Appleの決算が変わる
製品と同じようにAppleの決算発表はシンプルだった。上場企業なので、財務諸表はもちろん公開しているが、それ以外にAppleが硬化しているのは、地域別の売上と利益、製品ライン別の台数と売上のみ。
引用:Apple
公開された販売台数により、iPhoneが何台か売れたか、以前より伸びているかどうか株主は確認することができた。
だが、来期より製品別の販売台数を公表しないとAppleは表明した。近年のAppleの売上状況を見ていれば、当然の判断だと思う。
縮小する市場
iPhoneの販売台数は約2年間ほぼ横ばい状態だ。最近持ち直しの兆しはあるが、iPadの台数はすでに減りはじめている。スマートフォン市場は飽和状態で、今後iPhoneの台数が劇的に増加することはないだろう。だから、iPhoneは台数を求めるのではなく、高付加価値路線により製品単価を向上させる戦略にAppleは出たのだ。
Appleにとってすでに台数は重要な指標ではなくなったのと、減少していく数字を市場に見せたくないというのが、Appleが販売台数を公開しなくなる理由だ。
成長するApple Watch
Appleは製品別の販売台数を非公開にする代わりに、今まで「その他」にまとめられていたApple Watchを分離して、個別の売上額を公開するそうだ。
今までAppleは販売台数も売上額も非公開だったので、Apple WatchがAppleの予測よりも売れていないと市場は疑念を抱いた時期もあったが、今では外部の調査と「その他」の売上の伸長でApple Watchが順調に成長しているのがわかる(「その他」の伸びは前年同期比31%)。ここにきてApple Watchの売上にAppleもようやく自信をもったのだろう。
別カテゴリーとして売上額を公開するということは、Apple WatchがiPadやMacと並ぶ重要のカテゴリーとしてAppleが今後も新製品を投入していくことを意味する。
Appleのフルラインナップ戦略が加速⁉
この秋のふたつのイベントで、Appleは製品ラインナップを増やした。iPhoneはiPhone XR、iPhone XS、iPhone XS Maxの3モデルとなり、iPadも過去モデルも含めて5モデル、MacでMacBook Air、Mac miniを復活させた。iPadだけでも65種類もあるのだ。
厳選したモデルだけを販売する従来の戦略をAppleは大きく変更した。
時価総額世界最高のAppleが今後さらに成長するために、多くのラインナップを用意して、高付加価値の製品、コストパフォーマンスが高い製品を選ぶ多くのユーザーを取り込み、総売上を伸ばしていくのは確かに妥当な戦略だ。
多くの良質な製品郡が販売されるのは、選択肢が増えるユーザーにとって嬉しい限りだ。
一方で、多くの製品ラインナップを維持するためには膨大な開発費がかかる。製品の品質が下がり、Appleブランドに傷がついたとき、開発費は大きな負担となってAppleにのしかかる。
Appleの製品開発能力がAppleの未来を大きく左右することになるが、心配なのはAirPowerやHomePodなど開発延期が相次いでいることだ。少ないモデルを開発していたAppleのエンジニアが、今後はより多くの製品を開発し続けないといけない。
Appleが豊富なラインナップを維持しながら、革新的な製品を提供し続けることができるかどうかが、今後のAppleの命運をきめることになる。