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トランプ大統領がIT業界にばらまくジョーカーの数々

トランプ大統領への希望的観測は、あっさりと打ち砕かれようとしている。

就任前は「今は選挙期間中だから酷いことを言っているが、大統領になったら変わるだろう」と言っていた評論家が、就任直後は「威勢に良いことを言っているのはブラフ(脅し)で、ビジネスマンが有利に交渉をすすめるための手段だ」に変わり、就任後十日経った今は「おいおい、本当にやばいんじゃないか?」に変わってきている。

 

先週7カ国からの入国を一時的に禁止する大統領令が発令された。すでに200名以上がアメリカへの入国を拒否され、ビジネスにも影響が出始めている。本コラムではトランプ大統領の施策によって今後IT業界にどのような影響があるか考えてみる。

 

移民の制限により人材確保が困難に

週末多くのIT企業の幹部が入国規制を一斉に批判した。

japan.cnet.com

多くのIT企業が強く反対したのは、自分たちのビジネスに大きく影響を及ぼすからだ。IT企業と言っても全米各地にあるのでひとつに語られないが、シリコンバレーがある西海岸の企業では移民が多く働き、中には起業する者もいる。

今回の規制は7カ国だけだが拡大しない保証はないし、アメリカへ移民を躊躇する優秀な人間も増えるだろう。3億人のアメリカ人だけから優秀な人間を探すより、全世界73億人から探したほうが見つかりやすいのは当然だ。

現代のITは一握りの優秀な人間が生み出すアイディアの良し悪しがビジネスを大きく左右し、工場やラボの品質がビジネスを決定するものではなくなっている。

移民がアメリカのIT起業で働かなくなれば、世界を変えるサービス・プロダクトがアメリカのIT企業から今までのようには生まれなくなる可能性が高い。

 

製造単価の上昇

トランプ大統領が最も強調しているのは「アメリカ人の雇用の拡大」だ。アメリカ企業がもつメキシコの工場を批判し、為替操作している中国が安い製品をアメリカに輸出していると主張する。

雇用の観点だけをみればメキシコ・中国の工場を撤退させ、アメリカに工場を新設すれば、労働者(特にトランプを支持した人々)の雇用は増える。一方で、アメリカの高い人件費で作られた製品は今よりも高価になる。高い製品を買わなければならないのはアメリカ人で、その他の国の人は今と同じ安い他国の製品を買えば良いので、アメリカ製の商品は世界で売れなくなる。

IT業界では、最終加工品を製造しているのはAppleやシスコなどアメリカの企業が多い。だが、製品の中身は必ずしもアメリカ企業の部品とは限らない。iPhoneの部品の50%以上が日本製、それ以外の部品も韓国・台湾メーカーが多い。

米国企業の工場をアメリカ本土へ移転させても、海外から部品を調達する必要がある。世界で製品が売れなければ部品の調達する資金もなくなる。その先にあるのは米国製造業の倒産であり、従業員のリストラだ。

アメリカへの工場移転は結果的に労働者を苦しめることになる。

 

アメリカ版グレートファイアウォールの建設

今のところよく知らないからなのか、トランプ大統領はサービスについて言及していないが、現在のIT業界でもっとも金が動くのは、Google・FacebookがリードするWebサービスだ。この分野はアメリカが圧倒的に強いのでオープンな環境は自国のビジネスにとってプラスなはずなのだが、トランプ大統領は貿易同様にWebサービスも制限する可能性がある。

制限する理由は、他国のサービスにアメリカへ進出しなくなるようにして、自国のサービスを守ること。中国の百度など海外発のサービスもの米国に進出してくるだろう。いまのうちに海外サービスの流入を防げば、自国のサービスを守れると新大統領が考えてもおかしくない。

もちろんオープンな環境を制限すれば、アメリカのサービスも他国へ進出できにくくなるが、トランプ大統領がそこを考慮するとは思えない。

 

もうひとつの理由が検閲だ。トランプ大統領はメディアとSNSの世界ですこぶる評判が悪い。メディアやSNSがデマをまき散らすので自分が不当に評価されていると思っている。その流れを止めるために情報の拡散を制限し、検閲を行う。中国のようにGoogle、Facebookサービスの禁止まで行うとは思えないが、今の調子だと決して絵空事ではない。

 

ビッグブラザーの到来

アメリカではジョージ・オーウェルの小説『1984年』が売れているそうだ。小説中の監視社会がアメリカで起こるとはまだ誰も信じていないだろうが、この3ヶ月で起こったことは、まさに「誰も信じていなかったこと」だ。

中国の首脳がアメリカの大統領に「オープンで公平な貿易の重要性」を説く奇妙な時代にすでに我々が踏み入れつつあるのは間違いない。

 

Switchを売るために任天堂がスイッチすべきこと

本コラムでは『Nintedo Switch』は液晶・バッテリーを外した安価な据置機で出せば売れたと論じているが、実際のSwitchはそうではない。

では、Switchが売れるために任天堂はどうすればよいのだろう?

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3DSを廃止する

Switchが発表された時、専門家の多くはローンチタイトルの少なさに懸念を示した。サードの作品は移植作ばかりで、任天堂の作品はゼルダと『ワン・ツー・スイッチ』のみ。ゼルダはWii U用に開発されたゲームでSwitchの売りのひとつであるHD振動に対応していない。実質1作品だけがオリジナルなのだ。

ga-m.com

サードが弱いのは任天堂ハードの伝統なので、ローンチ初期は任天堂が頑張らないとダメなのだが、肝心の任天堂のソフト開発力が弱く、HD時代の業界水準に達したゲームを量産できなくなっている。

