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ドコモが格安プランを実現できた理由と携帯電話業界の未来予想図

ドコモの新プラン「アハモ」

報道の通りNTTドコモが新しい携帯電話の料金プラン「ahamo(アハモ)」を発表した。

月間20GBまで月額2980円と1回あたり5分以内の国内通話無料という、従来のドコモのサービスに比べて格安のプランになっている。事務手数料も無料で、2年縛りもない。

どうして、ここまで安くできた理由と他社への影響を考えてみます。

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格安の秘密はオンライン

現在のプランの半額近い価格にどうして設定できたのだろう。「縛り」もないので純粋な値下げとなる。総務省が言うように高い価格設定でドコモは利益を貪っていたのだろうか。

ヒントは、ドコモの報道発表資料にある。今回のサービス「ahamo」はオンラインのみの受付となる。料金確認・各種手続き、サポートもオンライン上のみで行うように読み取れる。

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引用:NTTドコモ

携帯電話やパソコン、インターネットプロバイダーはサポートに膨大なコストを掛けている。機種や顧客のセグメントにもよるが、サポート費用が全体のコストの30%にものぼる製品も存在する。

ガラケーからスマホへの移行が進む現状、中高年の顧客を多く抱えているドコモのサポートコストは相当なものに違いない。パソコンだとユーザーもある程度のITリテラシーを持っているが、一般の顧客だとそうはいかない。LINEやFacebookなど他社のアプリが使えなかったら、パソコンユーザーならパソコンメーカーではなくアプリ会社へ連絡すると思うが、一般ユーザーだとハードウェアとソフトの区別がつかない。

そのコストはドコモのコールセンターだけではなく、各ドコモショップの負担も相当なものだ。ドコモショップの多くはドコモの直営店ではなく、子会社や代理店のショップだ。自社が販売した製品・サービスの顧客ならサポートするのも当然だと思うが、ユーザーはどこの代理店のショップなのかは気にしない。他の代理店で購入した製品を持ち込まれることも当然ありえる。こういった製品のサポートは他社の代理店からしたらボランティアみたいなものだ(実際には奨励金みたいなものがキャリアから支給されているらしいけど、ボランティア的なサポートをどこまでカバーできているか)。

今回の大胆な値下げの背景に政府の意向があるのは間違いないが、ドコモも目算があってのことだと思う。それがオンラインでの手続きでありサポートなのだろう。申し込みもオンラインに限定しているので、ITリテラシーがないユーザーはある程度排除できる。特に今回は大容量のギガが必要な「若者向け」と銘打っている。

au・ソフトバンクへの影響

ドコモの新プランは他社へどのような影響を与えるのだろうか。auとソフトバンクが追随する可能性は高いだろう。今まではサブブランドを値下げして選択肢を与えれば良いと思っていたが、ドコモがドコモブランドの値下げに踏み切ったので、他2社も監督官庁の意向に従うと思われる。総務省がどのようなコメントをするかわからないが、ドコモの手法が評価されるなら、ドコモと同様にオンライン化して、サポートコストを削減した似たような価格を実現するかもしれない。

とはいえ、UQ Mobileとワイモバイルを浸透させるために努力してきたauとソフトバンクが新たにブランドを構築するとは考えづらい。メインブランドとサブブランドの垣根をなくして、サブブランドをメインブランドへ取り込むことを行うのではないだろうか。

楽天モバイルへの影響

低価格路線で集客している楽天モバイルへの影響はどうだろう。楽天モバイルは現状1年無料だが、無料期間が過ぎれば月額2,980円になりahamoと同額になる。楽天モバイルは自社回線なら無制限だし通話料金は無料と、以前ドコモよりも優位な点は残るが、ドコモの通信網と楽天モバイルの自社回線の品質は雲泥の差がある。

現状の無料期間でも楽天モバイルの集客数は目標に未達と言われているが、今回のドコモの価格改定でさらに窮地に陥る可能性が高い。

楽天モバイルとしては当然値下げを検討するだろうが、現状でも楽天モバイルは大幅な赤字を計上しているので、これ以上の値下げが果たして可能なのか。楽天本体の利益を食い潰しながら携帯電話事業をどこまで進めることができるか。大幅な赤字を計上し続ける事態になれば本事業を先導してきた三木谷会長の責任問題に発展しかねない。

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MVNOは?

楽天モバイルもそうだが、同じく格安が売りのMVNO各社の影響は甚大だ。UQ Mobileなどのサブブランドも戦略の転換が求められるだろう。

他社のMVNOも同様だ。各社様々な工夫をしているが、MVNOを選ぶ1番の理由は安さだ。mineoの20GBはドコモ回線利用で4,680円もする。この料金には通話料金は一切含まれていない。

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引用:mineo

MVNOの多くは昼休みなどの混雑する時間帯には繋がりづらくなる。今の状態のままでは低価格重視で選んでいたMVNOユーザーはahamoに流れてしまう。MVNOは更なる値下げをする必要があるが、MNOに回線使用料を支払っているMVNOには値下げする余力がない。

それではMVNOは絶滅してしまうのだろうか。そうではないと思う。

ヒントは、本日のドコモの会見にある。「MVNOの業務を圧迫するのでは?」という質問に対して、「小容量格安プランをMVNOと協議する」と回答している。20GBも不要なライトユーザーのためにMVNOと回線使用料を協議して、MVNOが安価なプランを提供できるように協力するということなのだろう。

おそらくこれはドコモだけが書いた筋書きではなく、総務省と協議の上だと推測する。NTTがドコモを完全子会社化することを総務省が了承したときにこの絵は出来上がっていたのではないか。そう考えると、総務大臣が会見でいきなり激昂した理由も頷ける。ドコモの値下げを知っていたからauとソフトバンクが追随するように圧力をかけたのに違いない。

ドコモと総務省が描く未来予想図

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上述の推測をまとめると、こんな感じになる。

サポートやサービスが必要な高齢者を中心としたユーザーはドコモやau、ソフトバンクのMNO業者が今までと同様に担う。サポートは最低限でとにかく安くて大容量を望む若者にはahamo(おそらく追随するUQ Mobileとワイモバイル)、無制限な通話と通信を求めるユーザーには楽天モバイル、スマホをあまり使わないユーザーにはMVNOがカバーすれば、サービスごとの棲み分けができる。

auとソフトバンクがドコモに追随するかだが、UQ Mobileとワイモバイルのサブブランドとメインブランドの変更手数料を無料化すれば、ahamoと同様にメインブランドとの垣根はなくなる。

ユーザーは自分に合った料金プランとキャリアを選べるようになり、政府は携帯電話料金の値下げという公約を守れ、キャリアもサポート費用を削減でき政府の圧力もかわせることになる。全員がとりあえずハッピーになりそうだが、一番辛いのは楽天モバイルだろう。

通信通話無制限は楽天モバイルの売りだが、そのためには自社回線を全国に敷設しないといけないし、それには相当の初期投資と時間がかかる。楽天モバイルの売りである通信無制限も5Gが本格化すれば、他のキャリアも実現できるようになる。そうなると楽天モバイルを選ぶ積極的な理由は消滅し、初期投資だけが楽天に重くのしかかることになる。

三木谷会長は当然このような事態を予測していたと思うので、次にどのような手を打つか注目される。

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