新型Switch登場
有機EL搭載の新型Switchが現行Switchより収益性が高まることはないと任天堂が発表した。
メーカーがまだ発売した新型モデルの収益性について言及するのは異例だ。メーカーにとって商品の利益率は機密情報であり、言及することは通常ありえない。
それなのに任天堂が発表したのは、新モデルは収益性が高いとブルームバーグが報道したからだ。利益率が高ければ、当然企業業績は向上し、それを見越して株が買われ株価に影響が出る。
そういう期待と市場動向を牽制するために任天堂は発表したのだ。
有機ELディスプレイ搭載の新型Switch以外の新モデルはないとも任天堂は発表している。
どうしてそういう報道が出て、任天堂が否定したのか理由を考えてみます。
新モデルを振り返る
任天堂が発表した新モデルは、メモリ増量や背面スタンドの改良などの違いはあるが、もっとも大きな特徴は7インチ有機ELディスプレイだ。この変更で現行モデルより5000円の値上げにとなった。
新モデル発表前には、有機ELディスプレイへの変更だけではなく、CPUの変更など大幅な基本性能の向上が予想されていた。
任天堂は何も発表していないので勝手な予想に過ぎないのだが、新型モデルへの期待が高まったのは事実で、任天堂の正式な発表をみて落胆した人もいただろう。
言ってしまえば、任天堂が発表した新型モデルの性能は中途半端だったのだ。Switchは登場してから5年が経過しているのに、基本性能は変わらないことから、本当の後継モデルはまだほなにあり隠されていると推測するのも頷けるし、それがブルームバーグの報道につながった。
今回の新モデルは今までのゲーム機の常識から外れている。ゲーム機はスペックを固定したまま長い間販売されるため、販売している間に部品コストは安くなり、値下げができるようになるのが今までのゲーム機だった。発売から時間が経てば人気も翳りが見えてくるので値下げは売り上げを伸ばすカンフル剤になる。
ところが、Switchは発売から5年が経過しても、値下げは行われずに、逆に新型モデルでは値上げとなった。Switchは今でも品薄で大人気なので、値下げする必要はなかったからだ。しかし、CPUなどの基本性能は変えていないので、Switchの部品コストは低廉化しているはずだ。ということは、Switch販売当初より任天堂の収益率は高まっているという推測が成り立つ。
今回の新モデルが値上げになったことで、収益率が上がるという報道になったわけだ。
ブルームバーグがどこまで内部情報を得て報道したのかはわからないが、外部から見ていても報道の根拠は確かにある。
本当に収益率は変わらない?
ではブルームバーグの報道は虚偽で、任天堂の発表が正しいのか。メーカーが利益率を公表することはあり得ないので、どちらが正しいのか正確にはわからない。もちろん、決算で発表される収益から製品を利益率を推測することはできるが、Switch単体の利益率が公表されることはないだろう。
任天堂の発表が正しいなら、営業利益率はそれほど変わらないことになる。
実は新モデル発売前に、任天堂の営業利益率は向上している。昨年度は26%だったが今年度の営業利益率は36%で10%も向上している。
この営業利益率はハード・ソフトの売り上げを合算している。原価が低いソフトの販売が多ければ利益率は向上するが、ソフトとハードの売上高比率は50%前後で大きく変わっていない。
任天堂の営業利益率の改善は、Switchの内部コストが低減したからだと思われる。
新モデルには有機ELディスプレイの搭載やメモリ増量使うなど、コスト増加する要素が含まれているので、500円値上げになっても内部コストが下がった現行モデルより利益率は変わらない可能性はある。
全ての要素を総合して考えると、「現行モデルでも利益率はすでに向上しているので、新型モデルが販売しても利益率は変わらない」というのが任天堂の本音だと思う。