限られた開発リソースを集中させるために、3DSへのソフト供給を止めるべきだ。任天堂も据置機とポータブル機の両方にソフトを供給する限界はわかっていて、両方に対応できるSwitchを開発したのだが、現段階では3DSのソフト開発は継続すると宣言している。

gamerlife.blog.jp

Switchが成功すれば3DSは廃止されると思うが、いますぐ止めないとその成功を拝めなくなる。

Switch 2DSを追加する

任天堂は3DSの販売が低迷してきた時期に、折りたためない安価な2DSを追加した。北米市場を狙った商品だったので日本ではあまり売れなかったが、比較的ビギナーユーザーに強い任天堂にとって価格は大事だ。税込32,378円するSwitchは値段で敬遠される危険性が高く、廉価版の投入は効果的だろう。筆者としては液晶・バッテリー抜きのモデルを期待するが、ポータブル機として好評ならドックなしモデルがあってもいい。

ポケモンGOと連動する

親が子供のゲーム時間を監視できる以外にスマホとの連携は発表されていない。多くの人が保有するスマホと連動しない手はない。特に任天堂はポケモンの権利を持っているのだから、Bluetoothで連動させてSwitchでもポケモンGOが遊べるようにして、広いマップと捕まえたポケモン一覧が大画面で参照できれば、利便性が高まる。スーパーマリオランもスマホで購入したら、Switchを用いて大画面でプレイできても面白いし、課金するユーザーも増えるだろう。

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Switch TV機能を付与する

テレビ機能を付与するのではなく、Apple TVやAmazonのFire TV Stickみたいにスマホの画面をテレビ画面に転送する機能だ。

定額動画配信サービスが流行っている今、テレビ画面への転送機能は喜ばれるだろう。スマホやタブレットで動画を鑑賞している人は多い。誰もがApple TVをもっているわけではない。

Fire TV Stick

Fire TV Stick

 

 

Wi-Fiの中継機能を付ける

Switchにかぎらず、一般家庭でもWi-Fiの利用用途は増えている。少し広い家だとWi-Fiがとどかない部屋もでてくる。SwitchがWi-Fiの中継器になれば使えるエリアも広がる。Blu-rayなどのマルチメディア機能はもはや不要だが、家庭のネット環境を拡張する機能はニーズがある。

 

BUFFALO 無線LAN中継機 エアステーション 11ac/n/a/g/b 433+300Mbps WEX-733D

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残された時間はあまりない

PS4が世界的に成功している今のゲーム業界で、スタートアップに失敗すると挽回は難しい。新作マリオ、スプラトゥーンが揃う年内が期限だろう。それまでに良いモーメンタムが作れるかが任天堂浮沈の鍵となる。残された時間はそれほどない。

 

Nintendo Switch Joy-Con (L) ネオンブルー/ (R) ネオンレッド

Nintendo Switch Joy-Con (L) ネオンブルー/ (R) ネオンレッド

 

 

 

 

Evernoteはこの先生き残れるのか?

Evernoteとは?

Evernoteはクラウドにメモを保存できる草分け的ウェブサービスだ。余計なことは覚えずに何でも保存し、スマホ・PCがあればどこからでも閲覧できるサービスは、クールなルックスも相まって大人気となった。

マネタイズに苦労

ところが、他のWebサービス同様マネタイズに苦労し、迷走を始める。個人ユーザーがメインのところにGoogleを真似て有料ビジネスユーザーを募り(現在のCEOはGoogleあがり)、Appleのようにブランド価値に頼りグッズを販売し始めた。これらの試みはうまくいかず、グッズ販売していたサイトは閉鎖、Evernote本体以外に開発したWebサービスも次々とクローズしていった。

 フリーミアムの限界

収入のほとんどを占めている有料会員の数は全体のユーザーの2%だそうだ。フリーミアムは新しいビジネスモデルだと一時期騒がれたが、広告収入に頼れないサービスの多くは低迷している。

そのような状況で昨年Evernoteは無料会員がアクセスできる端末を制限し、会費を値上げした。この方針変更に従来のユーザーは反発した。

さらにダメを押したのが、一部社員がユーザーのデータを参照できるように規約を変更しようとしたことだ。ユーザーの猛反発を受け、実際に退会したユーザーもでて、この方針は撤回されたが、Evernoteのブランドを大きく毀損した。あらゆる情報をクラウドにアップし自分の頭脳のように使うことをEvernote自身が推奨していたのに、他人の頭脳を覗き見ると宣言したわけだから、当然の反応だ。もっとも、ほとんどのWebサービスは社員が預かったデータを閲覧できる規約をユーザーと交わしているのだが、改めて言われると、Evernoteの今までのブランドイメージと相反しているので、失望も大きかった。

 

MicrosoftのOneNote、Appleのメモなど大手の進出も著しいこの分野で、中規模ベンダーであるEvernoteが生き残るには熱狂的なユーザーを確保することが大切なのだが、このところの失態で支持を失いつつある。

 この先どうなる?

Evernoteはこの先どうなるのだろうか。原点に帰って、ユーザーの頭脳を拡張するためにクラウドサービスの改善に集中するべきだろう。もう一度、ユーザーの信頼を取り戻すために。

良い兆候は見える。先日アップデートされたiOS版は良質なデザインで、よく作り込まれている(ただバグは多く、中小ベンダーの限界も感じる)。

Microsoft、Appleのような大手のサービスしかない世界はつまらない。ぜひEvernoteには生き残って欲しい。

 

IT関連のブログをほぼ毎日更新していますが、本業は小説家です。
ブロックチェーンなどITを題材とした小説の他に、ミステリー、恋愛物、児童文学など様々なジャンルの作品を取りそろえています。
Kindle Unlimited会員ならすべて無料、非会員の人にも99円からご用意していますので、お読みいただけると幸いです。感想もいただけたら感涙でございます。

アツい定額動画配信サービス

先日、レンタルビデオチェーン店舗を統括する社長と話したら、現在のレンタル業界は散々たる状況だそうだ。一本50円にしてもDVDを借りる人は全く増えない、いずれなくなると相当悲観的だった。CDはまだ少し動くようだが、動画は全然駄目だそうだ。

