ディズニーデラックスとディズニープラス
ウォルト・ディズニー・ジャパン社はディズニーデラックスという動画配信サービスを3月26日から開始した。
ディズニー、ピクサー、スターウォーズ、マーベルの4ブランドの映画・動画が月額700円で見放題のサービスだ。
一方で、アメリカのディズニー本社は、「ディズニープラス」という動画配信サービスを11月12日より開始すると発表した。ディズニープラスと同じく4ブランドの映画・動画を配信するサービスで、料金は月6.99ドル(約780円)と金額も似ている。
しかし、ディズニープラスとディズニーデラックスは全く別のサービスだ。
本国よりも前に、どうして日本独自のサービスを開始したのか考えてみます。
日本のディズニーのビジネスは特殊
ウォルトディズニージャパン社の日本でのビジネスの歴史は長い。1979年に旧ウォルトディズニージャパン社が設立された。
知っている人は知っていると思うけど、ウォルトディズニージャパン社は、日本のディズニーランドを経営していない。オリエンタルランドという企業が東京ディズニーリゾートを経営している。
初の海外でのディズニーランド事業にリスクを感じたディズニー社がディズニーランドの日本展開のフランチャイズ契約をオリエンタルランドと結んだ。
だから、ウォルトディズニージャパン社はディズニーランドの経営には直接携わっていない。香港やパリのディズニーランドはディズニー本社が直接経営に関与している。
ウォルト・ディズニー・ジャパン社はディズニーランドを経営していないが、本国のウォルト・ディズニー・カンパニー社の現実法人なので親会社の直接の指令で動いていて、サービスなども同様になるはずだ。
ディズニーデラックスが先行した理由
グローバル企業では、基本的に全世界統一したサービス・プロダクトを好む。社内のオペレーションも楽だし、コストも低く抑えられるからだ。
だが、今回のディズニーデラックスは、日本独自のサービスだ。ディズニープラスを11月に開始するなら、それに合わせてもよかったように思う。サービス内容も料金も似ているのだから。
ディズニーデラックスで使われている映像配信システムは、ディズニーデラックスで使われる予定のシステムは別物に違いない。
本国で11月にローンチするシステムを半年前に稼働するとは思えないからだ。
ディズニーデラックスとディズニープラスの大きな違いはdocomoの存在だ。ディズニーデラックスは、ウォルトディズニージャパン社がdocomoと協業して開始した。docomoはDAZNと「DAZN for docomo」を運営している実績もあったから、動画配信のパートナーとしては最適だと判断したのだろう。
おそらくだけど、「DAZN for docomo」とdocomoが提供する「dビデオ」の成功をみて、ウォルトディズニージャパン社とdocomoが日本独自で話を進めていたのだろう。
ディズニープラスのプロジェクトの話は、当然ウォルト・ディズニー・ジャパンにも伝わっていたと思うが、それでも日本現地法人が強行できた理由はよくわからないが、日本でディズニープラスを開始する予定がかなり先なのかと予想する。
ちょい足し需要を狙う?
ディズニーデラックスのターゲットは誰だろう? もちろんディズニーやマーベルなどのレーベルのファンだろう。今後はディズニーが統括する映画の動画配信はディズニーデラックスでしか観られなくなる。
ただ、いくらファンでもこの4つのレーベルだけでは物足りないと思う。動画本数ではAmazon Prime Video、Netflix、dビデオにはかなわない。
そこで700円という比較的安価な価格設定が生きてくる。Amazon PrimeやNetflix、dビデオユーザーがメインのサービスに「ちょっと追加」するのに絶妙な価格設定だ。
特に同じドコモが運営するdビデオユーザーがディズニーデラックスを追加する心障壁は低い。
ここにもウォルト・ディズニー・ジャパン社がドコモと手を結んだ理由がわかる。
4大レーベルは日本でも有名だが、ディズニーが文化というほど浸透しているアメリカに比べるとブランド価値は高くない。
ドコモと締結することで、動画の「ちょい足し需要」を狙ったと思われる。
何はともあれ、日本だけ先行して楽しめるディズニーデラックスは、ディズニーファンにとってオトクなサービスだ。