数多くのEchoシリーズ製品
Amazonが、新たなEchoシリーズの製品を多数発表した。
電子レンジも!
以前から販売していた「Eco dot」「Echo Plus」ディスプレイ付き「Echo Show」の新モデルは日本でも発売する。
他はアメリカだけの発売だが、スピーカーがなくBluetoothで他のワイヤレススピーカーと接続して使う「Echo Input」、Alexa搭載の時計「Echo Wall Clock」、Echoで操作できる電源タップ「Amazon Smart Plug」とテレビ放送をストリーミング放送できる「Fire TV recast」、AV機器だけではなくAlexa対応の電子レンジ「Amazon basics Microwave」も多種多様な製品をAmazonは発表した。
どうして、こんなに多くの製品をAmazonは発表したのだろう? Amazonは家電メーカーになりたいのか?
リビングの覇権
Amazonが目指しているのは、Alexaのプラットフォーム化だ。
IT企業にとってリビングに自社デバイスを置くのは長年の悲願だった。MicrosoftはWindowsメディアセンターで、ソニーはプレイステーションでリビングの覇権を握ろうとしたが、うまくいかなかった。
そんな中、Amazonがスマートスピーカー「Amazon Echo」を発売して、ヒットした。推測だけど、AmazonもEchoがここまで売れるとは思っていなかったのではないか。
「Amazon Echo」は多くの家庭のリビングに置かれることになった。Echoは、スピーカーとして、家庭のアシスタントとして、PCやスマートフォンを使わない子どもやお年寄りにも好評を博した。
Echoのヒットを逃さず、Amazonは多くの派生モデルを追加し、リビングだけでなく、各部屋にデバイスを置いてもらうことに成功した。
Alexaのプラットフォーム化
今回の新製品投入は、その戦略の拡大だ。Alexaは自社製品だけではなく、他社も無料でAlexaに対応することができる。自社製品を多く増やすことで、サードパーティにも新しい製品開発を喚起できる。垂直統合モデルのAppleとは大きな違いだ。
WindowsとMacがPCのデファクトスタンダードになった時、Amazonは大きな存在ではなかった。
次のプラットフォームとなったスマートフォンにはAmazonは嫌な思い出がある。2010年からスマートフォンの研究をしていたAmazonは2014年にスマートフォン「Fire Phone」を発売したが人気になることはなく、その年Amazonは過去最大の赤字を出した。
2014年にはAndroidはGalaxyなど主要スマートフォンメーカーの製品とiPhoneの人気が動かしがたいものになっていて、Amazonが入り込む余地はなく、Kindleで培った経験を活かして格安タブレットの開発に移る。
コンシューマ向けのプラットフォームとして今はスマートフォンが絶対的な地位を占めているが、AmazonはAlexaを次の家庭向けプラットフォームのスタンダードにしたいのだろう。
キーボードとマウスで操作するPC、指でタッチするスマートフォンと異なり、音声認識を用いるスマートスピーカーは、過去のOSを流用する必要がない。すべて自社でコントロールできる。
プラットフォーム化することのメリットは、他社の干渉を受けずに自社のサービスを取り込めることだ。GoogleはAndroidを無償で提供する代わりに検索やマップ、Google Musicなどの自社サービスをOSに組み込み、全世界のユーザーへ配布している。
Amazonの場合、取り込むのは自社のネット通販と、Amazon Videoなどのサービスだ。
ディスプレイ付きのEchoシリーズが増えたのは、商品を見ながら買い物をするニーズとAmazon Videoに繋げるためだ。
Alexaエコシステムに繋がるデバイスが増えるほど、ユーザーは今後も継続してAmazon のサービスを使うことになり、Amazonの地位は盤石となる。
GoogleがGoogle Homeで、AppleがHomePodでAmazonの後を追うが、Amazonの強みは過去のプラットフォームを遊離していることだ。
視覚よりも簡単で「ながら操作」ができる音声認識は今後より注目をあびるだろう。Alexaが新たなプラットフォームになれるかどうかは、あと数年で結論がでる。