背景には、Hulu、amazonビデオ、dTVなどの定額動画配信がある(その社長曰くNetflixは大して強くないとのこと)。

www.hulu.jp

動画配信は便利すぎて勝負にならないと社長は言う。店舗へ赴き、好みの作品を探し、観た後返却しなければならないレンタルビデオ店と、スマホで検索し好きな作品をすぐに観られる動画配信サイトでは雲泥の差がある。

特に返却の手間が大きい。DVDのディスクが時間制限で使い物にならなくなり返却不要になればいいのにと社長は愚痴ていた。

昨日アップしたAmeba TVの記事でもビュー数が伸びない理由に地上波と比較してアクセスに手間がかかる点を挙げた。地上波は容易にアクセスできるが、コンテンツの選択肢は限られている。定額動画配信サービスなら月々1000円そこそこで数多くの作品をいくらでも鑑賞できる。地上波とインターネットテレビのいいとこ取りが定額動画配信サービスだ。

 

今この定額動画配信サービスに激しい競争が起きている。Huluが日本でサービスを開始した2011年以来、多くのサービスが現れた。日本ではNTTドコモが運営するdTVが強い。月500円という低価格と日本発のコンテンツを多数抑えているので人気が先行しており、会員数は500万人を突破している。

こういったサービスでは珍しく国産が気を吐いているので、アメリカ発のサービスも日本語コンテンツを充実させざるを得ず、日本のユーザーに恩恵がある良い競争になっている。

定額なので一度ユーザーを囲ってしまえば毎月の収入が安定し、コンテンツの購入も計画的に行える。地上波とレンタルビデオにない良さを実感すれば、会員は容易に退会しない。定額サービスで会員を維持する方法は、月に一度は必ず利用させることだ。一度でも便利だと思えば、月に500円程度なら会員は容易に手放すことはしない。

一ヶ月無料などの特典を掲げて、どのサービスも囲い込みに必死だ。US大手のNetflixも進出してきて激化してきた競争に参入してきたのがAmazonプライムのビデオサービスだ。Amazonプライム会員なら追加費用なく多くの動画を鑑賞できる。最近ではAmazon独自のコンテンツも増えてきている。

他の動画配信サービスと異なり、AmazonはAmazonプライムに囲い込むための手段として動画配信を利用している。有料会員にしてしまえばお急ぎ便などの特別なサービスが利用できるAmazonで買い物をする頻度は増えるし、動画鑑賞のためにサイトへアクセスが増えれば商品に目がいく機会も増える。だから追加費用なく大量のビデオを配信できるのだ。

おそらく他のサービスも動画配信だけではなく、商品の販売を遅かれ早かれサイトで行わないとAmazonと競争できない時期が来ると思う。また、別の新たなサービスで対抗するのか。この分野は当面アツい。

Amazonプライム・ビデオ

Amazonプライム・ビデオ

 

 

Ameba TV躍進へのヒントは繭(コクーン)の中に

サイバーエジェントの決算が発表された。無料のインターネットテレビ局『Ameba TV』を含むメディア事業は売上高は約60億万円だったが、営業損益はマイナス約46億円だった。

www.nikkei.com

Ameba TVは、受動的に地上波放送を『ながら見』している層、既存のテレビでは満足できない若者をターゲットにしている。

インターネットは自分で検索し、面白いコンテンツを見つけるのは宝探しみたいで楽しいが、能動的に動くのが億劫なときもある。地上波のように何の手間もなくダラダラと観続けるメディアをAmeba TVは目指している。

ところがダウンロードしたユーザーは1300万人を超えたが、アクティブ視聴者数は鈍化している。事業が黒字になるには1000万人の視聴者層が必要らしいが、年末年始が終わった今月のアクティブ視聴者数は360万人。相当の開きがある。

TVの視聴率は世帯視聴率なので、10%の視聴率が1000万人の視聴者数とはならないが、ほとんどの家庭にあるテレビでも1000万人の視聴者数は相当難しい数字だとわかる。

gamebiz.jp

Ameba TVの視聴がテレビほど気楽に観られない点が視聴者増加の障壁になっている。多くの人が朝起きたらまずテレビをつけ、帰ってきたらとりあえずまたテレビのスイッチを押す。電源ボタンを押せばすぐに画面が表示されるテレビと比べれば、スマホなどのデバイスのロックを解除しアプリを立ち上げないといけないAbema TVでの作業は煩雑だ。

Abema TVをスマホで視聴している人は8割近い。

industry-co-creation.com

現代人がテレビをだらだら観るときにどうしているだろう? スマホをいじりながら横目でテレビ画面を観ている人が多いのではないだろうか。スマホを使って視聴したら、当たり前だがスマホを操作できない。

 

クレームを恐れて自主規制に縛られた既存の地上波放送に飽き飽きして、新しいメディア、インターネットテレビを望んでいる人は多い。できればAmeba TVが成功し、次々とインターネットテレビが流行って欲しい。どうしたら、インターネットテレビをもっと多くの人が観てくれるようになるのか。

 

ヒントはコクーンにある。コクーンとは、2002年にソニーが販売したHDDレコーダーだ。

 

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コクーンは画期的なレコーダーだった。当時DVDに焼いて残すのが一般的だったレコーダーの中でDVDドライブを持たず、HDDがいっぱいになったら自動で消去してくれた。

コクーンの最大の特徴は「おまかせ録画」だ。オーナーの好みの番組を判断して自動で録画して保存してくれた。録画された番組が好みでないとコクーンに伝えれば次回からは録画しなくなる。視聴する時間が多いジャンル、例えばサッカーの試合をよく観れば重点的にサッカー番組を録画してくれる。ジャンルだけではなく、好きな俳優が出演する番組も自動で録画できる。

録画した番組を家族の好みごとに自動で仕分けしてくれる機能まであり、あたかも自分好みのチャンネルができたように思えてくる。

 

Ameba TVに必要なのは、この自動カスタマイズ機能だ。視聴者の好みの番組をまとめて延々と流してくれれば、地上波よりも気楽に自分好みの番組が「ながら見」ができる。ザッピングする必要もない。Amazonのリコメンド機能をみてもわかるように、コクーンが販売されていた時代よりもはるかにAIは発達しているし、Ameba TVはネット上で観られているわけだからテレビ番組よりもメタデータを容易に管理できる。

