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Googleの新ゲームサービス「Stadia」は任天堂を殺すのか?

Stadia発表

Googleが、GDC(ゲーム開発者カンファレンス)で、新ゲームストリーミングサービス「Stadia」を発表した。簡単に言えば、クラウド上に置いたゲームを端末に依存せず遊べるゲームサービスだ。

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今までもゲームストリーミングサービスは存在したし、PS4とPCで遊べるゲームをSONYも提供している。スマートフォンのソーシャルゲームは端末にインストールするが、データの多くはクラウドに置かれている。

ただ、今回それを提供するのはGoogleだ。大規模なサーバー群とマシンパワーを有するGoogleは、リンクを踏んでから最短5秒でのゲーム開始、4K HDRでのグラフィック(将来的には8Kも)、WindowsなどのパソコンOSはもちろん、タブレットやスマートフォンでも遊べるようにすると宣言している。

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書士速度はPS4 Pro、Xbox One Xを上回る

ストリーミングサービスというと、気になるのは遅延だが、全世界にクラウドサービスのインフラを設置しているGoogleは、ネットワークの遅延を限りなく抑えることができる。

スマホやパソコンでゲームを遊ぶとなると操作性も気になるが、Googleは「Stadia Controller」というBluetooth接続のコントローラーを今回用意した。

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料金体系は発表されていないが、多くのゲームが無料の広告モデルとサブスクリプションなどで提供されるだろう。今でも1本ずつゲームを買うのが主流の家庭用ゲーム機の世界に価格破壊をもたらす可能性がある。

また、ネットワークゲームはすぐにどこにでも遊ぶことができる。自宅のPCで遊んでいて、外出先でスマホで途中から遊ぶこともできる。余計な荷物を持たなくても、Switchでやっていることが実現できてしまう。

Youtubeをはじめ、ネットのいたるところにゲームのリンクを貼ることもできるので、ユーザーは簡単にゲームを見つけすぐに始めることができる。

「Stadia」の発表により、任天堂とSONYの株価が今週下落した。

Stadiaの登場により、今後任天堂などの家庭用ゲーム機は衰退していくのだろうか。

主役が入れ替わり続けるゲーム業界 

家庭用ゲームの世界は、主役が何度も入れ替わって現代に至っている。古くはATARI、任天堂のファミリーコンピュータの時代から、SONYのプレイステーションが登場して大成功を収めた。盤石だと思われていたSONYが仕様が複雑でゲーム開発が難しいPS3で土がつき、万人に受けるWiiが挽回するが、Wii Uに代が変わるとPS4が復権した。今はモデル末期のPS4と任天堂のSwitchが競合しているのが現代の家庭用ゲーム機の市場だ。

スマートフォンによるソーシャルゲームも人気だが、Switchなどの本格家庭用ゲーム機の市場を潰すには至らなかった。

では、今回のGoogleのStadiaは家庭用ゲーム機のマーケットを破壊するのだろうか。確かに、Stadiaは魅力的だ。端末に依存せず、すぐにどこでも本格ゲームが遊べるのは、今のゲーム機の欠点を解消してくれる。

変化は緩やか

すぐに任天堂のゲーム機が売れなくなるかというと筆者はそうは思わない。筆者はSwitchが失敗すると予測したが、結果は空前の大ヒットになった。

ヒットの背景には、任天堂の優れたソフト開発能力とパテント、子どものユーザー層を抑えている点があげられる。

マリオやゼルダなどの任天堂の定番ゲームがSwitchのスタードダッシュに大きく貢献した。基本的に数年間仕様を変えない家庭用ゲーム機の場合、最初に売れるかどうかが成功の大きな鍵となる。本体が売れなければゲーム制作会社は新作の提供を敬遠するようになり、コンテンツ不足に陥るからだ。

スマートフォンが全盛になっても、小学生全員がスマートフォンを保有するところには至っていない。今後変わっていくだろうが、現時点ではスマートフォンを学校にもっていくことはできない。

必然的に小学生はゲーム機で遊ぶことになる。この層をがっつり抑えているのが任天堂だ。

Stadiaが一般化しても、この任天堂の牙城は容易に崩れそうにない。

一方、Stadiaの影響をまともに受けそうなのはSONYだ。プレイステーションの客層とStadiaの想定するユーザー層はかなり近い。

SONYはゲームストリーミングの端緒を開いたはずだが、自社のビジネスモデルを守るために、積極的に踏み込んではいない。ストリーミングを突き詰めていくと、据え置き機は不要になり、ゲームのパッケージ販売も崩壊するからだ。

以前にも似たようなことを我々は見ている。ウォークマンだ。ウォークマンでポータブルミュージックプレイヤーの礎を築いたSONYだったが、CD販売の維持にこだわり、iPodなどのシリコンミュージックプレイヤーに敗北することになった。

SONYに限らず、自社のビジネスモデルを破壊するのは容易ではないが、それをしなければいずれ破滅するのは歴史が証明している。

5Gの恩恵

Stadiaが一般化するのはいつなのだろう。欧米では2019年中にサービスを開始するそうだが、日本ではまだ未定。日本の開始が遅い理由の一つは5Gの普及スケジュールが影響しているだろう。

いつでもどこでも遊ぶためにはネットワーク環境が不可欠。それも素早い反応速度を要求するゲームの場合、現在の4Gでは遅すぎる。Stadiaの世界を実現するには5Gの普及が必要だ。

世界では2019年中に5Gが本格スタートする予定だが、日本はまだだ(2020年の東京オリンピックに標準を合わせたのがいけなかった?)。

Stadiaの成功は、5Gネットワークとそのデバイスがどれぐらいの速度で普及するかも鍵になる。

一方で、いろいろ提案されてはいるが今一歩明確ではなかった5Gを使ったサービスが、初めて明確に見えてきたと思う。

日本のゲーム機業界にとっては、久々の「黒船」になりそうだが、任天堂とSONYがどのように対抗していくか、またGoogle以外のAmazonなどがどのような提案を出してくるか楽しみではある。