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「Ork(オーク)」シリーズの3作品を解説します

「Ork」シリーズ

筆者の最新作「ニューバースの夜明け」は過去作「Ork -2006-」「箱の中の優しい世界」と連続した世界が舞台です。

物語としてはそれぞれ完結していて続編ではないのですが、過去作の登場人物が再度登場しています。

このシリーズはテクノロジーが物語の中心にあります。物語中でも最新テクノロジーについて説明していますが、読みやすいように、この記事でも簡単にご説明したいと思います。

現在「ニューバースの夜明け」は期間限定で無料配信をしています。ぜひこの機会にダウンロードしてみてください。

Ork(オーク) -2006-

シリーズの初期作「Ork -2006-」の舞台はタイトルにもあるとおり2006年です。まだスマホがなかった、この時期の最新テクノロジーはP2Pでした。記憶容量の大容量化が進み、大量の音楽や動画をローカルに保存できるようになりました。ただ、コンテンツはコンテンツホルダーであるレコード会社や映画会社が保有していて、高い価格で販売し、著作権保護も厳しく、ユーザーは自由にコンテンツを扱えませんでした。

そんな状況に生まれたのが、P2Pでした。企業を経由せずに、個人と個人が情報やコンテンツを直接やり取りするP2Pは、画期的なシステムで若者を中心に広まっていきました。中でも金子勇さんが製作したWinnyは匿名の相手とコンテンツをやり取りするシステムで大人気を博しました。

「Ork -2006-」では、サクラダというエンジニアが謎の失踪を遂げます。主人公の佐野渉(さの わたる)は外資系テクノロジー企業の社員で、上司だったサクラダを会社命令で探すことになります。サクラダはコンテンツを自由にやり取りする「Ork(オーク)」を開発し、全世界に拡散させます。新しいテクノロジーである「Ork」を手に入れようと暗躍する人々。このOrkのモデルはWinnyなどのP2Pソフトです。

この時代は、OSを開発する企業が力を持っていて、サクラダと佐野も外資系のOS開発企業に所属していました。

箱の中の優しい世界

箱の中の優しい世界」は「Ork」から10年後の世界が舞台です。

この時代はOS開発企業の力が落ちて、クラウドシステムが主流になっていました。各個人がデータを保存するのではなく、各ベンダーのサーバーにデータやシステムを格納するクラウドが登場したことにより、各企業がハードウェアを管理する必要がなくなりました。

一方で、Facebookなどのサービスを提供している企業が蓄積した個人情報をもとに広告を販売するなど、個人情報を集めた企業が力を得る時代となりました。

そこにサトシ・ナカモトが提唱したブロックチェーンが開発され、情報が一箇所に集める中央集権型から個人のシステムに情報を格納する分散型に転換していきます。

箱の中の優しい世界」では、主人公の佐野はミネルバ社でブロックチェーンをモデルにしたボックスチェーンを開発しています。

ところが、ボックスチェーンが完成した夜に趣味としていたランニング中、交通事故に遭い、3年間の昏睡状態に陥ります。覚醒すると、ボックスチェーンを使ったポリティカル・コレクトネス「PC」が世の中の言論を統制していました。動物園から動物が消え、美術館の裸婦像が撤去されていました。

ボックスチェーンはブロックチェーンとは違い、最初のデータが格納されたファーストボックスを動かしたり撤去したりできる欠陥がありました。そのファーストボックスの鍵を持っていると疑われた佐野は狙われることになります。

ニューバースの夜明け

ニューバースの夜明け」は「箱の中の優しい世界」の十数年後が舞台です。この時代では、パンデミックと不況により日本は衰退しています。先進国の座から転げ落ちそうになる国内経済を国債で必死に支えている悲惨な状態です。

テクノロジーでは、仮想空間メタバースが流行の兆しを見せていますが、日本企業が出る幕はなく、米中の企業が市場を占有しています。

「ニューバースの夜明け」の主人公は佐野ではなく、ふたりいます。

ひとりは二階堂。彼は日本のIT企業の孫会社でエンジニアとしてサーバーの保守・エンジニアをしています。ある日、客のサーバーにあるデータが凍結される事件が起きます。犯人から届いた脅迫文にはかつて伝説のエンジニアといわれたサクラダの名がありました。二階堂は脅迫事件の犯人の捜索を試みます。

もうひとりの主人公は狩山です。総務省出身の狩山は内閣官房補佐官として政権の中枢で働いています。官房副長官の長門よりメタバース内に電子政府を構築するプロジェクトを任せられます。

旧態依然とした日本企業に絶望した狩山に中国企業のCEOをしている大浦が接触します。大浦は、かつてミネルバ社で佐野と共にボックスチェーンを開発し、昏睡状態から目覚めた佐野からファーストボックスを奪おうとした男です。

サクラダは国民全員の個人情報を集めた国民データベースを凍結し、政府を恐喝します。

国民データベース凍結事件を解決するために、奔走する二階堂と狩山。ふたりを嘲笑うようにサクラダは新しいメタバース「ニューバース」の建設を表明します。

メタバースはまだ発展途上ですし、メタバース開発に社運を賭けたFacebook改めMetaは業績不振に陥っています。

本作ではメタバースが秘める可能性とメタバースが作る未来を提示しています。

一方で、バブル崩壊以降、世界の中心から脱落し、衰退の一途を辿る日本が、コロナのパンデミック以降、さらに苦境に陥る中、経済破綻と少子高齢化が現実に迫ってきています。そこから逃れるためにどうすれば良いか苦悩する狩山を通じて、現代の日本を描いています。

三作品の読み方

見てきたように、三作品の世界は繋がっています。一作ごとに物語は完結していますので、どれから読んでも楽しめますが、過去作のネタバレを含みますので、全作品を読むなら、最初の「Ork(オーク)-2006-」から読むと良いと思います。

過去のテクノロジーには興味がないという人は、最新作「ニューバースの夜明け」だけを読んで、興味が出てきたら過去作品を読むのが良いと思います。

Kindle Unlimitedユーザーなら全作品無料で読めますし、「ニューバースの夜明け」は期間限定で誰でも無料で読むことができます。

ぜひ、この機会にお試しください。

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は高山環(たかやま かん)というペンネームで小説を書いています。
ブロックチェーンなどITを題材とした小説の他に、ミステリー、恋愛物、児童文学など様々なジャンルの作品を取りそろえています。
Kindle Unlimited会員ならすべて無料、非会員の人にも0円からご用意していますので、お読みいただけると幸いです。感想もいただけたら感涙でございます。