あたかも自分だけの好みのチャンネルを作れれば、テレビよりも気楽に視聴できるとPRできるだろう。 様々なインターネットテレビ局が良質な番組と自動カスタマイズ機能を訴えて競争しだしたら、メディア業界ももっと活気づくと思う。

 

『スーパーマリオラン』で透けて見えたマリオブランドの希薄さ

『スーパーマリオラン』が思ったより売れなかったようだ。全世界で9000万ダウンロードされたが、課金したユーザーはわずか3%だった。 

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biz-journal.jp

 スマホゲームの世界では珍しい1200円の買い切り型が受け入れられなかった。上達すれば無料でも長く遊べるスマホゲームに慣れたユーザーには割高に取られた。

買い切り型への反発は任天堂も想定していたが、マリオなら乗り越えられると考えたのだろう。

市場から要求されても任天堂は頑なにスマホへ参入してこなかった。スマホ世界の低料金に飲み込まれ、既存ゲームの売上に影響が出たら、今までの業績を維持できなくなるからだ。課金システムが子供をターゲットにしている任天堂ブランドに馴染まないのも敬遠した理由のひとつだった。

市場の圧力に抗うことができず、ついにスーパーマリオランで任天堂はスマホゲームに参入した。ただ飲み込まれないように任天堂は既存ゲームとの差別化を周到に図った。

マリオがオートで走り、ワンタップでジャンプするのは、コントローラーがないスマホの欠点をカバーするのと同時に、マリオの行動を制約した。「自由にマリオを操りたかったらコントローラーがあるコンソール機を買うしかない」のメッセージが聞こえるようだ。

マリオの動きに制約をかけても、マリオブランドがあれば障害を乗り越えて飛躍できると任天堂は判断した。リオ五輪の安倍マリオで注目を集め、iPhone 7の発表会で取り上げられたのに、それでも売上に繋がらなかった。任天堂の想定よりもマリオブランドは弱かったのだ。

スーパーマリオブラザーズ以降の2Dマリオは二次元の世界で生きている。もしも正面から見たら、そのマリオはとても薄い。

スーパーマリオメーカー for ニンテンドー3DS - 3DS

スーパーマリオメーカー for ニンテンドー3DS - 3DS

 

 

Amazon Dash Buttonはヤバくはないが、役には立つ

日本でも開始された『Amazon Dash Button』を2つ注文した。スマホやPCを使わなくてもボタンひとつで日用品が注文できるAmazon Dashは、常時iPhoneを握りしめている筆者には不要だと思ったが、実質無料(ボタンは500円するが一度注文すると500円割引される)なので、炭酸水2種類のボタンを注文した。

冷蔵庫に貼って機能を説明したら筆者よりもITの知識が乏しい妻は「便利だね」と好意的に受け止めていた。

 

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創業者ペゾスの言葉私はアマゾンを地球上で最も顧客中心の会社にして、多くの組織のロールモデルになりたいのとおり、Amazonは常に顧客のためを考えてきた会社だ。少しでも便利に買えて早く商品を届けるために様々なサービスを提供してきて、世界最大のイーコマース企業にAmazonは成長した。

創業時の方針は全く揺らいでいないが、近年のAmazonは実験的なサービスを試すようになった。「失敗を恐れない。試さないことを恐れろ」というAmazonの指針もあるだろうが、AWSの成功でファイナンス的にゆとりがでてきたのも大きい(AWSの売上は、はじめて北米Amazon.comの売上を超えた)。実店舗の書店『Amazon Books』レジを置かない『Amazon Go』、ドローン配送、1時間以内配送の『Amazon Prime Now』など、他の企業が手を出せないサービスを世に出している。

 

Amazonのサービスを目的別に分類すると、こうなる。 

早く届ける・・・『Amazon Prime Now』、ドローン配送

便利に買える・・・Amazon Books』『Amazon Go』

 

これだけ様々なサービスを提供しても、まだAmazonが制覇していない領域が食料品と日用品だ。Amazonは販売全てを牛耳っているように見えるが、もっとも強いのは書籍・DVD、ITガジェットなどの消費財だ。

一般家庭の支出のうち食料品が占める割合は25%、日用品は15%ある。Amazonが得意な書籍やDVDが含まれる教養は10%以下だ。

Amazonも食料品・日用品を扱っているが、ライバルにまだ勝てないのは配送がネックだからだ。単価が低い食料品・日用品を通販で購入すれば配送費が割高になる。生鮮食品であれば鮮度の課題もある(将来的には『Amazon Prime Now』が解消するかもしれないが)。

他にも、食料品・日用品を詰めてひと箱あたり290円で配送してくれる『Amazonパントリー』を用意して配送費の負担軽減を試みている。

Amazonパントリー

 だが、配送費がゼロ円の強力なライバルがいる。”近所のお店”だ。ドラッグストア・コンビニ、スーパーマーケットは街中いたるところにある。欲しい時、通勤通学途中にふらっと寄って買うことができる。

ネットとスマホがなくては一日も生きていけない筆者のような人間はリアル店舗よりネットで注文したほうが便利だと思うが、簡単に店舗とリアルな商品へリーチできるのは、妻のような一般顧客には近所の店のほうがまだまだ”便利”なのだ。

 

Amazon Dashの試みは、この食料品・日用品を店舗で買う層をターゲットにしている。選択ができずに不便に思えるが、自宅でボタンを押せば買える仕組みは、極限まで”便利”に買える”を追求している。スマホを立ち上げてトイレットペーパーを買うのは億劫で近所のスーパーに出かけて買う顧客をネットに引き込むために、Amazon Dashはこのボタンを無料で配っているのだ。

 

