コモディティ化する技術
最新技術やデバイスは最初アーリーアダプター層と呼ばれる流行に敏感な人たちがまず入手して、その評価が広まることで、一般層が興味を持ち、多くの人が手に入れるようになる。
多くの人が使うと製品は日用品化(コモディティ化)する。一番わかりやすい例がスマホだ。最初はApple製品が好きな人がiPhoneを買って試した。口コミで評判が広がり、Androidが発売されて選択肢が増えるようになると、多くの人がスマートフォンを入手するようになった。今では、多くの人がスマホを使っている。
コモディティ化すると、たくさん売れるようにので、開発したメーカーは当然潤う。マーケットが拡大することで、複数のメーカーが参入し、多種多様な製品が生まれる。
一方で、コモディティ化すると、メーカーは多くの人が買い求める製品を販売したくなる。尖った製品ではなく、多数派の人が求める製品を開発する。
多くの人が使うようになると、新しい技術よりもデザインで差別化を図ろうとするようになる。コモディティ化すると、細かな機能の違いよりも外側に目が行きがちになるからだ。
もう一つの差別化が価格だ。製品が似てくるので、他社に勝つためには値下げを行いたくなる。価格を他社よりも下げるために、新機能を開発するよりも、機能をモジュール化し大量生産ができるように製品は進化していく。
停滞する進化
製品が多くの人へ広まるために、コモディティ化は重要だけど、一方で新機能の開発は滞る傾向にある。新しい機能がなくても、ボリュームが出るので、新規開発するモチベーションが低くなる。
メーカーに力があれば、コモディティ化しても他社に負けないように新規開発を進めるが、平均価格も下がるので、利益が出ず、多くのメーカーは新規開発の余裕がなくなる。
こうして、コモディティ化が技術の進化に影響する。
不景気になると停滞は強まる
コモディティ化した製品は、ボリュームが大きいので、景気の影響をまともに受ける。不景気になると、ボリュームが出なくなるので、企業は打撃を被る。尖った製品であれば、マーケットも小さいので、景気にあまり左右されない。
コモディティ化したスマートフォンは、そこから生まれる利益も小さいので、メーカーは新しい開発に投資できる資金に限りが出てくる。最近のスマートフォンに新しい機能が減ってきているのは、そういった背景がある。
ウクライナ情勢とインフレにより、景気が後退したことで、ITの進化のスピードが遅くなったように思う。VR / AR、高速データ通信など、近年注目を集めた新機能は業務用としては使われ始めているが、一般的にはあまり使われていない。多くの人がその製品を欲しいと思える提案ができていないように思える。
ロシアの侵攻から1年経過したが、戦争はまだ終わらない。世界景気も不透明のままだ。これからの数年は、あまり面白い製品が出てこないかもしれない。