auの新プラン
5月13日、auが新しい料金プランを発表した。すべてのプランがいわゆる分離プランで、携帯電話本体料金とは別で通信料金のみのプランになっている。
携帯電話を買い換えづらいなどいろいろと課題はあるけど、シンプルでわかりやすいのは事実で、分離プランに慣れてきた。
菅官房長官の「4割下げられる発言」を踏まえてauも「最大4割値下げ」と豪語するが、本当に安くなったのか。検証してみます。
ライトユーザー向けの「新auピタットプラン」
毎月の使用量が7GB以下のライトユーザーのためのプランが「新auピタットプラン」だ。1GB以下なら1,980円(家族割プラス適用時)となる。
旧プランである「ピタットプラン」と見てみると、1GB以下は新プランと同じ1,980円。あれ? 一緒だ。ただし旧プランは購入一年間だけ1,000円割引きとなるのと比べて、新プランはずっと1,980円だ。
これだと新プランが安そうだが、旧プランには5分以内であれば通話料金が無料になる「スーパーカケホ」サービスがついている。
同じサービスが新プランではプラス700円になっている。
また、1GB1,980円で使うための条件が新旧プランで異なる。
- 新プラン:家族3人が契約 + 通話定額ライト(700円)
- 旧プラン:スマートバリュー契約、スマホ応援割(契約時から1年限定で1,000円割引)
新プランでは家族でau回線を使っていて、家族以外とはあまり通話しないならお得になる。
「家族割」が強調されるのはdocomoの新プランと同じだ。端末購入したユーザーへの長期間の割引が禁止されても、ユーザーを確保するためには「家族」で縛るのが有効だと判断したようだ。
家族と同一契約ではない場合は、「家族割プラス」の1,000円割引きがなくなるので、旧プランの方が安くなる。2年間の使用では新プランの方が28,800円も高い。
家族割プラスがないケース(1GB以下の使用で2年利用)
1GB以上に利用する場合は、どうだろう。7GB利用の場合、新プランで家族契約なしスマートバリューありだと、5,480円+700円(通話定額プラン)=6,180円。旧プランで同条件だと1年目が5,480円(2年目以降は6,480円)。2年目以降なら新プランは300円安いが、1年目の差額を取り返すには、28ヶ月かかる。しかも旧プランは7GBではなく10GBまで利用できる。
まとめると、「auフラットプラン」は家族と一緒に移行できればお得だが、ひとりだけの契約ではメリットがない。
本命の「auフラットプラン7プラス」
「auフラットプラン7プラス」は、7GBまでの利用とSNSデータ消費ゼロを合わせて、3,480円。こちらも家族3名契約が前提の料金。
データ消費に換算しないSNSとはFacebook、Twitter、Instagramなどで、多くのユーザーが利用しているLINEは含まれていない。
au曰くauユーザーの45%が1GBから7GB未満の利用者だから、このプランを選んでおけば大丈夫ということらしい。1GBから7GBでくくるのもざっくりしすぎていると思うけど。
auはこの新プランでも従来より4割引きと主張しているが、比較対象としているのは旧「LTEプラン」である。LTEプランは7GBなので比較対象としては適当なように見えるが、LTEプランは旧ピタットプラン前の料金プランだ。
根拠が希薄な理由をもちだしてまで7GBとしたのは旧ピタットプランと比較させず、LTEプランと比較するためだと勘ぐりたくなる(旧ピタットプランに7GBの段階はない)。
強引に旧フラットプランと比較してみよう。
旧auフラットプランでは20GBの利用で、4,500円。新プランは3,480円だが、通話定額プラスの700円を加えると、4,180円。
こちらも新旧で適用条件が異なる。
- 新プラン:スマートバリュー契約、家族3人が契約 + 通話定額ライト(700円)
- 旧プラン:スマートバリュー契約、スマホ応援割(契約時から1年限定で1,000円割引)
ピタットプランと基本の構図は同じで、家族割が適用できるなら新プランの方が安い。家族契約ができない人は4,480円なので、7GBの利用なら新プランの方がそれでも安い。ただし、定額通話プラスの700円を合わせると、2年間の支払いでは旧プランの方が16,320円安くなる。さらに旧プランは20GBだ(新プランはSNS無料ではあるが)。
docomoと同じ苦しい新プラン
新しくなったピタットプランとフラットプランを旧プランと比較してみたが、家族割が適用できる環境なら確かに割安になる。逆に言うと、家族割が適用できないと割高になるケースもある。
本文でも触れたが、値下げが目的というより、分離プラン実行後でも他キャリアへの流出を食い止めるために家族契約を強調するプランにしたと思われる。一方で、「4割値下げ」を主張するために、昔のプランを比較対象に持ち出すなどキャリアの苦しさが垣間見える。
先日新プランを発表したdocomoと非常によく似た戦略で、競争を激しくさせて携帯電話料金の値下げを促そうとした経産省の思惑と逆行している気がするが、今後政府が再び何かアクションを起こすのだろうか。