こうやって見てみるとわかるとおりAmazon DashによってAmazonの戦略が変わったわけではない。’楽に買える”というAamazonのテーゼを追求したサービスだということがわかる。広告で人を引き寄せて買わせる旧来の販売戦略ではなく、顧客がダイレクトかつスムーズに商品を選択・購入できる仕組みを作るAmazonの戦略そのまのだ。販路を抑えて広告を取るのが目的ではなく、広告を死滅させるのがAmazonの目的だ。

街中に店舗がひしめく日本で、Amazon Dashが定着するかは興味深い。ただ、Amazonからみれば、たとえ定着しなくても、また別の”便利に買える”サービスを考案するだけだろう。Amazonの方針が変わることは当面なさそうだ。

 

ウィルキンソン Dash Button

ウィルキンソン Dash Button

 

 

サントリー天然水 Dash Button

サントリー天然水 Dash Button

 

 

PS VRが雲隠れしている理由

解体されるソニービルから銀座四丁目交差点の『銀座プレイス』(旧サッポロ銀座ビル)へソニーショールームとソニーストアは移転した。ソニービルから展示場面積は縮小しているので、全体的に窮屈でソニーのブランドイメージ向上というより普通のショールームとしてホームシアターや一眼レフカメラαなどの既存ソニー製品に触れることができる。もちろんヘッドホンなどを買ってその場で持ち帰ることができる。

取り立て面白い展示があったわけではないが、気になったのはPS VRの扱いだ。ここ一年で最も注目を集めたソニー製品といえばPS VRだ。多くのテレビ番組でも取り上げられ、発売から三ヶ月経過した今でも品切れの人気商品だ。

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 ところが、ショールームではPS VRの体験デモを行っていなかった。Webや紙面では感動が伝わりにくいVRは体験してもらことが大事なのに何故ソニーはデモを行わないのだろう。昨年の11月以降、体験会は実施されていないようだ。

まさかソニーが運営するショールームがデモ機を確保できないとは思えないので、何らかの意図があって体験デモを行っていないのだろう。

 

ひとつ考えられるのは子どもへの配慮だ。PS VRは他のVR機器と同様に12歳未満は使用禁止のガイドラインがある。親子連れの客で親だけが体験できると子どもがやりたいと騒ぎだすのを防ぐためという理由だ。

だがソニーのショールームはビルの上階にあり、親子連れが来る雰囲気でもなく、筆者が訪れたときも子どもはいなかったので、そこまで大きなリスクだとは思えない。

 

次に考えられるのは、新規モデルが控えている説だ。PS VRは初代モデルとしてはよくできているが、解像度がHDではない、コード接続が複雑などの課題は残った。課題を解消するために次期モデルを開発しているとは思うが、あまりに早い新モデル投入は、すでに購入した現行ユーザーの離反を招くリスクがある。これからVRを盛り上げていこうとしている段階でブームに水を差すリスクは負わないだろう。

 

なにか別の理由があるのだろうか。PS VRの販売台数は極端に少ないのでは? とネットで最近騒がれている。ソニーはPS VRの販売台数を開示していない。

一ヶ月に一度程度、追加販売の予約が設定されるだけで、店舗で気軽に購入する状況に至っていない、販売から三ヶ月経って、ここまで品切れなのはおかしい、大量生産できない不具合があるのか、販売台数を制限して品薄商法を行っているかどちらかだというのだ。

需要に供給が追いついていない現状、故意に台数を制限する理由はソニーにはない。品薄商法を意図したとしても現状のデマンドを見れば戦略を改める時期だ。

生産に苦労しているとは考えられる。需要を喚起する体験会を行わず、生産台数に見合うように需要をコントロールしている可能性はある。加熱しすぎたブームは冷めるのも早い。

ただ、今のままの供給状況が続くと、ブームを終わらせてしまう危険性も高まってくる。

 

ちなみに、ソニーのショールーム下にある日産ショールーム『NISSAN CROSSING』にはPCに接続したVR機器が置いてあり、日産車の試乗をバーチャル体験できた。休日でも空いていてすぐに試すことができた。これぐらいイージーにPS VRを体験できて、感動したその場で購入できれば、今後成長が見込まれるVR市場をソニーはリードできるだろう。

 

PlayStation VR PlayStation Camera同梱版

PlayStation VR PlayStation Camera同梱版

 

 

ソニー展で考える天才の後継

遅ればせながら『It's sony展』へ行ってきた。

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まもなく解体されるソニービルの多くのフロアを使って、過去にソニーが送り出した多数の製品が展示されていた。テープレコーダー、ハンディカム、ウォークマン、トリニトロン、VAIO、プレイステーション、こうやって全てを一堂に眺めると日本と日本人の生活にソニーが果たした役割の大きさがよくわかる。ソニーという会社が存在しなかったら、日本人はもっと野暮ったく、生活に潤いを持てなかっただろう。ソニー製品は、無くても暮らせるが、一度体験すると無くては困るものばかりだ。CDに慣れたらカセットテープに戻れなくなる。iPod、iPhoneを生み出したAppleと同じで、初期のジョブズがソニーを目指したのがよく理解できる。

「無くては困らないが、使うと無くては困るもの」を開発するには、顧客の要望を聞いているだけでは完成しない。顧客は自分が使って感じた製品の不満から要望を思いつく。自分が触っていない製品を想像し具現化することはしないし、そんなに暇じゃない。そこそこ満足している製品があれば、それでよい。みんな日々の暮らしがあるのだ。

ジョブズの言葉「人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいかわからない」はまさに至言だ。

既存の枠から外れた革命的なものを考えられるのはごくわずかな特殊な能力と経験をした人だけだ。いわゆる変人という奴で、行動する変人は何万人に1人しか出てこない。世の中そんな人ばかりでも困ってしまう。

ジョブズと、創業者が遺した技術力の後を継ぎソニーを芸術までに昇華させた大賀社長は、他の人にないアイディアで製品を世に出していった(大賀社長の凄さについてはまた別途)。彼らに共通するのは、真の理系ではなかったことだ。理系的な理詰めで考えていては既存の枠から大きく外れた考えはできてこない。演繹法ではなく、帰納法それも要素がなければ自分で作り上げる超帰納法と呼ぶべき卓越した考えが必要だ。

