PS VR発売以降、一般でもVRという言葉が浸透し始めた。新しいものが広まるためにキャッチーな製品は必要なので良い流れだと思うが、VRがどういったことなのか曖昧な人もいると思う。ARやMRやさらに新しい言葉もでてきたので、余計に混乱する。ここで整理しておきたい。
ここにない現実を見せる
VR(Vurtual Reality. 仮想現実)は、「ここにない現実をあるように見せる」技術である。当たり前のことを言っているようだが、必ずおさえておくべきポイントだ。
VRでは、現実に見えているものはゴーグルで視界を塞ぎ見えなくし、モニタに投影された世界だけを見えるようにする。そこに本当の現実はない。見せるものは、ここにはないが、どこかにあると思われる世界だ。
話は逸れるが、VRを仮想現実と訳したのが混乱のもとだ。「仮想」とは「仮に想定された」という意味で「仮想敵国」のように現実の状況から想定される概念を表す言葉だ。「仮想現実」と言われると、現実には存在しないが何かの意図をもって新たに構築された世界と勘違いしそうになるが、元のVRには全く新しい世界という意味合いは薄い(そういった意味で使用するケースもあるには、ある)。
VRは「人工で作られたもう一つの現実」の意味で「人工現実」と呼んだほうが筆者にはしっくりくる。
よく使われる「高い場所を綱渡りをする」デモ(現実は地面に置かれた棒の上を歩いている)はVRの典型だ。現実に何かを混ぜるのではなく、もうひとつの現実を作る。
VRの前提を理解したところで、VRが使えるビジネスが何か考えてみたい。
長年目指していたゲームの到達点
まずはPS VRで代表されるVRだ。「ここにないものを体験する」のがゲームであり、解像度を高めて、よりリアルな体験をしてもらうためにゲーム業界は技術革新を続けてきた。本当に存在するように見せるVRはゲームのひとつの到達点である。長年ゲーム業界が目指してきたものなのだから、ゲームからVRが一気に広まったのは自然な流れだ。
カタログ
よりリアルなカタログとしてVRは使える。ここにない土地をバーチャルで旅行したり、まだ建っていないマイホームを見学して仕様を確認したり、今までパンフレットや動画から想像しなければいけなかったことが、もっと皮膚感覚で理解してから購入できるようになる。売り手と買い手の認識も揃い、購入後のトラブルも減るに違いない。
トレーニング
手術や危険な場所での作業など、実際に体験するのが難しいジャンルでの訓練にもVRは有効である。何度失敗しても問題はないし、様々な種類のトレーニング環境を用意するのも容易だ。部屋の中でトレーニングができるので、トレーニングを受ける人の動作を録画して見返すのも容易なので、トレーニング後に適切な改善箇所を指摘しやすい。
基本をおさえて、広がるアイディア
「ここにない現実を体験できる」という前提をきちんと踏まえれば、VRを使って他にも様々なアイディアが今後でてくるに違いない。何がビジネスに生かせるか、考えてみると面白い。