絶好調だった任天堂決算
2020年Q1は売上が前年同期比プラス108%、営業利益がプラス428%の増収増益だった。
最も伸びたのはNintendo Switch(以下、Switch)本体の売上とソフトだ。Switch本体はプラス44%、ソフトはプラス123%の大幅の伸び。「あつまれ、どうぶつの森」が1000万本を超え、6月末時点での累計では全世界で2000万本を超えている。
好調の要因
歴史的な決算となった今期の任天堂が好調だった最大の要因は「巣籠もり消費」だ。コロナ禍により、自宅で過ごす人が増えて、家で遊べるSwitchが爆発的に売れた。そこに「あつまれ、どうぶつの森」がフィットした。
「あつまれ、どうぶつの森」は名称にもあるように、自分の島に招待できるなど前作よりも他のプレイヤーと交流できるようになっている。これが「巣籠もり」で孤独を感じていたユーザーの心にヒットした。
「あつまれ、どうぶつの森」自体は過去の「どうぶつの森」シリーズと比べて大きく変わったわけではない。基本的なフォーマットは初代からほとんど変更されていない。
それでも、これだけ売れたのはゲームが売れるのにタイミングが非常に重要だということがよくわかる。
Switch本体、どうぶつの森だけではなく、もうひとつの注目点はデジタル売上。前年同期比プラス230%と大幅に伸びた。ダウンロード販売や追加コンテンツの他にNintendo Switch Onlineが伸びた。定額オンラインサービスである「Nintendo Switch Online」は今まで無料だったオンライン対戦を有料化したサービスなのでユーザーに敬遠される可能性もあったが、多くのユーザーの賛同を得られたようだ。
任天堂の死角
絶好調な任天堂だが、死角があるのだろうか。
ひとつは以前から言われている「任天堂のソフトしか売れない」問題だ。Switchのミリオンセラー9本のうち7本が任天堂のソフトだ。
ただ、この問題にたいして任天堂は開き直っている感じがする。どうぶつの森のような伝統的なソフトだけではなく、「リングフィットアドベンチャー」や「世界の遊び大全51」のような新しいタイプのソフトも成功させている。
2つ目の死角は、上級ゲーマーの対応だ。Switchはファミリーや子ども向けのゲームが多く、大人でも遊べるゲームもソフトなものが多い。
今年はPS5が登場する。PSはハードゲーマー向けに強く、PS5ではSSDを搭載しスマートフォンゲームみたいな高速起動が実現する。
ゲームマシンの歴史は交代の歴史だ。任天堂とソニーのゲーム機が新機種が出るたびに覇権が入れ替わっている。SwitchとPS4は過去の歴史の中では珍しく棲み分けができた時代だったが、任天堂が踏み込めないハードゲームがeスポーツの流れもあって、さらに人気になり、PS5が大ヒットしSwitchの脅威となる可能性はある。
最後は、無料ゲーム。世界中で大ヒットしているFortniteは基本無料で遊べる。Switchでも無料でダウンロードして遊ぶことができる。Fortniteはプラットフォーム化しはじめていて、ゲームで遊ぶだけではなくコミュニケーションツールにもなってきている。今度米津元帥がライブを行うなど、セカンドライフなど幾多のサービスが失敗したバーチャルワールドとしてFortniteが成功するかもしれない。
日本企業も追随して、パズドラで有名なガンホーが「ニンジャラ」という無料ゲームの提供を開始している。
無料なので任天堂の売上には直接貢献しない。任天堂がこの無料ゲームをどうして許可しているのかよくわからないが、無料ゲームが増えてくれば、任天堂のビジネスモデルを揺るがしかねない。
成功している数少ない日本企業
ITに近い分野で最終製品を成功させている数少ない企業が任天堂だ。MicrosoftのX BOX、スマホゲーム、定額クラウドゲームなど、任天堂の脅威となるライバルが何度も登場してきたが、それでも任天堂は成功し続けている。
真摯にゲームづくりに専念している姿勢が好感を得ている。課題はまだあるが、任天堂なら現状の勢いを維持して乗り越えてくれるに違いない。
IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は小説家です。