 

彼らが世を去ってから、iPhoneやウォークマンに匹敵する製品は両社からでてきていない。洗練されたデザイン、最新の技術で過去の製品を進化させたものはその後も開発されているし、社会に受け入れられているが、過去を超えたかというと疑問符がつく。iPhoneとiPhone 7、性能や便利なのは圧倒的にiPhone 7だが、どちらが世界を変えたかと問えば答えるまでもないだろう。

 

どうやって、天才(わかりやすくそう言ってしまうが)を生み出せるのか、また集団で天才を超えられるのか、多くの素晴らしい製品を創り出してきたApple、ソニーの両社もその答えをまだ見つけられていない。 

Apple Watchの便利な使い方

series 2で進化したApple Watchは使いやすくなり、アーリーアダプタ層以外にも勧めやすくなった。実際に使っている人もよく見かけるようになった(Apple Watchで改札を通る人は自分以外見たことがないが)。

使いやすくなったとはいえ、新しいガジェットなので快適に使うにはいくつかのコツがいる。 

複数の文字盤を活用せよ

 watchOS 3から横スワイプで文字盤を変更できるようになった。今までよりも素早く変更できるので、複数の文字盤を用意しておけば多くのアプリへ素早くアクセスできる。一枚の文字盤に表示できる項目は制限されているので、あぶれたアプリにアクセスするにはDockかホーム画面に移動する必要があるが、両方とも使い勝手が良いとはいえない。

筆者はビジネス用とプライベート用の文字盤をを用意している。ビジネス用には日々の予定と外出時に便利な天気と気温を表示している。プライベート用には電話やメッセージアイコン、再生している曲名を表示している。文字盤のアイコンをタップするのがDockよりも素早く、間違いがない。ちなみに文字盤の曲名はタイムトラベルに対応していて次の曲名を確認できる。

Apple PayはSuicaをメインにすべき

Apple WatchでApple Payを使うときはサイドボタン二度押しが必要だ。これが結構面倒くさい。冬場は上着の裾で腕時計が隠れているときも多いので、いちいち袖をまくらないといけない(決済するときは上着越しでも反応する)。
エキスプレスカードに設定したSuicaなら二度押しを省略できる。

メールの通知は絞る

通知の頻度が高いのがメールの着信だ。通知対象は条件で絞れるし、iPhoneと別の設定も可能だ。

iPhoneへの通知は全メール着信に設定しておいて、Apple watchにはスター付きだけを通知することもできる。

通知が来ると画面を強押しなどで削除しないといつまでも残るのが嫌で、Apple Watchを使わなくなる原因にもなる。 

Dockは交通系と相性が良い

新しいDock機能はアプリの情報が自動更新されアクセス方法も改善されたが、筆者はあまり使わない。画面が暗い状態でサイドボタンを押しても画面が点灯するだけで、Dockへはもう一度押さないといけない。アプリの切り替え画面はiPhoneと同じなのだが、Watchの小さい画面だとアプリを選びづらい。

動作しないですむ交通系の情報表示に使うときDockは便利だ。ANAのアプリだと予約したフライトの情報がリアルタイムで表示される。電車系のアプリだと乗り換え駅がすぐにわかる。アプリのアクセスは複数の文字盤から、情報画面の表示はDockからが使いやすい。  

 

なぜ任天堂はSwitchに液晶画面をつけたのか?

本ブログでは、液晶画面をつけずにシンプルで安価な据え置き機の方が発表されたSwitchよりも売れると分析した。 

 

では、どうして任天堂はSwitchに液晶画面をつけてしまったのだろう?

考えられる理由は3点。

  • 単価の底上げ
  • Wii Uの反省
  • ソフト開発能力の集約

安価な据え置き機を販売すれば、当然総売上が減る可能性がでてくる。値下げ以上に台数が出れば問題ないが、ハードゲーマー層をPS4が抑えている現状、大幅な台数増は考えづらい。液晶をつけることで、どこでも遊べる付加価値を高め、販売単価を上げる戦略を任天堂は取った。本体価格2万9980円(税別)は、予想の中で最も高い価格帯で、ハイエンド機である初代PS4と同じ価格である。

 

二番目の「Wii Uの反省」とは、Wii Uの特徴であるタブコンがあまり活用されなかったことを指す。最初に任天堂が想定したタブコンの利点は、リビングのテレビを使わなくても同じ部屋ならゲームで遊べることと、テレビと二画面を同時に使用することで新しいゲーム体験を提供することだったが、どちらも大きな訴求効果が得られなかった。

タブコンだけで遊べるといっても、Wii U本体と無線通信できる距離にいないと使えない。テレビ鑑賞をしている同じ部屋でゲームをする状況があまり想像できず、タブコンの液晶はコスト以上の意味をなさなかった。

Wii Uの反省からSwitchではゲーム機本体に液晶をつけて、どこでも遊べるようにした。液晶の製造コストが下がり、バッテリーも軽量化されたことで「持ち運べる据え置き機」が実現できた。

 

三番目の「ソフト開発力の集約」は、従来からの任天堂の戦略である据え置き機とモバイル機の両方にソフトを提供するのではなく、Swtch一本に絞ることを指す。Wii Uの課題はソフトの供給力の乏しさにあった。自社開発のソフトが強い任天堂のゲーム機では継続的に良質なソフトを自社で供給することが不可欠である。

ゲーム機の高性能化、任天堂の場合タブコンなどのギミックを消化するためのソフト開発の負担が増大してきた。

任天堂はSwitchは据え置き機と主張し、現行モバイル機である3DS向けソフトを継続して販売するとしているが、任天堂の戦略が成功すればSwitchに一本化すると思われる。

 

以上見てきたようにSwitchに液晶をつけた理由が任天堂にはあるが、ユーザーにとっては関係ない。ゲームが面白く新しい体験ができれば、それでいい。任天堂の戦略が成功するかどうかはローンチの販売結果で見極めできそうだ。

