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「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の「夏のピルグリム」を7月18日に刊行

「第12回ポプラ社小説新人賞」奨励賞受賞作の 「夏のピルグリム」 が7月18日に発売になります。初の単行本形式の小説です。
興味がある方は書店で予約してみてくださいませ。

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小説家の作り方

商業小説家デビュー

10月5日に「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」が宝島社より発売されました。僕にとっての最初の商業出版になりますので、この日に商業小説家デビューしたことになるはずです。

免許があるわけではないので、どうしたら「商業小説家」と名乗って良いのか分かりませんが。小説を書いていなくても「これから書いて本を売るから商業小説家だ」と言い切っちゃっことはできるでしょうし。
一般的には、小説を販売すれば商業小説家と名乗って良いのだと思いますけど。

僕が小説家になるためのプロセスは、結構レアだと思いますので、参考になればと思い、ご紹介しておきます。

賞をとるのが王道

小説家になるためのガイドブックに書かれている最もメジャーな方法は、「新人賞」を受賞することです。これが王道です。受賞したら出版すると約束している新人賞もあるぐらいです。新人賞を受賞してデビューした小説家の方が、一番多いんじゃないかな。
一番シンプルでわかりやすい方法ですが、その分難しいです。賞によっては数千の応募があるので、とんでもなく狭き門です。

投稿サイトから

次に多いのが、「小説家になろう」や「カクヨム」などの小説投稿サイトからのデビューだと思います。人気になった投稿作品が書籍化されるケースです。ライトノベル作家の中には「小説家になろう」出身者が多くいらっしゃいます。
投稿作品を編集者が読んで、これぞと思う作品が見つかったら、作者に声をかけてきます。投稿サイトによっては運営経由で書籍化の話を持ちかけるところもあるようです。

Kindleからの書籍化

ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」が書籍化されることになったのは、どちらのケースでもなく、AmazonのKDPからでした。KDPは、Kindle Direct Publishingの略で、Amazonの電子書籍サービスであるKindleに自作の本を出版できるサービスです。
僕は10年前からKindleに自作の小説を出版してきました。今では26冊の書籍が並んでいます。
その中の一冊が「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」の元になった「ふたりの余命」です。

ふたりの余命」は発売当初から多くの方に読まれ、Amazonのランキング1位(ロマンス部門)を長く維持していました。僕の本では最も読まれた本です。

たくさんの感想をいただき、今日現在(2023/10/07時点)、662の評価をいただいています。他の書籍と比べるとわかるように、評価が600を越えている小説はほとんどありません。

Kindle版「ふたりの余命」

平均評価は4.3で、星5つ以上が50%以上を占めています。

読んでくれた読者の中に編集者の方もいました。その編集者の方から声を掛けていただき、「ふたりの余命」の書籍化が決まりました。

僕の知っている限り、Kindle本が出版社から書籍化された例は非常に少ないです。過去にはいくつか事例があって注目を集めたこともありますが、最近ではほとんど見かけません。

Kindle本からの書籍化が少ない理由

「小説家になろう」からデビューする小説家は多いのに、どうしてKindle本からデビューする人が少ないのでしょう。正確な理由はわかりませんが、Kindleが有料ということが挙げられるでしょう。
Kindle本の多くが有料です(無料で販売することも一応できます)。有料のKindle Unlimited会員なら多くの書籍を無料で読むことができますが(読み放題にするかどうかは作者が選択できます)、無料の会員は電子書籍を購入しないと読むことはできません。
他の投稿サイトは基本無料なので、Kindleよりも読者数がかなり多いと思います(正確な数字はしりませんが)。読む人が多ければ、編集者の目に留まる可能性も高くなります。

もうひとつの理由は、Kindle本の立ち位置によると思います。前述の通りKindle本の多くは有料です。「小説を販売していること」が小説家の定義なら、Kindle本の作者は全員すでに小説家ということになります。
また、KDPには電子書籍だけではなくペーパーバック形式で販売することもできます(「ふたりの余命」もペーパーバック形式で販売しています)。ペーパーバックは「書籍」なので、出版社が手がける前に「書籍化」されていると言うこともできます。
そういったすでに「販売」している作品を改めて書籍化したい出版社が少ないのではないかと思います(あくまでも推測ですが)。

多くのプロが関わる出版社の本

でも、実際に体験してみてわかりましたが、出版社による書籍はKindle本とは全く異なりました。Kindle本は自分で執筆し、自分で推敲し、僕の場合は表紙も自分で作成します。全部ひとりで行なっているわけです。

出版社の場合は、編集者の方からアドバイスがもらえ、プロの校正の方が誤字脱字表記ゆれを指摘してくれます。表紙もプロのイラストレーターが描いてくれて、装丁もしてくれます。多くのプロの方が関わって作られるのが出版社の本です。
当然、ひとりで行なうよりも気づく点は多く、仕上がりも段違いです。

Kindle版「ふたりの余命」を読んだ方もいらっしゃると思いますが、このように内容はかなり異なりますので、宝島社版「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」もぜひ読んでみてください。Kindle版にはない書き下ろし「エピソード0 ひとりの余命」も収録していますし。

宝島社版「ふたりの余命 余命一年の君と余命二年の僕」の書影