就活という人生の分岐点
新卒者の就職活動「就活」というのは日本独特の慣習だ。大学を卒業する一年も前から企業研究をして、目指す企業にエントリーして、試験と面接を繰り返す。良い点、悪い点があるが、このように企業や業界を知ることができ、将来を決められる就活は貴重な機会であることは間違いない。
企業側は新卒採用のためにかなりの投資をし人材を投入しているのに、基本的に就活は無料で参加できる。無料で企業や業界を知ることができて、自分の人生を選べるのだ。
就職したあとで、自分が所属する業界以外の業界を横断的に知ることができる機会はほとんどない(自分から情報を得て勉強するにはお金と時間が膨大にかかる)。それが就活だと、自分の興味と努力次第で、様々な業界と企業を知ることができるのだ。
就活は新卒者限定なので(最近は中途エントリーもできる企業もあるが)、多くの人は一生に一度だけ試せる。
せっかくの機会なので、就活に挑戦して楽しんだ方が得だと思う。
だけど、卒業の一年前に、いざ「就活」に直面すると、自分が何になりたいのか、どういった仕事が自分に向いているのか悩んでしまう学生は多いだろう。
就活前に、やるべきことをひとつご紹介します。
42歳の自分の絵を描く
就活前にまずやるべきことは「自分がどの業界へ進むべきなのか」考えることだ。世界にはたくさんの業界がある。どういう業界が自分に合っているのか、どういう業界が成長するのか、どういう業界の給料が高いのか、様々なファクターを並べて、自分が目指す業界を定める。
学生時代に、アルバイトや取得した資格で業界が決められている人は良いけど、多くの学生は就活前にはフラットな状態ではないだろうか。
自分が何をしたら良いかわからない。そういう時は、「自分の将来の絵を描く」のが良い。就活は22歳前後が多いと思うので、それから20年後の自分、つまり42歳の自分の姿を一枚の絵を描いてみる。
実際に、学生に絵を描いてもらうと、様々な絵が集まって、面白い。一軒家に家族がいて犬を飼っている絵、多くの人に指導している絵、ある特定の仕事をしている絵、海外で働いている絵、高級車に乗っている絵。
一番多く集まるのが、一軒家と家族の絵だ。20代の学生が考える40代の理想とは家族団欒の姿のようだ。
描いた絵の条件を具体化する
学生が描いた絵は、大体抽象的だ。例えば、一軒家に住む絵の場合、その一軒家の場所はどこなのか、どれぐらいの大きさな家なのか。
東京に住みたいといった場合、住居コストはかなり高くなる。ミニ戸建てでも8000万円近くになる物件も多いし、絵に描くような大きな絵で都心だったら、とんでもない額になる。
絵を見ながら自問自答して、スペックを詳細に定める。東京に住むのと地方に住むのでは、住居も待遇も大きく異なる。
家族が欲しいなら子供は何名なのか、お金持ちになりたいなら年収いくらなのか。描いた絵を実現する条件をできるだけ具体的に明確にして、箇条書きにする。
例えば、
- 東京近郊在住
- 年収1200万円(40代)
- 結婚して四人家族
- 管理職
などだ。
ここで特定の仕事がしたいことが明確になれば、就職する業界もわかりやすくなる。自分が設計した自動車を運転したいのであれば、自動車製造会社がもっともわかりやすい目標になる。
大事なことは、仕事で年収でも住環境でも、絵を実現する条件を明確にすることだ。
現在の自分と絵のギャップを定める
絵を実現するための条件が定まったことで、今の自分とのギャップを明確にする。例えば、年収が目標であれば新卒なら0円だ。東京に住んでいないのに、東京近郊で住む絵を描いたのなら、東京へ引っ越しをする必要がある。
5年ごとの条件を決める
現在と将来の自分が定まったら、その間に梯子をかける。梯子には足を掛ける「踏みざん」がある。梯子を登るために、今から5年ごとの条件「踏みざん」を決める。今が22歳なら、27歳、32歳の時にどの時点まで行けば良いのかを決める。
例えば年収2000万円を40代で獲得したい場合、37歳で800万円の年収では40代で2000万円に到達するのはかなり難しい。部長になりたいなら、まず課長にならないといけない。
梯子は一歩ずつ登らないと高みに到達できないのだ。
現在の自分と将来の自分の間に梯子を掛けて、一歩ずつの条件が定まれば、あとは登るだけだ。
登る梯子を決めるのは業界研究
梯子を登る条件が定まった。次は、その梯子をどこに掛けるか決める。つまり就職する業界と企業だ。梯子を掛ける業界によって、登る難易度が決まる。例えば40代で年収2000万円を目標に描いた場合、絶対に達成できない業界がある。
東京に絶対住みたいなら、地方へ転勤する可能性がある企業はNGした方が良い。その辺りの情報は業界研究、企業研究するしかない。
普通に業界研究すると、どこから手をつけたら良いかわからないけど、40代で年収2000万円もらえるのか、海外で働けるのかといった視点が定まっていれば、調べやすい。
セミナーや面接でも質問できる(年収いくらですか? という質問はできないけど)。
そうやって業界を調べると、自分が定めた梯子を登れる業界なり企業が見つかるはずだ。
まとめ
就職を目指す企業を決める方法をまとめると、こちら。
- 42歳の自分の絵を描く
- 絵を実現するための具体的な条件を定める
- 現在の自分と絵のギャップを明確にする
- 5年ごとに登っているべき条件を決める
- その梯子を登ることができる業界・企業を探す
就活は五里霧中でどこから手をつけたら良いかわからない。意識高い系の学生じゃないと、社会のことや業界のことがさっぱりだと思う。
そういうときは、まず将来の絵を描いてみよう。大事なことは、描いた絵の条件をできるだけ明確化すること、何歳で、年収いくらで、どこに住んでいるのか、どんな仕事をしていたいのか。どの条件が自分にとってのハイプライオリティなのか。
ゴールが明確になれば、そこへ登る方向、つまり業界・企業が定まる。