカウントを停止する明確な根拠があるわけでもなく、政府や第三者委員会が決定しているわけでもなく、私企業内で判断される。
こういった不透明な状況にイーロン氏は懸念を示しており、自ら巨額の資金を投じてTwitterを買収し、言論の自由を確保するために改革したい意向だ。
アルゴリズムの透明化をイーロンは公言していて、言論の自由が守られるのは喜ばしいことだ。
だが、イーロンという強力なCEOが誕生することで、企業ではなく、一個人の意思が言論をコントロールしてしまう危険性が今度は生じる。
自由の裏にある独占
イーロンはテスラ以外にも多くの事業を手がけている。そのひとつはロケットを製造運営するスペースXだ。スペースXが取り組んでいるのが衛星インターネットだ。約1600基の人工衛星を打ち上げて、地球全土へインターネット回線を提供する計画だ。
世界にはインターネットにアクセスできない人が30億人いるといわれる。そういった人たちのためにも衛星インターネットを実現しようとしている。
イーロンの思想の根底には「自由と解放」がある。テスラはEVを開発製造することで、環境に悪影響があるガソリンエンジンから自動車を解放し、衛星インターネットを普及させることで、誰にでもインターネットを解放しようとしている。
Twitter買収もその一環で、いくらネットが自由に使えるようになっても、言論が制限されてしまっては「自由」になれない。
ただ、イーロンがやっていることすべてが善とはいえない。自由といいつつ、たとえばテスラのコア技術は多くの特許で守られていて、他社には提供されていない。スペースXも独自技術がふんだんに使われていて、他社には真似できない。
イーロンは自由を標榜しながら、市場を独占しようとしていて、その権力はイーロン個人に集約されている。
イーロンは過去にもさまざまな言動で市場や世間を混乱させてきた。そのイーロン個人の判断で、巨大な独占企業たちが動くのは危険なことでもある。
イーロンが強力なリーダーシップで自由な世界の構築を目指すのは良いことだけど、では、その自由をどのように担保していくのか、だれがその自由を管理していくのかが今後議論されていくことになると思います。