PS4 Proにみる理想のミッドライフキッカー

好調なPS4

PS4の売れ行きはここまで非常に好調だが、予想できた人は少ないだろう。過去のPlayStationと異なり、PS4はゲーム機に特化したマシンだ。

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DVDプレイヤー機能で売れたPS2以降、PS3ではBlu-rayやDLNAなどマルチメディア機能を売りとしていたが、PS4はマルチメディア機能に注力していない。

スマホとPS4前に売れたWiiにライトゲーマーは抑えられていたので、PS4はハードゲーマー層をターゲットにした。e-Sportsの隆盛からもわかるとおりUSではゲーミングPCを好むハードゲーマーが一定のマーケットを構成している。

PCからゲームを移植しやすいように、PS4ではx86アーキテクチャーが採用された。PS3は独自開発のCPUを使ったせいでゲーム開発に苦労した反省が生かされた。いつでも中断した地点から手軽にゲームを再開できるようにレジューム機能を付与した。SNSへのシェア機能もゲーマーのニーズに合わせた結果だ。

ゲーマーのリクエストを積極的に取り入れたPS4はUSを中心に大成功を収めた。

ミッドライフキッカーだったPS4 Pro

この良い流れを継続するために、ソニーは過去に例がないミッドライフキッカーを開発した。PS4 Proである。ミッドライフキッカーとは車で言えばフルモデルチェンジの合間に販売するマイナーチェンジ版を意味し、世代の途中で売上が中だるみしないように、最新の技術を追加する。

今までのPlayStationは世代の途中で値下げと軽量化のミッドライフキッカーを投入してきたが、PS4では従来の方針を変えて、軽量化されたPS4 Slimに加えてPS4 Proを追加した。予想に反してUHD Blu-rayを採用せず、PS4 Proもゲームに特化する方針を堅持した。

PS4 ProではCPUを強化し、4Kに対応した。メインストリームになった4K TVへの対応は理に適っているし、パワーアップしたCPUは今後PS4VRの強化に使われるだろう。ソニーは4K TVを中心とした高価格帯のTV販売にフォーカスしている。他のゲーム機よりも先んじて投入されたPS4VRはPS4の優位点だけではなく、ゲームだけではなく今後は他のカテゴリーでも活用されるだろう。

PS4 ProはPS4の好調な売上を維持するためだけではなく、ソニー全体の戦略に沿って開発された。

今でも品切れが続いているPS4 Proは良いスタートを切ったが、新しいミッドライフキッカーとして、ソニー全体の売上に貢献に繋がるか今後が気になる。

Apple watch Series 2はスポーツ情報端末である

初代を購入してから一年半の間、ほぼ毎日Apple Watchを身に着けている。去年の秋にはApple Watch Nike+を購入した。

Series 2になっていくつかの機能は向上し、Appleの戦略も大幅に変更された。初代ではラグジュアリーを志向していたApple Watchが、二代目ではスポーツ情報端末として生まれ変わった。

この一年半でApple Watchの戦略が大きく変更されたのだ。

 

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Appleウェアラブルコンピュータの開発を計画する際、高級腕時計業界に目をつけた。この世界に残る数少ないハイマージンを享受している高級腕時計に変わる高機能な時計をブランド力が高い自分らが送り出せば大きなシェアを獲得できると考えた。Appleから見たら時刻しか表示できない旧来の腕時計など化石にしか見えたのだろう。

ラグジュアリーなこの業界を攻めるために、オプション製品を極力作らず在庫を持たないようにしていた従来の戦略を変え、Apple Watchには数多くのベルトとモデルを開発した。発表会にファッション雑誌の記者を呼び、HERMESとコラボレーションしたモデルを販売、18金で100万円を超えるモデルまで用意した。

当初AppleApple Watchを他社のウェアラブルコンピュータではなく高級腕時計をターゲットにしたためにとられた施策だ。

 

ところが、この試みはうまくいかなかった。ひとつの原因はIT技術の進歩である。言うまでもなくITの世界では技術革新が頻繁に起きる。最新の技術を詰め込んだ製品も翌年には陳腐化してしまう。陳腐化したものを身につけるのは”ださく”、ファッショナブルではない。すぐにださくなるものに100万円をかけられる人は少なかった。

もうひとつの理由は、Apple Watchが使いづらかったことだ。初代はスペックが低く、どのアプリを起動しても動作が遅く、使い物にならなかった。画面が小さいApple Watchを操作するよりもiPhoneを取り出したほうがはるかに効率が良かった。

 

ただ、わるいことだけではなかった。初代Apple Watchを販売して、Appleはいくつかのポジティブな要素も発見した。ひとつはバンドのコレクション性だ。Appleの予想よりもユーザーは複数のバンドを購入した。普通の腕時計よりもバンドが付け替えしやすいApple Watchの工夫が功を奏した。

もうひとつは、スポーツアクティビティの重要性だ。心拍数と歩数を計測できるApple Watchはジョギングなどのエクササイズする人に受け入れられた。この分野では従来ガーミンが強かったが、Apple WatchにはiPhoneと連動しメールの着信などを通知できる付加価値があった。

 

高級腕時計を席巻することは諦め、Series 2ではスポーツ路線に大きく舵を切った。ジョギング用にGPSを追加し、スイミングのため防水仕様になった。HERMESだけではなく、スポーツブランドのNikeとコラボ。”Sports”と名前がつきサブ扱いだったアルミニウムモデルが標準モデルに変更された。

  • HERMESNike
  • ステンレス → アルミニウム
  • GPS・防水機能の追加

ラグジュアリーからスポーツへ。Apple Watchマーケティング戦略を大幅に変更して、まだどこもなし得ていないウェアラブルコンピュータの成功を勝ち取ろうとしている。

 

それ以外の機能も強化された。Apple Watch Series2はCPUの強化とOSの改善により初代とくらべて高速化された。二代目はほぼ待たされることなくアプリが起動するが、それでも積極的に使う気になれない。

