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ゲーム会社になったソニーは音楽・映画ではまった罠を回避できるか

現代のソニーの3本柱

5月21日にソニーの経営方針説明会があった。その中でゲームが今後のソニーの柱になると力強く宣言した。経営方針方針説明会の内容と、ゲームを中心にそえたソニーの未来を考えてみます。

ソニーの存在意義

まずはソニーは自社の存在意義を「クリエイティビティとテクノロジーの力で世界を感動で満たす」と定義した。いわゆる「ソニーらしさ」と呼ばれる社風を表現したうまいPurposeだと思う。

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そのあと、3つの経営の柱を発表したのだけど、冒頭で発表したのはゲームだった。

  • ゲーム&ネットワークサービス
  • エンタテインメント
  • エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション

古いユーザーがソニーと聞いて最初に思い描くテレビや音楽機器は最後に説明された。しかも、その説明のほとんどはCMOSセンサーに時間を当てられた。

ずっと、そうだったのかと言うとそんなことはなく2018年の経営方針説明会では「エンタテインメント」「金融」「エレクトロニクス」が3本柱だった。

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ソニーの決算

直近の決算である2018年度第4四半期のソニーの決算だ。

売上も営業利益もゲームが稼ぎ頭だ。特にソニー全体の利益の多くをゲームが稼ぎ出している。2018年度のソニーは過去最高の利益を叩き出したが、最も貢献したのがゲームだった。

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今回の経営方針でゲームに頼りたくなるのは当然だろう。

ソニーのゲームビジネスが好調なのは、PS4の売上に合わせて月々支払われる「プレイステーションプラス」が絶好調だからだ。

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月々「日銭」が入ってくるビジネスの利益率は絶大だ。有料会員である「プレイステーションプラス」の会員数は4000万人近い。ひとり月額500円の売上で月額200億円、年間2000億円を超える。年間2000億円がハードウェアの売上がなくても転がり込んでくる。今までハードウェアを開発製造して、店頭で販売してやっと利益率が3%ぐらいだったのと比べると、笑いが止まらないビジネスだろう。

ソニーがゲームを経営の主軸にしたい気持ちも理解できる。Appleがハードウェアだけではなくサービスビジネスに注力するしているように、利益率を高めるためのトレンドでもある。

だが、ソニーがゲームビジネスを経営の中心にもってくるリスクも大きい。

新しいライバルの登場 

eSportsの流行などでゲーム市場は拡大している。その市場に目をつけているのはソニーだけではない。

Googleが開始予定のストリームングゲームサービス「Stadia」はゲーム機が不要でどこでもいつでも遊べる。

Appleが発表した「Apple arcade」はサブスクリプション型ゲームサービスだ。毎月一定額を支払えば多くのゲームが楽しめる。

GoogleとAppleのサービスは、「プレイステーションプラス」ビジネスを根底から揺るがすものになる。「プレイステーションプラス」の料金は基本的にオンラインでマルチプレイするための料金だ。フリーで遊べるゲームは限定されている(現在3つのゲームのみ)。「プレイステーションプラス」で遊ぶためには原則ゲーム機本体とゲームを一本ずつ買わなければならず、今までの古いゲームビジネスと何ら変わりがない。

ソニーは今までのビジネスモデルから脱却できていないと言える。

そこにゲーム機が不要で、定額で遊べるサービスがはじまったらどうなるだろう。音楽や映画で起きたのと全く同じことがゲーム業界で起きないと考えるほうが難しい。

経営規模もApple・Googleとソニーでは比べ物にならない。圧倒的な資本をゲームとシステム開発に投資されたら、ソニーは対抗できるだろうか。

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ギャンブル性が高いゲームビジネス

ゲームビジネスは当たり外れが大きい。プレイステーション2は大ヒットしたが、プレイステーション3は任天堂Wiiの後塵を拝した。PS4はヒットしたが、ポータブル機のPS Vitaは2019年に販売を停止した。

複数台のゲームを所有する人は全体からすると多くないし、ヒットしたゲーム機に人気ゲームが集まる傾向があるので、ゲームビジネスは一強多弱になりやすい。

ゲーム機ビジネスは約5年をサイクルにしているので、一度ライバルと優劣がついてしまうと挽回が難しいこともある。

Wii Uの失敗で任天堂も赤字に陥ったことがある。ソニーよりもゲームビジネスへの依存率が高い任天堂はビジネスが安定しないことを見越して、無借金経営を続けて、工場などの施設を自社でもたないようにしている。

ソニーは任天堂に比べて設備維持費も高く、借金もある。ギャンブル性が高いゲームビジネスに依存するのはリスクが大きい。

トラウマから脱却できるか?

他社の新たな動きにソニーも手をこまねいているだけではない。マイクロソフトと連携してクラウド型ゲームの充実を図ろうとしている。

ただ、ゲーム機を必要としないクラウド型ゲームはソニーのゲームビジネスを根底から変えることになる。

定額ゲームサービスも同様だ。一定額で何本ものゲームが遊べるようになれば、一本ずつゲームを買うのがばかばかしくなる。

クラウド型ゲームに移行するということは、根本から現在のビジネスを変える必要がある。果たしてソニーにその変革ができるだろうか。ソニーは圧倒的なソフトコンテンツとハードウェア技術をもちながら、音楽でも映画でもサービスの主導権をとることができなかった。

既存のビジネスモデルを変えることができず、コンテンツのパッケージ販売に執着した結果だ。

今年から来年にかけてPS5の登場が予想される。新たなマシンでソニーが他社に対抗できる新たなビジネスの変革を発表できるか。

音楽、映画での失敗を踏まえて、ゲームビジネスが3度目の正直となるか注目だ。

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