宝島社より 「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」 が発売になりました。私にとっては初の商業出版になります。
自分の小説が本屋に並ぶという中学生からの夢がようやく実現します! 興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

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小説家デビューから一ヶ月が経ちました。これまでに学んだことなど

デビュー一ヶ月!

ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」が発売されて一ヶ月が経ちました。その間、多くの方にご購入いただき、誠にありがとうございます。
子供の頃からの夢だった自分の小説が書店に並ぶ光景にも見慣れた一方で、デビュー前にはわからなかった多くのことをこの一ヶ月で学んだ気がします。
商業小説家になって経験し、学んだことをご報告します。

新聞社の取材

新聞社の取材を受けました。会社員時代に雑誌や新聞社から何度か取材を受けたことはありますが、小説家としては初めてでした。
文芸欄の記者による取材ではないので、小説の内容というよりは、著者である僕自身がメインの記事になりました。
会社員時代は、会社の方針や業績を語ることが多かったので、自分のことを記者に話すのに違和感がありましたが、自分の人生をノンフィクション形式に話すことができたように思います。

本当は小説に興味を持ってもらうのが一番なのですが、作者をまず知ってもらって、著作にも興味をもってもらえればと思い、取材をお受けしました。

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noteを一ヶ月連続更新

このnoteを一ヶ月間、毎日更新しました。これは、発売前から決めていたことで、少しでも著者と著作に興味を持ってもらおうと始めたことです。知らない作者の小説を買おうとはなかなか思ってもらえませんからね。
著作が増えていけば、過去の本が名刺がわりになると思いますが、デビューしたばかりだと、そうはいきません。
無名の新人小説家の本を手に取ってもらうために、少しでも作者を知って信頼してもらえればと思い、小説関連の記事をnoteに連載してきました。
記事にすることで、自分が小説について考えていたことを書きながらまとめることができたように思います。

書店マーケティング

デビュー前も、書店は大好きな場所で毎日のように通っていましたが、自分の本が並んだ店頭はまったくちがうものに見えてきました。
書店がどのように本を売っているか、あまり考えたことはありませんでしたが、自分の本が置かれている売り場を眺めていると、どうして書店がここにこの本を置くのか、どういう意図で売り場を構築しているのか、中小書店と大型書店の違い、出版社別の販売戦略、広告など、今まで本が並んでいるだけに見えていた書店の売り場がマーケティングの最前線に思えてきました。

たくさん並んでいる本の中で無名の新人小説家の本を選んでもらうことがいかに難しいかも実感しました。何も情報をもたないお客様が書店を訪れて、知らない作者名の本を選ぶのはなかなかレアなことです。
本来、こういうことは小説家が考えなくてもよいかもしれませんが、会社員時代が長かったからか、「売れるためにはどうすればよいか」をつい考えてしまいます。

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表紙は大事

書店で自著を眺めていて、わかったことは、表紙の重要性です。
僕はずっとKindleでセルフ出版してきて、表紙は自分で撮影した写真をCanvaで加工して、作成してきました。
電子書籍が主体のKindleでは小説の中身が重要だと考え、表紙はあまり重要視してきませんでした。
読み放題のKindle unlimitedの場合、読者は好きな本をお試しで気軽に読むことができるので、冒頭の文章が大事だと考え、読者が入り込みやすい内容にし、読者の興味を惹くイベントがすぐに発生するように工夫してきました。

だけど、商業出版では、事情が異なります。読者はまず表紙や帯を見て、興味があれば本を手に取り、数ページを立ち読みして、買うかどうか判断します。
本の中身は、もちろん大事ですが、手に取ってもらうために表紙はとても大きなファクターです。

イラストレーター周憂さんに描いていただいた「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」の表紙はとても美しく、書店でもかなり目立っています。アイキャッチとしては大成功だと思います。

表紙にはアイキャッチの他にもうひとつの役割があります。それは、本の中身を伝える役割です。
小説は読まないと中身がわかりませんし、読むのには時間がかかります。この小説のジャンル、小説の雰囲気を表紙が伝えてくれます。

ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」の表紙を見ると、男女の高校生が並んでいるので、(おそらく)恋愛ものだとわかります。
タイトルに「ふたりの余命」とあり、帯には「号泣」とあるので、短い命が関係する感動ものだということも伝わってきます。
実際に「ふたりの余命」は男女高校生が主人公ですので、表紙のイメージと合致しています。
物語の冒頭では、帯に書かれている通りに死神が登場し、この小説が「ファンタジー」でもあることが明かされ、物語はライト文芸っぽい雰囲気を醸し出します。
だけど、読み進めると、主人公の夢に関係する大人の男性が登場してきて、いわゆるライト文芸とは趣が少々異なってきます。過去の名作も頻出してきます。
文体もライト文芸よりは、少し硬いかもしれません。

ライト文芸にしては硬い文体と内容が、装丁から読者が受け取るイメージと少し異なっているかもしれません。
これは、装丁の問題ではなく、小説全体のトーンを合わせていない僕の問題です。「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」は、Kidnleで好評だった「ふたりの余命」を追記、改稿した小説です。
Kindleだと最初に読んでもらうために軽い話にするのが定石でしたが、書籍だと装丁を含めて一つの商品なので、小説の中身も含めて同じイメージを読者に伝える必要があると知りました。

面白いのは、書籍版では、中年男性が登場してから話が面白くなってきたという感想を多くいただいたことです。
Kindle版ではそのような感想は少なく、短い余命を持つふたりの生き方に感動したという感想が多かったです。
これは書籍とKindleの読者層の違いもあるのだと思います。ライトノベル以外だと、書店で本を購入する層は年配の人が多いような気がします。
商業出版としてラノベ以外の本を売っていきたいなら、今まで以上に読者層を意識する必要があると思いました。

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次に向けて

デビューして一ヶ月で、多くの学びがありました。この経験は、商業デビューしなかったからわからなかったことばかりです。
ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」は、面白く、感動できる物語です。
装丁も内容も自信をもって薦めることができる本です。ぜひ手に取って読んでもらいたいです。

今後も、商業出版の世界で、より多くの読者に本を手に取ってもらうためには、Kindle作家だった僕は、今までの意識を変える必要があることを知りました。

発売から一ヶ月が経つと、その作品のために作者にできることはほとんどないように思えます。
これから作者にできることは、次回作を早く書いて読者に届けることでしょう。
最初の出版で得た学びを活かして、書籍向けの小説を書いていこうと思います。