画面が小さく見づらいのと、操作するのに両腕を使わないといけない腕時計型の宿命的な欠点があるからだ。iPhoneを取り出すのは面倒だが、片手で操作できる。Apple Watchは何をするにも必ず両手を使わなければならない。歩きながらの操作は難しく、立ち止まれるならiPhoneを取り出して使った方が効率的だ。

それ以外の初代からある機能「通知」「正確な時計」機能は重宝する。メッセージや電話の着信を見逃すことはなくなるし、海外へ行くときに時差調整が不要な時計は便利だ。Apple Payも他の機器に比べてアドバンテージになる(特に日本ではSuica対応は大きい)。

 

以上のように、初代と二代目Apple Watchは別物だ。初代はスタディーモデルと言ってもいい。ただ二代目も万人に勧められるものではなく、スポーツする人でiPhoneを活用している人は買っても後悔しないだろう。

スポーツをしない人は、通知やApple Payなどの機能だけで費用対効果があるか吟味して購入するべきだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

クラシックミニは任天堂復活のヒント

「ファミコンミニ」の画像検索結果

ニンテンドークラシックミニ ファミリコンピューター』(以下『クラシックミニ』)の人気は任天堂の想定以上だったのだろう。その証拠に販売開始から3ヶ月経過しても未だに品切れで生産が追いついていない。収録作品も厳選したというよりかなり雑に選んだようにみえる。ライセンスの問題もあるだろうが、収録してほしい作品をユーザーに募集したら絶対にこの内容にはならないはずだ(30作品のうち2作品を『くにおくん』絡みってないでしょ)。

おそらく任天堂は記念碑的にクラシックミニを作ったのだと思うが、安価で昔懐かしいゲームが遊べるので、今ではゲームで遊ばなくなった年齢層がこぞって購入してヒットになった。

 

『クラシックミニ』の成功に任天堂復活のヒントがある。

  • 安価
  • ゲーム人口の拡大
  • ライト層

安くて手軽なら、普段ゲームを買わない層も購入してくれる。そういった人間は複雑なゲームを求めているわけではなく、単純ですぐに遊べるゲームができればよい。特殊なコントローラーも外でも遊べる液晶画面も不要だ。

『Nintedo Switch』は『クラシックミニ』と真逆のアプローチをしている。『ニンテンドースイッチ』は失敗したWii Uと同じ手法だ。

 

tkan1111.hatenablog.com

 

Stick PCのようなUSBに直挿しで動く小型の筐体にクラシックなゲームを最初から詰め込んでおく。新しいゲームはWi-Fi経由でダウンロードできる。新作のマリオが動くぐらいのスペックにして価格を抑えれば、Switchの半額14,800円で販売できる。

任天堂もクラシックゲームが有用なのは理解しているようで、Switchのネットワークサービスに加入するとクラシックゲームが遊び放題になる。クラシックゲームによってライトゲーマー層を取り込もうとしているのだろうが、だったらやはり液晶画面はいらない。スマホ以外に重たい液晶画面付きにゲーム機を持ち出してまでマリオブラザーズを外でやりたくないだろう。

 

スマホと同じぐらい手軽にリビングのテレビで遊べるゲーム機には一定の需要があるはずだ。今までの据置機より単価は落ちるが、メインのゲーマー層をソニーに抑えられている現状、これしか任天堂の生きる道はない。

 

 



 

 

 

 

 

AirPodsを使う前に知っておくべきこと

AirPodsは、近年のApple製品では出色かつ斬新なモデルだが、新しいカテゴリーの製品なので使用するには、いくつか気をつける点がある。3週間使って気がついた点を列記する。

AirPodsは複数のiClould製品と同時に繋がるが、出力できる音声はひとつ

Bluetooth製品としては普通の仕様なのだが、AirPodsは充電ケースの蓋を開けると、複数の機器と自動的に接続し充電状況を確認できるので誤解しがちだが、音声が出力できるのは、同時にひとつの機器だけ。

iPhoneで音楽を聞いていてMacで再生した音声をAirPodsから出力したい場合は、MacのタスクバーにあるBluetoothアイコンか音声アイコンから「接続」を選択する必要がある。充電ケースの蓋を開けただけでは「繋がっている」けど「接続」はしていないという、ややこしい状態。

AirPodsを再び耳に装着すると、最後に「接続」した機器へ自動的に接続する。 

Siriの起動は「2回触る」ではなく「2回叩く」

説明書には「ダブルタップでSiri起動」とあるが、iPhoneでいうところのスクリーンに二度触れるやり方ではなく、イヤホンを2回叩くイメージの方が成功しやすい。AirPodsのイヤホンはタッチセンサーが付いているわけではなく、叩いた振動を加速度センサーで感知しているからだ。

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装着しているAirPodsは落ちないが、気をつけるべきはケースから取り出す時

よく懸念されるイヤホンが落ちることは今まで一度もなかった。ケーブルに引っ張られることがないので、普通のイヤホンよりも落ちにくい。

ただ、製品の表面がツルツルしているので、イヤホンを充電ケースから取り出す時に落としやすい。

取り出すときにコツがあって、イヤホンの内側を外側にひねるようにすると簡単に取り出せる。この時点ではイヤホンの先がケースに入っているので落ちることはない。

Macで音飛びするならNVRAMクリアを実施

AirPodsに限らないが、MacでBluetooth機器の不具合が出たら、まずはやってみるべき。

  1. Mac の電源を落とす
  2. Commandキー + Optionキー + P + R を押しながらMacの電源をON
  3. 起動音が2回聞こえたら、キーを離す

 

充電ケースにも無線機器が内蔵されている

普段使用している時は意識することないが、イヤホンだけではなく充電ケースにも無線機器が内蔵されていてイヤホンと通信する。充電ケースはイヤホンに充電状況を知らせ、イヤホンからiCloud端末にその情報を伝えている。

Android製品でもWindows PCでも使用できる

Siriが使えないだけで、普通のイヤホンとして使用できる。充電ケースのボタンを押せばペアリングする。

AirPods with Charging Case

AirPods with Charging Case