上場来最高値を達成
9月3日、Appleの株価は154ドルの上場来最高値を更新した。多少の変動はあっても、ここ五年間ずっと伸びてきたAppleの株価上昇が止まらない。
Appleの株価が伸びている理由を考えてみます。
止まらないiPhoneの売上
iPhone 12シリーズが人気で、iPhoneの売上は伸び続けている。Q3は前年同期比プラス50%の売上を記録した。スマートフォン市場の飽和は長らく言われているにもかかわらず、iPhone 12が売れたことで、iPhoneが今後も売れ続けることを数字で証明した。
iPhone 12の成功の理由はいくつかある。5Gの初搭載、4モデル体制(iPhone SEを含めれば5モデル体制)、MagSafe充電が評価されたと思われる。いずれも今後の次期iPhoneでも継続できる取り組みなので、短中期的にiPhoneの売上が落ちることはないと思われる。
利益率が高いサービス事業の存在
iPhone依存から脱却するために、近年のAppleはサービス事業に注力してきた。Q3決算では前年同期比プラス33%とサービス部門の好調さを証明することができた。
好調なApple Music以外にも、継続的な投資を続けているApple TV+、Apple Arcadeにも、成功の萌芽が見え始めてきた。
市場もサービス部門の今後の成長性を好感していると思われる。
スムーズなM1チップへの移行
Intel CPUから自社製チップへの移行は大きなプロジェクトだが、今のところ大きな問題は見られない。M1チップの脅威的な性能は高く評価されている。iPad Proにも搭載され、今後iPad(将来的にはiPhoneも?)への活用が予想されている。
いち早くM1チップを搭載したMacBook AirとMacbook Proだが、デザインは旧来のままで、今後消費電力が小さいM1チップに合わせた斬新なデザインの採用が予想される。
Macの売上も落ちていないので、M1チップへの移行プロジェクトは大成功で、今後も成長が見込める分野になっている。
下がらないブランド価値
Appleのブランド価値は8年連続全世界1位である。Appleのブランド価値は20兆円とも言われ、落ちる気配がない。App Storeで30%もの高額な手数料を取っていることで批判を浴びたアップル税論争も、Appleが有利な条件で各国政府と合意できた。
ユーザーが懸念している個人情報保についても、Appleはユーザに選択を委ねることで信頼を勝ち得ることに成功し、個人情報の濫用が懸念されていたWebトラッキング広告についても実質的な規制に踏み込んだ。
こういった取り組みはブランド価値の維持に大きく貢献している。これはクックCEOの最も重要な功績だと言って良い。ジョブズの頃は他企業を罵り対立を煽ることが多かったが、クック時代になり、ただ批判するのではなく、実行力がある対策に乗り出していることは大いに評価できる。
コロナ禍による追い風
現状でもコロナによる影響は完全に払拭されていない。ワクチン接種が進んでも、デルタ株によりアメリカでは連日数万人の感染者を出し続けている。全世界に感染が広がってしまったので、今後も絶えず変異株が出現し、ワクチンでコロナウイルスが絶滅することはないと思う。今後も断続的に流行することがあるだろう。
人との接触が躊躇われ、リモートオフィスも浸透した中で、いわゆるDXへの取り組みが今後も継続されていく。DXのためにはiPhone、iPad、Macなどのユーザー端末は必須だし、自宅にいればオンラインサービスを利用する。Apple Watchは心拍数と血中酸素濃度機能などのヘルスケア機能を強化し、コロナ禍で安心をもたらすデバイスになってきている。
上昇気流になるApple
さまざまな背景が今はAppleの追い風になっている。コロナ禍でさえ、Appleはプラスに変えてしまった。
では、Appleの懸念要素はなんだろう。一つは政府の介入だろう。巨大化すればするほどAppleへの風当たりは強まっていくに違いない。プライバシー保護を全面に出している施策は防波堤になりそうだが、巨額な利益を計上するAppleへの反発が強まる危険性はある。以前Microsoftが直面したようにAppleの分割論争が起きても不思議ではない。
もう一つの懸念は、Apple Carが成功するかどうかだ。すでに公然の秘密になっているApple Carがいつどの程度成功するか、あるいは失敗するかは、Appleの将来を左右することになるだろう。
今後もIT業界はAppleを中心に回っていくと思われる。